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進まぬ災害復旧事業、防潮堤建設の課題とは

 東日本大震災から今年3月に丸3年が経過しました。津波により、大きな被害を受けた東北地方の太平洋沿岸では、今後の津波被害への対策として、災害復旧事業において、従来のものより大きな防潮堤を建設することが計画されています。しかしながら、このような防潮堤の建設には待望の声の一方で、有識者・地域住民等から疑問や反対の声も上がっています。

 今般の防潮堤建設について、その経緯と、建設に関しどのような問題点が指摘されているのかについて、日本政策学校5期生の冨田翔さんに寄稿いただきました。

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防潮堤復旧計画の概要

 防潮堤とは「海岸保全施設の一種で、高潮や津波などによって海水が陸上に浸入するのを防止するために、陸岸に築造される海岸構造物」であると定義されている。(*1)

 岩手県、宮城県、福島県の三県には、海岸線延長約1,700kmのうち約300kmの海岸線に防潮堤が設置されており、そのうちの約190kmが東日本大震災により全半壊している。これを震災から向こう5年以内(2015年度まで)に「復旧」させ、今後いつか再び訪れる津波から住民の生命・財産を守る計画となっている。

 復旧する防潮堤の高さや規模等については、震災直後より中央防災会議の「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」によって津波対策が検討される中で、想定される津波のレベルとしてレベル1(L1)・レベル2(L2)という基準が示されている。L1は数十年から百年に一度発生する津波であり、L2は東日本大震災の津波のように数百年に一度発生する巨大な津波である。このうち、L1の津波が、防潮堤によって防ぐべき津波とされている。なお、L2の津波に対しては、防潮堤に過度に頼るのではなく、住民の避難の在り方などの総合的な対策を講じて減災を目指すとされた。

 また、具体的な防潮堤の高さについては、海岸線の地形等を考慮し、地域海岸と呼ばれる特性の似た一連の海岸ごとに分割して決めるとされている。

防潮堤復旧計画の問題点とは

 では、防潮堤復旧計画の問題点とは一体どのようなものであろうか? 以下のような問題点が主に指摘されている。

・維持管理に関する問題
 今回の防潮堤建設については、災害復旧事業として99%国の支出で賄われることとなっている。しかしながら、コンクリート製の構造物の寿命はおよそ60年と言われており、どれだけ長く見積もっても100年は持たないことが確実である。その際の修補・更新にかかる費用は過疎化の進行している地域に大きな負担として残るという懸念がある。

・景観への影響
 巨大な防潮堤によって海岸が見えなくなるなど景観上の問題も指摘されている。漁業従事者を始めとし、海に慣れ親しんできた地元住民の不安のほか、観光産業への影響も指摘されている。

・環境への影響
 今回の防潮堤建設は災害復旧事業であるため環境影響評価法の適用を受けず、巨大なものであっても環境アセスメントが実施されない。そのため、工事による生態系や漁場への影響などが指摘されている。

 また、高さの設定においても、国から「海岸の機能の多様性、環境保全、周辺景観との調和等」に配慮するよう海岸管理者に通達も出されているところであり、地域毎の実情に即した形での防潮堤建設が望まれるところである。

(*1)世界大百科事典第2版(平凡社)

冨田翔氏
冨田 翔(とみた しょう)
日本政策学校 第5期生
1989年生まれ。私立滝高等学校、慶應義塾大学法学部法律学科卒。高校時代の生徒会活動、大学時代に取り組んだ環境NPOでのインターン活動等を通じ、より社会問題に関心を持つようになる。現在、環境NGOの研究員として働く傍ら、日本政策学校第5期生として活動中。

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