記事

無料の教育アプリ「Duolingo」の収益メカニズム

画像を見る

Duolingo」は完全無料、ゲーム感覚で語学を学べる学習サイトだ。全米の750万人、ブラジルの240万人、メキシコの150万人が利用している語学学習サイトだ。

そのシンプルで使い勝手の良いレッスン内容と、豊富な語学対応の数から大きな人気を得ており、2013年にはiOS向けのアプリがiTunesのアプリ・オブ・ザ・イヤーにも選ばれている。

Duolingoは無料にもかかわらず、広告も入れること無く運営されている。一体どうやって運営コストをまかなっているのだろうか。

今日はこの不思議な学習サービスの収益のメカニズムを覗いてみよう。

Duolingを使ってみる

「Duolingo」はfacebookやeメール、Googleアカウントなどでサイン・アップすることで利用することができる。

画像を見る

利用者はサイトで次々出される問題を通して、母国語や習得している外国語などから、学習したい言語に翻訳する。まずは日本語や英語など、自分が話す言語を入力。つづいて学習したい言語を選択する。

「自分が話す言語」を英語に設定すれば、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語など、12カ国語から選ぶことができる。今回は英語からドイツ語に翻訳するという想定でシミュレーションしてみよう。

画像を見る

上写真のように左側のボックスに翻訳するべき文章が現れるので、利用者は右側ボックスに対応する文章を入力する。文章は即座に測定され、間違っている部分には赤線が引かれたり、正確な文例を示してくれる。

難易度は学習者の語学力に応じてシステム側が調整する。初心者から上級者まで、ゲーム感覚で文例に応じた翻訳を行い、繰り返し学習できるのが特長だ。

しかし、この「Duolingo」は単なる語学学習アプリではない。Duolingoの使い始めは、ちょっとした時間つぶしになるレベルの簡単な翻訳を行うが、上級者になると、パラグラフや文章のかたまりを翻訳するようになる。

画像を見る

実はこれらの文章はBuzz FeedCNNがDuolingoに翻訳を外注したもの。上級者はこれら企業が依頼したコンテンツを翻訳したり、もっとも出来の良い翻訳がどれかについての投票を行ったりしている。

学習者は教科書的な文章でなく、生きた文章を翻訳する機会を得られる。また、クラウドソーシングのビジネスモデルであるため、サイトの学習で料金が発生することもない。

一方依頼主は安いコストで翻訳を成し遂げることができ、Duolingoは両者を橋渡しすることにより、利益を得られるというしくみだ。

翻訳時間はコンテンツの質や量にも左右されるが、CNNを例にとると、平均800語のコンテンツが6時間かけて翻訳されるとのこと。翻訳料金は一般の相場の4分の1ほど。1語あたり2セントから4セントの計算だ。

気になるのは学習者による翻訳でどれだけ正確な文章になるのか、という点だが、1本の文章に対して何人ものユーザーが翻訳を行っていること、その中からもっとも出来の良いものを利用者たちが投票することで、品質を担保しているのだという。

「僕の脳裏にはあのグァテマラの貧しい子供たちがどんなときにも浮かぶんだ」

画像を見る

このスマートなシステムを創業したのはLuis Von Ahn( 以下フォン・アーン)氏。クラウド・ソーシングの若き天才と呼ばれる人物だ。

フォン・アーン氏はグアテマラで幼少期を過ごした。両親はキャンディ工場を経営しており、何不自由なく育ったが、一方で貧しい人々が必死に生きる様をよく目にしていたという。

フォン・アーン氏は12歳にして、「ただで利用できるジム」というとんでもないアイディアを考えついている。それは運動器具の使用により発電し、その電気を売ってジムの経営に充て、利用料を無料にする、というものだった。

これこそクラウドソーシングの原型で、Duolingoのひな形とも言えるようなアイディアだが、どうやらこれは失敗だったようだ。フォン・アーン氏はこのアイディアについて、このように笑って振り返っている。

"人力で得られる電気はほんのわずかな量だったんだ。ジムの利用料をただにするには到底足りないことを知ったよ"

フォン・アーン氏はその後大学進学とともに米国に移住。カーネギーメロン大学でコンピューター・サイエンスの准教授となる。2007年には、人間の視覚を認証するシステム「reCAPTCHA」の発明も行った。

画像を見る

その後フォン・アーン氏はreCAPTCHAをGoogleに売却し、Duolingoをロンチすることを考えはじめる。

そのきっかけは、母国グアテマラでの貧しい人々だ。彼らは仕事を得るために英語を勉強したくても、教材が高くてできず、苦しんでいた。Rosetta Stoneなどは高価でとても手が届かない。スマホアプリの中でも、語学学習アプリは押しのべて高価だった。

"絶対に無料で勉強できる教材を作りたかったんだ。時間がかかるとわかっていた。でも素晴らしいものができる自信があった"
"とにかく無料で学べること。この点にこだわったんだ。広告を一切入れないこともね。そして、面白く学べること。利用者の貴重な時間をもらうためには、面白くなくてはいけないんだ"
- フォン・アーン氏

フォン・アーン氏の次なる野望。

最近Duolingoの利用者からは、実力を認定する仕組みを求める声が多くなっているという。

TOEFLIELTSは受験料が高く、例えばTOEFLは210ドル(約2万1000円)もする。また、試験会場から遠いところに住んでいる受験者にとっては交通費も移動時間もかかる。

そこで、20ドルくらいの受験料で、Duolingo検定試験をスマホで受けられるようにと、サービスの提供を検討している。

しかし、スマートフォンを持っていない人がサービスの適用外となることが、同氏の頭を悩ませているようだ。母国グアテマラで幼い頃目にし、心を痛めた、貧しい環境にある人たちのことが、いつも頭の片隅にあるのだろう。

僕には目指すビジネスモデルはないんだ。人々がほしがっているものを見つけてそこにある問題をひとつひとつ解決していけば、だれでも成功するんじゃないかな、そう思っているよ
- フォン・アーン氏

クラウドソーシングで、人々が喜んで無駄に使う時間を有効利用して、ビジネスを成功に導いたフォン・アーン氏の次なる野望が実現する日は、そう遠くないだろう。

あわせて読みたい

「EC」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    1枚1円レジ袋 大量買いの珍風景

    中川 淳一郎

  2. 2

    お嬢様迷惑ツアーに島が自粛要請

    SmartFLASH

  3. 3

    駅前の果物販売は盗品? 投稿話題

    BLOGOS しらべる部

  4. 4

    「経済重視」で経済が回らない訳

    鈴木しんじ

  5. 5

    山手線 中国・韓国語表示消えた?

    BLOGOS しらべる部

  6. 6

    身近に感染者は? 約9割「0人」

    かさこ

  7. 7

    西村大臣「団体旅行など控えて」

    BLOGOS しらべる部

  8. 8

    感染者数に囚われる日本の不思議

    自由人

  9. 9

    ユニクロの策 客をスタッフ勧誘

    文春オンライン

  10. 10

    自粛続く限り追い込まれる飲食店

    内藤忍

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。