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C-2輸送機開発遅延と防衛省の説明責任の欠除

防衛省は4日、今年度末に予定していた次期輸送機C2の
部隊配備を2年遅らせることを決めた。試験中に貨物扉が脱落するなど強度不足がみつか
ったため。C2の開発延長は3度目で、費用は当初計画から800億円増の2600億円
に膨らむ。

防衛省が次期輸送機の配備を再度延期、開発費800億円増
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0F90HH20140704

  ネット上ではちょっと前まで「国産兵器大好き」な人達が、C-2の開発はP-1と併せて3400億円で、A400Mなんかよりも遥かに安上がりで、高性能と自画自賛しておりました。

 ですが、3400億円というのは開発前の話で、その後開発費の高騰は続いておりました。それと日本の場合、防衛省のいう「開発費」には一般に試験費用が含まれておりません。対して外国の場合含まれることが当たり前です。10式戦車にしても「開発費」は686億円ですが、試験費用など諸経費を含めれば約1000億円です。これは防衛省のLCC報告書にも掲載されていますが、一種の印象操作といえなくもないでしょう。

 それを無邪気に信じて、国産勝った、外国負けたと喜ぶのは極めて幼稚です。

 さて問題はペイロードの低下が懸念されることです。当初の目論見が
30トン、それが最近では26トンまでに下がってきたといわれておりますが、それが更に低下することが考えられます。であれば戦闘重量26トンの機動戦闘車がそのまま運べなくなるわけです。三菱重工の人は付加装甲をはずせばOKですとおっしゃっておりましたが、その場合即応性はかなり下がります。
 またそれすらも困難なほどにペイロードが低下する可能性も否定できません。

 こういう情報は防衛省は公表しませんが、納税者に対して誠意的だといえません。

 開発が難航していたのはわかっていたはずですが、このような機体を震災復興のための補正予算で2機要求したことは犯罪的だと言えます。

 また防衛省はすでにこの2機含めて6機のC-2を発注していますが、これらの機体の改修の費用もかかるはずですが、その費用を誰が持つのか。これまた明らかにされておりません。
これまた説明責任の軽視です。

 さらに言えば、C-2の就役遅延によって生じる輸送力欠除のギャップを埋める方策もしめされておりません。単にC-1の飛行時間を減らせばいいと思っているのでしょう。
ですが、それであれば中国の脅威はない、あるいはC-2は本来必要なかったといっているようなものです。

 防衛省はF-35でも同じですが何年までに必要な装備だ、何年までの戦力化が必要だという意識が希薄です。
 任務遂行に装備が必要でこれが目的なのに、装備調達時自体が目的になっております。
これは平和ボケです。

 必要な時点までに入手が不可能であればギャップを埋める対処を行うべきです。
C-2の場合であればC-17とか、C-130Jとかをストップギャップで調達することも考えるべきです。

 ですが防衛省にはその気がないようです。国防や任務の遂行より「素敵」な国産兵器を調達することの方が大切なように見えますが、気のせいでしょうか。

 これもぼくは何度も指摘してきたことですが、そもそも大型旅客機も、輸送機も殆ど設計、商品化したことがない我が国の航空産業が、高い翼輸送機が、低翼のジェット旅客機のように高空を高速で飛び、ターボプロップ機の輸送機同様の低空での運動性という相反する要素をまとめあげる能力はないでしょう。欧米の一流メーカーにもできなかったことが出来ると考えるの楽観的を通り越して夜郎自大でした。
 しかも開発が始まった頃は、777とP-1、US-2も同時にプロジェクトが進められており、経験はないは、少ない設計者が掛け持ちで仕事をするわで、まともな環境だったとは言えません。
 
 しかも上記の要素を満たすためか、C-2には不整地運用能力がなく(空自が要求していない)、2000メーター級の舗装滑走路が必要であり、軍用戦術輸送機として失格です。 
 これを南西諸島防衛に有用だ、C130やC-27など他の輸送機は必要ない、C-2ですべてまかなえるというのは幻想以外のなにものでもありません。
  
 ついでにいえば海外任務でもC-2は不利です。現地で他国から部品の融通などもできません。イラクに派遣された空自の輸送隊が長期にわたって高い稼働率を維持できたのは世界のベストセラー機、C-130を使用していたらからです。
 またC-2ではアフリカの僻地の非舗装の滑走路では運用できません。
 
 最近防衛産業からみの記事はロイターが結構スクープを出してます。
 防衛産業は国内の記者クラブのメディアが興味少ない分野だったからでしょうが、もう少し国内メディアはこの分野で頑張って欲しいものです。

「東京防衛航空宇宙時評・Tokyo Defence & Aerospace Review」

http://www.tokyo-dar.com/

NEXT MEDIA "Japan In-Depth"[ジャパン・インデプス]に以下の記事を寄稿しております。
NEW<海上自衛隊のシーレーン防衛はフィクション>日本には戦時に守る対象となる自国の商船隊が存在しない
http://japan-indepth.jp/?p=6994

<バーバリーと三陽商会>ファッション業界「ライセンスビジネス」の怪
http://japan-indepth.jp/?p=6198
<防衛産業も営利企業>政府は防衛産業の持続可能な利益確保の必要性を国民に説明すべき
http://japan-indepth.jp/?p=5052

<武器禁輸緩和>安倍政権は「防衛装備生産基盤の危機回避」という本意を国民に説明せよ
http://japan-indepth.jp/?p=5014

<200億円の海自P-1哨戒機>性能も怪しい高コスト機の開発ではなく現有機の近代化を
http://japan-indepth.jp/?p=4818

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました
NEW国連加盟は憲法違反である
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014061900005.html?iref=webronza

国益のために国内ヘリ産業を潰すべきだ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014051200007.html?iref=webronza

ロシアとウクライナが簡単に刀を抜けない理由
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014041500002.html

知られざる日本発のクールジャパン的ヒット商品「エア・ソフト・ガン」はなぜ市場を失いつつあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014032400011.html

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