記事

リビアでの平和構築の動向

1.政治プロセス
9月2日、駐イギリス・リビア代表のグマ・カマディ氏が今後の民主化プロセスの概要を公表した。
それによると、リビアの統治は暫定的に国民評議会が担う。その下で、政治日程は(1)8か月以内に新憲法を起草するための制憲評議会をつくる、(2)制憲評議会設立後、1年以内(2013年春まで)に立法議会議員および大統領を選出する選挙を実施することになっている。また、憲法起草とその憲法承認を問う国民投票は、国民評議会のもとで実施するとしている。
このロードマップで民主化を推進するためのポイントになる国内要因としては、国民融和の達成が挙げられる。また国外要因としては、国連の平和構築支援が重要となる。
国民評議会はすでに、国連に選挙実施への支援要請を行っているとの報道もある。

2.治安面
カッザーフィ氏とその支持者が武装闘争を続ける中、9月1日、同氏は徹底抗戦をリビア国民に呼びかける声明(録音されたもの)をシリアのテレビ局に寄せた。
しかし、戦局は国民評議会側が優勢となっており、同議会の軍事部門はトリポリ南東部にバニワリード(カッザーフィ氏の潜伏先との噂がある)、および中部のシルト(同氏の故郷)などの都市での軍事行動を進める体制を整える一方、9月10日を期限に投降を呼び掛けている。
カッザーフィ氏の行方についてはいまだ不明であるが、9月3日付シャルクル・アウサト氏(電子版)は、国民評議会のアラブ連盟代表アブデル・モネム・アルホウニ氏の話として、マリ経由で南アフリカに出国しようとしているのではないかと報じている。

治安面での今後の注目点としては、(1)カッザーフィ氏と息子たちの身柄拘束、(2)散乱した武器の回収、(3)武装闘争に加わった市民の帰郷・職場復帰、(4)国軍及び警察の再編成などが挙げられる(国民評議会は既に国連に、地雷除去、司法制度の整備、警察の訓練を要請している)。
なお、欧米諸国が治安面で懸念していることに、(1)民兵の強化が進んでいる南部部族の動向、(2)ベルハッジ司令官を中心とするイスラム主義者の武装勢力の動向がある。
今後の国内情勢によっては国連が平和維持軍の派遣を検討する必要もあるとは思うが、国民評議会はこの件については否定的見解を示している。

3.経済面
国際社会の人道的緊急支援としては、(1)国連児童基金(UNICEF)が50万人分のボトル入り飲料水の提供、(2)世界食糧計画(FAO)が3万5000人分の1か月分の食糧(約600万トン)、および25万トン分のガソリンの提供に動いている。
トリポリでは電気、ガス、水道を供給するインフラに障害が生じており、市民の厳しい生活ぶりが報道でも伝えられている。一方、徐々にではあるが回復の兆しが見えるとの報道もある。

財政面では短期的には、9月1日にパリで支援国会議が開催され(およそ60か国・期間の首脳・閣僚レベル)、リビアの凍結資産(約500億ドル)のうち150億ドルの凍結解除が決定され、当面の対応が可能となった。
同国の経済復興に関しては、凍結資産の解除に加え、油田やガス田の資源開発、さらにはインフラの復興事業などに関し国際社会が積極的な動きを見せている。
今後の注目点は、リビア国内の新体制が「平和の果実」を、どれだけ公平性・公正性を高めて分配できるかである。

以上、リビアの平和構築の現在を概観したが、国際社会は「国益」をかけてリビアで外交を展開している。アジアでは韓国、中国の外交努力が目に付く。
一方、日本はどうか。9月1日のパリ会議ではサルコジ大統領(フランス)、キャメロン首相(英国)、メルケル首相(ドイツ)、ハーパー首相(カナダ)、クリントン国務長官(米国)などの要人が出席する中、日本の代表団長は外務省幹部(局長)であった(※)。
日本は、国内政治で様々な問題を抱えているが、このような重要な会合については、せめて元総理や元外相などを団長とすることを検討すべきだったのではないだろうか。

※外務省ウェブサイトhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/area/libya/friends1109/gy.htmlなども参照。

トピックス

ランキング

  1. 1

    ナイキ多様性広告 日本で大反発

    BBCニュース

  2. 2

    PUFFY亜美を選んだTERUの離婚劇

    文春オンライン

  3. 3

    「鬼滅の刃」米で成功の可能性は

    田近昌也

  4. 4

    秋篠宮さま誕生日に職員2名辞職

    文春オンライン

  5. 5

    宗男氏 礼儀ない野党議員を非難

    鈴木宗男

  6. 6

    「小泉さんの仕事」橋下氏が指摘

    橋下徹

  7. 7

    政府の五輪感染対策に批判殺到

    女性自身

  8. 8

    吉村知事の苦言に「ブーメラン」

    女性自身

  9. 9

    扇動行為ない周庭氏を封じた中国

    新潮社フォーサイト

  10. 10

    セルフレジが「改悪」になるお店

    内藤忍

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。