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JR株売却益は国交省のものじゃない

 国土交通省がJR九州の株式上場を検討していると日本経済新聞が報じています。JR九州株は国の独立行政法人がすべて所有しており、国交省は売却益を整備新幹線の前倒し開業に充てる意向のようです。自分たちが生み出した財源は自分たちで使うという、典型的なお役所発想です。

 旧国鉄の分割・民営化によってできたJR7社のうち、経営が厳しい九州、北海道、四国の3社は独法の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が全株を保有しています。日経によると、国交省がこのうち収益力の向上しているJR九州は上場が可能と判断。2016年度までに上場させる方向で検討に入ったとのことです。

 具体的には秋に有識者会議を立ち上げ、上場時期などの詳細を詰めるとしています。典型的な審議会行政で、すでに結論は決まっているようですが。売却総額は現時点で「5千億円前後」(大手証券)との見方が多い、としています。

 問題はここからです。与党内では北海道と北陸で進められている整備新幹線の前倒し開業が検討されていますが、この財源に今回の売却益を充てる案が出ているとしています。つまりは与党から前倒し開業をせっつかれた国交省が、財源をひねり出すために考えたのが今回の上場案というわけです。

 これが縦割り行政の典型例であり、お役所発想の限界でもあります。これから予算編成の時期になりますが、ある省庁が何か新しい事業をやりたいと言っても、国の財布を握る財務省がなかなか認めてくれません。しかし、その役所が他の予算を削ったり、「埋蔵金」など新たな財源をみつけたりしてくれば、財務省はすんなりとオッケーする傾向があるのです。

 そこに国家全体として必要な予算なのか、今すぐやるべきなのかという発想はありません。官邸主導で成長戦略の推進のために使う特別枠も毎年一兆円程度。その他の数十兆円の巨額の予算は、こうした役所の論理によって無機質に決まっていくのです。

 今回の上場によって国が得られるお金は「売却益」ですが、本来であれば利益と呼べるようなものではありません。国は巨額の負債を抱えた旧国鉄を分割・民営化する際、24.1兆円の債務を引き継ぎました。24.1兆円もの借金を税金で負担したのです。

 今回はそれがほんの一部、返ってくるだけ。当時、国鉄の走っていない地域の住民も含めて国民が広く負担したように、今回も国民に広く還元しなければなりません。北海道と北陸に住む一部の住民の利益を優先すべきではありません。整備に充てるならまだしも、前倒しによって負担が増える分に充てるなど、もってのほかではないでしょうか。

 JR株の売却益は国交省のものではなく、与党の族議員のものでもありません。わずかな景気浮揚で、そんな当たり前のことが忘れられようとしている気がします。

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