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週刊ダイヤモンド、自衛隊と軍事ビジネスの秘密の評価

リンク先を見る週刊ダイヤモンド 2014年 6/21号 [雑誌]
ダイヤモンド社
2014-06-16
ダイヤモンド社



少し前の話になりますが、2014年6/21日付けの週刊ダイヤモンドで、「自衛隊と軍事ビジネスの秘密」という特集がありました。おそらくはユーロサトリ開催のタイミングに合わせた企画でしょう。「秘密」というのは大げさで、たいていの内容は、軍事に興味がある人ならばご存知の内容でした。まったく知識が無い人にはそれなりに勉強になる内容です。
ですがぼくが評価するならば及第点、60点ぐらいです。
一般の人が理解するためには自衛隊の階級やら出世の仕組は便利で評価はするのですが、自衛隊の説明が主なのか防衛産業にフォーカスを当てた特集なのかどっちつかずです。

媒体の特性を考えれば、防衛産業とその特性、またどの程度日本の装備の輸出が可能かを主体にし、それを理解するための自衛隊の解説を従として行うべきでした。

その線であればミリメシレポとか、基地城下町を歩くとかは無駄な企画です。岡部いさく氏の「空母、原潜、核保有は得か損か 経済合理性をプロが一刀両断」という記事も面白いのですが、特集のフォーカスをぼかせているように思います。

また防衛産業に対する認識や知識がビジネス誌にしては薄い気がします。どちらかと言えばマニア誌に近いような感じを受けます。
世界の兵器市場に関する記述もすくなく、売上げランキングがあるくらいで、分析も極めてプリミティブです。

それからP.38の「海外国防関係者が熱い視線、輸出兵器の最右翼はこれだ!」
という企画があるのですが、その中の表では最有力がUS-2で、最下位が99式自走りゅう弾砲になっています。US-2に関しては経産省の担当者ですら売れたらいいなあ、程度です。
新明和は自分たちにUS-2の知的所有権がない、防衛省にあるなんて寝言をいっているくらいです。防衛省の担当者が苦笑しておりましたが、商売の当事者としての自覚が欠除しています。

C-2に中東から引き合いが来ているという話がありますが、これはUAE含めた湾岸諸国からです。がこの業界引き合いが来たからといって話が簡単に決まるものではありません。
日本のメディアは引き合いが来た=売れそうだと煽る傾向がありますが、たいてい竜頭蛇尾になっています。

ぼくならば真ん中にある素材、レーダー、センサー、追尾装置などをトップにもってきます。更に言うならば金属加工や光学機器も含めた、デバイス、コンポーネントも加えるべきです。

企画で商社に関するものが全くありません。我が国は兵器を多数輸入しておりますし、商社はライセンス生産の仲介もやっています。輸出や共同開発に関しても商社抜きでは難しいでしょう。防衛産業を語る上で商社をオミットしたのはどうかと思います。ミリメシなどの企画を載せるくらないならばば使える紙面はあったはずです。

中古装備の輸出も語られていません。世界の兵器市場では中古市場は極めて大きくなっています。中古をうるだけではなく、それらのアップ・グレードや保守などもビジネスになっています。
我が国でもP-3CやFH-70など使えるけど廃棄する予定の装備は多数あります。すでに「商品」が存在しているわけです。
さらに言えばホークなど、すでに米国のメーカーが生産をやめたけど、我が国では作っているものがあります。これらもまた有力な潜在的な輸出商品です。

オフセット取引に関しても記述が殆どありません。
US-2買うからコメを買ってくれ、ワインを買ってくれというような話があった場合、現在の我が国では対処するスキームがありません。

「潜水艦の建造は癒着の温床?微妙な海自と三川の三角関係」
という記事では自由競争入札にしたら川重、三菱重工の以外の会社が潜水艦を受注したら大変だ、みたいなことを書いていますが、そのような会社は受注できません。
実際10式戦車だった入札ですが他社は応札しておりません。
潜水艦の問題は隣り合った二社が交互に受注をしており、競争関係がないことにあります。
競争がないからコストが下がらない。だから調達費が高くなるという現実があります。
この記事では天下りを無くせば癒着がなくなるかのように書かれておりますが、的外れです。

事業を統合すればいいのです。そうすればベンダーの数は半分になりますが、仕事は二倍、利益はそれ以上に厚くなります。量産コストで調達単価もさがるでしょう。実際エンジンは三菱重工が作っている潜水艦も川重がつくっています。

それにメーカーが二社あると海外から輸出の引き合いがあった場合、足の引っ張り合いになります。これを外国からうまく利用される可能性もあります。これは他の同じ分野に複数のメーカーが存在すれば起こりうることで、防衛省や経産省に調整機能がありません。

他国では当然の事業統合、合併に関してもツッコミが浅いように思われます。

それからメーカーに対する取材があまりないように思えます。これは想像ですが微妙な時期だけに多くのメーカーが取材を受けなかったのではないでしょうか。ですが、上場企業が説明責任を果たさないのは大きな問題です。


色々書きましたが、とは言え、ビジネス誌で防衛産業が「産業」として語られることには大変意義があります。今後も多くのビジネス媒体が防衛産業を「産業」として報道、分析して欲しいものです。

新しい防衛航空宇宙専門サイトを始めました。
「東京防衛航空宇宙時評・Tokyo Defence & Aerospace Review」

http://www.tokyo-dar.com/

strong>NEXT MEDIA "Japan In-Depth"[ジャパン・インデプス]に以下の記事を寄稿しております。
NEW<海上自衛隊のシーレーン防衛はフィクション>日本には戦時に守る対象となる自国の商船隊が存在しない
http://japan-indepth.jp/?p=6994

<バーバリーと三陽商会>ファッション業界「ライセンスビジネス」の怪
http://japan-indepth.jp/?p=6198
<防衛産業も営利企業>政府は防衛産業の持続可能な利益確保の必要性を国民に説明すべき
http://japan-indepth.jp/?p=5052

<武器禁輸緩和>安倍政権は「防衛装備生産基盤の危機回避」という本意を国民に説明せよ
http://japan-indepth.jp/?p=5014

<200億円の海自P-1哨戒機>性能も怪しい高コスト機の開発ではなく現有機の近代化を
http://japan-indepth.jp/?p=4818

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました
NEW国連加盟は憲法違反である
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014061900005.html?iref=webronza

国益のために国内ヘリ産業を潰すべきだ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014051200007.html?iref=webronza

ロシアとウクライナが簡単に刀を抜けない理由
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014041500002.html

知られざる日本発のクールジャパン的ヒット商品「エア・ソフト・ガン」はなぜ市場を失いつつあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014032400011.html

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