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「世界最大の発行部数」を誇る新聞とメディア・リテラシー - 中津十三

インターネットのニュースサイトは玉石混淆ではあるが、基本的に重宝している。しかし、今年に入ってしばらくして気になったことがあった。Yahoo!ニュースでの読売新聞のワッペンに、誇らしげに「世界最大の発行部数」という文言が入りだしたことだ。

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「世界最大の発行部数」と聞いて、私のような中年は「プラウダのようなもの、ということかな」と思ったのだが、今やプラウダと言っても注釈が必要な時代になった。

プラウダは、1912年創刊の旧ソ連共産党中央委員会機関紙。紙名は「真理」という意味で、最盛期の発行部数は1000万部以上を誇った。ソ連崩壊後ギリシャ人実業家に経営権が買われるなど混乱があったが、現在でもロシアで発行されている。

ソ連時代は政府機関紙イズベスチア(紙名は「ニュース」の意)とともに、国の公式見解を伝え国民へのプロパガンダを展開する新聞だった。ゆえに党や政府にとって都合の悪いことは書かれず、むしろ捏造もあった。しかし多くの国民はそれを分かっており、頭から信用しなかったという。

その頃のアネクドート(ロシア小噺)にこのようなものがある。「この2紙の違いは何か? それは、プラウダにイズベスチア(ニュース)はなく、イズベスチアにプラウダ(真実)はない、ということだ」

さて、翻って本邦の読売新聞である。国の公式見解とまではいかなくても、官製発表モノが1面トップを飾ることが実に多い。7月1日の解釈改憲閣議決定の前週の読売新聞朝刊(東京)1面トップを並べてみた。

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6月23日(月):内閣改造 9月軸に 地方相・安保相を検討
6月24日(火):「司法取引」導入了承へ 法制審部会 経済・組織犯罪で
6月25日(水):骨太・成長戦略 閣議決定 法人減税、規制改革が柱
6月26日(木):人口減 自治体の8割 自然減 最多の23万7000人
6月27日(金):子供置き去り483人 過去3年 餓死寸前 保護も
6月28日(土):高速道渋滞区間 路肩を車線化 国交省 頻発地点 整備へ
6月29日(日):国産「ロボット手術室」 産学官 共同開発へ
(上記の記事はリンク切れの可能性もあります)

27日の記事は「読売新聞の調査」だそうだが、これも自治体からの回答をまとめたもの。1面トップという新聞の「顔」にここまで発表モノが並ぶと、これではプラウダと大差なさそうだ。

問題はここからだ。政府寄りの報道があるのはある意味当然。それに対して、プラウダを見るソ連市民のように裏を読むことが私たちは出来ているだろうか。総務省情報通信政策研究所が4月15日に発表した「メディア利用に関する調査結果」(PDF)によると、メディアの信頼度という項目では、新聞の信頼度が71.3%と圧倒的に高い(次いでテレビが65.7%)。

一方、こんな数字もある。報道自由度ランキングでは日本は、米国の人権NGOフリーダムハウスによると195カ国・地域中42位。国境なき記者団の同様の調査では何と180カ国・地域中59位なのだ。この順位は年々下がっている。

民主主義社会では、メディアの質も問われる。調査報道や独自の分析よりも、官製発表ばかりの新聞が「世界最大の発行部数」を誇る日本。信頼を寄せるのもいいが、メディア・リテラシーを磨いていかないと、新聞論調の流れに呑み込まれてしまうだろう。(中津十三)

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