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ある「聖域」

 あまり注目をされない新聞記事でしたが、こんな記事 が目を引きました。社団法人日展のHPに出ていたこのプレスリリース のことです。

 経緯を書くと、昨年秋に朝日新聞が「日展書道、入選を事前配分、09年『篆刻』、有力会派で独占」というスクープを打ちました(ココ )。何かというと、日本有数の芸術展である日展の入選作を決めるに際し、書道分野で「天の声」があったという内容でした。「天の声」を発したとされるのは、日展顧問で日本芸術院会員の方と報じられていました。

 これを受けて、日展は第三者委員会を設置して調査をしました。調査書 によれば、「事前配分があった」という事実を認定して、再発防止策等の提案がなされています。更に、書道以外でも同種の事例がなかったかを調査する第二次第三者調査委員会が設けられ、その調査書 では、書道以外ではそういうことはなかったという結果が報告されています。

 第一次第三者委員会の報告書が出た後、下村文部科学大臣は「膿を出し切る」という発言を記者会見 でしておられます。かつ、先日もこのブログで紹介した大久保勉議員の質問主意書答弁 で政府は、事前配分があったとの報告がされたことについて「遺憾である」と言っています。それに加え、日展の文部科学大臣賞、日本芸術院賞等、本件スクープで出てくる方が関与する各種授賞ものはすべて止まっています。文部科学省が待ったを掛けているはずです。下村大臣がまだ「膿を出し切る」と判断していないと考えることが出来ます。

 そんな中、今回のプレスリリースです。簡単に言うと、これまでの二次に亘る調査委員会とは別の調査委員会を設けた上で調べた結果、書の世界のドンに当たる方は一切の関与がなかったと判断するという内容です。

 私は率直に読んでみて、「スゴい」と思いました。まず、プレスリリースの中を見ても、「調査委員会のメンバー」、「調査委員会のミッション」、「報告書の内容」等、何もないのです。単に結果だけが書いてあるだけで、アカウンタビリティーとしてはゼロです。これで世間に何かを発表するというのは、どんな組織でもあり得ないことです。

 また、その内容についても、スクープを打った朝日新聞には「そんな事実はなかった」と言い、第一次調査委員会の報告を否定し、そして同報告書を踏まえて発言した下村大臣に対して「あなたは勘違いをしていた。」と言い、これまで止まっていた各種授賞も「止めたこと自体が根拠のないことだった。」と言っている、そういうふうに私には見えます。あちこちに喧嘩を売りまくっているようです。

 日展側にそこまで喧嘩を売っている意識はなくて、単に「天の声自体はあったが、それは日展顧問からのものではなかった。」というのであれば、もっと踏み込んで「では、誰が天の声を発したのか。」という詰めが必要ですが、それについても何の言及もないですね。非常に「身内庇い」の内向き論理だけで出されたプレスリリースにしか見えません。

 直感的に、これは「アウト」だと思います。身内の「大先生」を庇うために、これまでの経緯をすべて否定する動きを日展はしています。それがどういう結果を招くのかを綿密に判断しているとはとても思えません。まず、下村大臣は烈火の如く怒っているのではないかと思います。また、きっとスクープを真正面から否定されてしまった朝日新聞は大々的な反撃に出るでしょう。遠からず、また朝日一面でドカンとスクープ第二弾が出るのではないかと思います。

 この10年くらい、それまで「聖域」とされていた分野にどんどん社会のメスが入るようになっています。何となく直感的に、この芸術の世界にもその波が来るのではないかと思います。近い将来、「日展」はこれまで以上の激震に襲われると予言しておきます。

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