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加速するアイドルの海外進出 その裏に隠された意図とは

みなさん こんにちは。CuteStrategyです。

前回書きました「アイドルの必死なセールス・トークがファンを失う」が、BLOGOSの記事閲覧数で総合1位を獲得し、BLOGOS版とブログ版で合計1,500近くのいいね!を獲得するなど、多くの反響をいただき大変嬉しいです。ありがとうございます。

今回はアイドルの海外進出についてです。
(BLOGOS版では動画や検索推移のグラフが見れない場合があるので、その時は本家のブログで見ることをお薦めします。)

6月17日に日本の音楽業界に一つの衝撃的なニュースが駆け巡りました。
BABYMETAL、レディー・ガガのアメリカツアーサポートアクトに抜擢&アメリカ初ワンマンも

あの世界的に有名なアーティストであるレディー・ガガのオープニングアクトとして日本のアイドルグループBABYMETALが決定したのである。しかもレディー・ガガ本人からの熱烈なアプローチによる実現であると報道されています。
実は今アイドルグループの海外進出が着々と増えてきています。
なぜアイドルグループの海外進出が増えてきているのか当記事では様々な角度から分析します。



●BABYMETALを契機にアジア・アメリカ進出するアミューズ

BABYMETALはPerfume、サザンオールスターズや福山雅治などを有する業界の大手事務所アミューズ(東証一部上場)に所属している。元々はさくら学院と呼ばれる小学生・中学生の義務教育期間だけ所属できるアイドルグループのスピンオフ(部活動)として2010年11月に結成された3人組のグループである。

ヘビーメタルと日本のアイドルの可愛さを融合させた音楽で、発表当時からヘビーメタル好きの海外の人々から衝撃をもって受け入れられ、コアな人気を獲得してきました。



その後当初は海外のアニメフェスを中心に海外活動を進めて行くが、徐々に注目を浴びるにつれてシンガポールの単独ライブを皮切りに今年の7月から5カ国の欧米(フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ)でワールドツアーを開始するなど精力的に活動しています。

また、音楽のセールス面では、今年の2月26日にiTunes Storeで世界同時発売されたBABYMETALのアルバムが、アメリカ、イギリス、ドイツのメタルアルバムチャートで1位を獲得し、さらには、台湾やインドネシアのロックアルバムチャートで1位を獲得するなど、成功を収めています。

そしてアミューズはBABYMETALのシンガポール公演直後に、シンガポールの支社を子会社に変更することで東南アジア・中国マーケットへの事業進出を強化しました(注1)。さらには今年に入ってBYBYMETALの欧米ワールドツアーの発表直後に米国子会社の設立を発表(注2)するなど、BYBYMETALの海外進出に合わせる形で海外ビジネスに重点をおいていることが分かります。

今や1つのアイドルグループの動向が東証一部上場の企業の動向を左右しているのです。

◎BABYMETAL海外進出とアミューズの海外子会社設立の時系列

2013年12月28日  BABYMETAL:シンガポール単独ライブ実施
2014年1月21日   アミューズ:シンガポール子会社設立発表(資本金2億円)

2014年5月7日   BABYMETAL:ワールドツアー発表
2014年5月14日 アミューズ:米国子会社設立発表(資本金3億円)


●なぜアイドルは海外進出を加速させるのか

海外進出を進めるのはBABYMETALだけではありません。
アイドルの海外進出は2012年頃から本格化しており、AKB48、ももクロ、モーニング娘。、Berryz工房、℃-ute、でんぱ組.incなど中堅以上のアイドルグループは必ずと言っていいほど海外でのイベントを実施し、その数は年々増加しています。

特に2,3年前から日本文化に親近感を抱くアジアとヨーロッパを中心に拡大し、アニメフェスやJAPAN EXPOなどの日本文化振興イベントで数多くのアイドルがライブを行ってきました。また海外人気が特に高いHello!Projectは、アジアやヨーロッパを中心に、単独ライブを行ってきました。

一方、アメリカのショービジネスに浸透するのはなかなかに難しく、日本の音楽業界全体でも成功事例は数多くありません。アイドルも同様にアメリカにおいては以前から日本文化振興イベントを利用したゲストライブなどの公演等はあっても、本格的なアメリカ進出は行っていませんでした。しかし、2014年に入って、モーニング娘。'14、Cheeky Parade、BABYMETALが単独ライブを実施する予定などアメリカ市場に対しても攻勢を強めています。

なぜ現在アイドルの海外進出が増えてきているのだろうか?大きな理由として以下の4つである。


1.衰退する国内市場

現在、実は日本の女性アイドル市場は成熟期を超え衰退期に差し掛かっている段階で、
CDセールスやライブ動員数、検索数、動画閲覧数など定量化可能な数値が徐々に低下しています。(この内容の詳細とその対応策については2,3ヶ月後に別途記事化予定)

特に、ある程度実績のある中堅以下のグループほどその影響は深刻で、アイドルの運営の方々もそれを数値で実感し焦っていると聞いています。

そのような衰退期の市場において有効な戦略オプションとしては、経営学の重鎮であるマイケル E ポーターらによるエンド・ゲーム戦略の4つ、もしくは既存市場以外の市場を攻める3つの計7つのオプションが考えられますが、後者の戦略オプションのうち1つが海外マーケットへの進出なのです。

つまり、衰退する市場においてはROI(投資利益率)が低下するため、新しい市場が開拓できる可能性が高い海外市場に進出しているのです。


2.クールジャパンによる政策、広告代理店による海外進出の後押し

寿司、日本酒などの食文化や、アニメなどのサブカルチャー文化、ゴスロリファッションなどのkawaii文化などへ海外からの注目が年々高まるに連れて、日本政府はクールジャパンと称した対外文化宣伝・輸出政策を推し進めています。このクールジャパン政策の一角としてアイドルの文化輸出も含まれています。

そのような文化輸出の政策の中にあって、広告代理店の電通はクールジャパンを推進する最大のバックアップ企業であり、アイドルの海外進出にも関係しています。電通はAKB48の運営会社やその他のアイドル・グループとも親密な関係を築き、マス・プロモーションを得意としている。特に後述するJKT48においては、日本企業のインドネシアにおけるCMなど現地の若者に人気のあるJKT48を利用したプロモーションを実施することで大きな反響を得るなど、アイドルとビジネスを結びつけています。

また、博報堂は社内ベンチャー企業のALL BLUE.incを立ち上げ、トップダウン型の電通とは異なったアプローチを採用している。アイドルの海外に向けたニュース配信、グッズ販売、ファンレター翻訳などのサービスや海外ライブ開催のクラウド・ファンディングによる資金調達などをサポートしており、海外ファン視点中心のサービスを提供している。特にアイドルのニュース配信サービスTokyo Girls' Updateにおいては55万いいね!を獲得するなど海外からの注目も熱い。これはサブカルチャー文化の拡大はファンのコミュニティが大きな位置を占めることからボトムアップ型の戦略を採用するのはとても理にかなっています。


3.フリー経済に対応したアイドルと動画サイトの普及

デジタル・コンテンツのコピーや不法アップロードなどによるフリー経済の影響に苦しめられている音楽業界に対し、アイドルはライブや物販、チェキ会などの接触イベントと呼ばれるリアルのビジネスで収益を上げる構造を取ることによって、安定した収益源を獲得し成功することになった。

つまりアイドルはCDやミュージックビデオ(以下MV)などのデジタルコンテンツに収益獲得の重きが置かれておらず、その他のリアルの収益源に取り込むためのプロモーションツールとして利用されてきた側面が強い。そのため、アイドルはほとんど全てのMVをYoutubeなどの動画サイトに公式でアップロードされている。これはMVに世界中からアクセス可能な状況に置かれていることを意味しています。

特に歌だけではなく衣装や世界観が重要な意味を持つアイドルにおいては、動画によって配信される意味は大きく、世界にとって目新しく物珍しい日本の文化として注目を浴び始めました。

日本のkawaii文化に興味を持つ海外の女性がアイドルのダンスを真似し、再び動画をYoutubeに投稿することで他の外国人の目に映るなど、当初は少数ではあるけれど世界中のコアなファンから徐々に日本アイドルファンのコミュニティーを形成し、そのファン数を増やしていくことに成功しました。




4.為替変動による収益インパクトの変化

2012年末に現在の安倍政権に政権交代し、金融政策において大規模な量的・質的金融緩和が実施されることが濃厚になるにつれて為替は77円前半まで進行した円高方向から一転し円安方向に進みました。日銀による大胆な金融緩和が決定されたあとは急速に円安方向に進行し、2013年末には105円半ばを付けた後は、米国の金融政策の見極めが不明瞭であるため現在は101円後半~102円代で落ち着いています。

しかし中長期的に見れば米国の金融政策はテーパリング(量的金融緩和の縮小)に進んでいるため、中国のバブル崩壊リスクやウクライナ、イラクの地政学的リスクに大きな懸念が生じない限り、円安方向に再び進行する可能性が高い。

つまり、2012年の年末と比較すれば、現在外貨は30%以上価値が上昇しており海外からの収益インパクトは上昇していることになります。

また、現在の為替は中長期的に見れば、まだ円高傾向である可能性が高く、そのため、アミューズやAKB48グループが海外に子会社や海外グループを作るのは中長期的には割安な投資である可能性が高いのである。


●48グループによるテンプレート輸出

多くのアイドルにとって国内市場規模が大きい日本市場では、海外公演によるビジネス的成功というよりむしろ海外公演を行った実績を国内への一種のステータスとして獲得する目的であることが強い。それとは異なったアプローチとして最も注目に値するのが、先程述べたAKB48のシステム輸出である。


AKB48は日本における成功のスキームをテンプレート化し、海外に輸出しています。現在、JKT48(インドネシアのジャカルタ 961万)、SNH48(中国の上海1435万人)、TPE48(台湾の台北262万人)と成長性の高い都市に3グループが誕生している。その構成メンバーは日本人ではなく、ほとんどが現地の人間を採用しており、日本のアイドル文化と海外文化を上手く取り込むことによって徐々に人気を獲得しています。これはK-POPにおいてマルチリンガルのメンバーを参加させて、海外市場に進出、浸透するパターンとも異なるアプローチです。

特に注目すべきはJKT48で、JKT48が拠点を構えるジャカルタはインドネシア共和国の首都である。驚くべきことはアイドルのファン層の中心である30歳未満が人口全体の50%を占める。これは日本の30歳未満の3.5倍の人口であり、アメリカとほぼ同じ人口である。経済に関しても、この10年で名目GDPはUSドルベースで3.7倍に成長している東南アジアの中でも最も有望な市場の1つです。

そしてJKT48は現在、以下のグラフのように日本のAKB48とほぼ同等の注目度を浴びるまでになっている。
また先程も述べたとおり、これらのインドネシアの若者人気を獲得したJKT48を利用して電通はポカリスエットなどの日本企業の商品のCMでJKT48を起用することで効果を上げるなど、アイドルとビジネスを紐付けている。

●2013年始の予測との適合

最後は余談になりますが、筆者が一年半前の2013年1月中旬に雑誌のインタビューで2013年のアイドル市場の予測を答えさせて頂きました。その中で2013年に日本のアイドル業界は成熟期に突入する話をし、次に海外市場が注目されるという予測をしました。その中で海外で活躍するアイドルとして挙げたのがBABYMETALとJKT48の2つです。

当時BABYMETALがメジャーデビューを果たす前であり、JKT48が専用劇場を解説して4ヶ月が経った時期である。現在2014年の半ばではあるが、今思うとこのコメント欄も含めてかなりの的中率だと思うのですが、如何でしょうか(注3)。
リンク先を見る
2013年飛躍が期待されるアイドルたち(一部抜粋)

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注) 当記事は2014年7月3日Business Journal掲載記事
「BABYMETAL、JKT48…アイドルの海外進出、なぜ加速?その4つの要因を分析」
を原稿のまま掲載しています。
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