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安保法制の整備 識者の評価

憲法解釈維持し、穏健な決断
他国で戦争、徴兵制など不可能
拓殖大学教授(国際学部・海外事情研究所)
佐藤 丙午氏

―閣議決定をどう見ますか。

今回、自民党と公明党の与党協議で議論されたのは、日本の主権が及ぶ範囲での日米協力や、グレーゾーン(武力攻撃に至らない侵害)などについてであり、閣議決定の内容を見ても、国連憲章51条で規定された自衛権が、領域外で集団的に実施されるケースを想定したものではない。細かく詰めていくと、集団的自衛権ではなく、個別的自衛権の解釈、適用でも対応できるのではないかという印象を受けた。

―一連の報道への感想は。

安全保障問題では、バランスが取れた報道をするべきだったと思う。

一部のメディアの展開した議論には合理性がなく、そこに至るまでに複数の変数が介在する非常に極端な例を取り上げて、それが、さも普遍的なことであるかのような報道をしていた。

「日本も他国で戦争するようになる」などと言っていたが、安倍首相は閣議決定後の記者会見や、5月15日の記者会見で「湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してない」と繰り返し明言していた。これは、日本の伝統的な憲法解釈に従った、非常に穏健な決断だった。

「徴兵制が出てきて若者が戦争に送られる」との報道もあったが、今の憲法を見れば徴兵制などできるわけがない。到底、理解できない論理だった。

―今回、公明党が果たした役割については。

安全保障の議論は専門性が高く、自民党内の議論でも、安全保障に通じた人の意見に反論するのは難しい。特に、今の小選挙区制度の下では執行部の意見が強くなりがちで、党内の議論を積み重ねて合意に至るというプロセスの中で、専門的な見識を持つ人の意見が重視されるようになっている。そうした中で、公明党が異なる意見(オポージングアーギュメント)を示せたことは、連立政権の良さだと評価できる。

また、公明党は、党内論議を通して、今回の問題の構図や、焦点は何かを明らかにする役割を果たした。公明党は、6月28日に、県代表懇談会を開き、党幹部が直接、全国の地方議員の代表から、懸念を聞いた。自衛権発動の新3要件について「言葉の意味が曖昧だ」などと批判されるが、公明党が党内論議で取り上げたことで、新3要件の妥当性が国民の間で話題になった。新3要件について、広く国民に周知されたことの意義は大きい。

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