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NISA650万口座達成

今年1月からスタートした少額投資非課税制度、通称NISAの口座利用が650万件を超えたと言う。

口座開設者の65%が60歳以上である一方で、特に20歳代(2%)、30歳代(6,5%)、40歳代(10,6%)の若年層、現役世代の利用が進んでいない。

私は≪資産運用(投資運用)はお金を持っていない人が行うものである≫という考えを持つ金融アドバイザーである。今お金を持っていない人、お金に余裕のない人に実践してもらいたいのが投資運用である。だからこそ特に若い人たちに当該制度を利用活用してもらいたい。

60歳を越え、ある程度のまとまった退職金を受け取り、40数年間まじめに仕事をしてきた人々は、現状それなりの公的年金(厚生年金・共済年金)を受給されており生活はすこぶる安定している。リスクのある投資運用に資金を投下するよりも、まず豊かな老後をエンジョイできる人たちには、お金をどのようにして使えばよいのか(消費を考える)を是非、真剣に考えてもらいたい。

悲しいことに我が国においては金融機関や金融セールスマンは第一に≪売り上げ(手数料)≫を拡大させることを使命としている(顧客利益は二の次である)。だから、売り上げを拡大させるためには、多くの資産を保有している人たちをターゲットにする。

すなわち高齢者である。今回の調査で出たNISA口座開設者の多くが60歳以上に偏っているのは、まさにこうした金融機関の営業姿勢から来るものである。

NISA(非課税投資の制度)を多くの日本人が活用することは素晴らしいことであると思う(現状のNISA制度設計上には多くの問題点はあるものの、方向性は正しいと私は考えている)。

ただし、懸念するのは未熟な投資家たち(NISA利用者たち)は、兎に角「NISA=非課税=得」という説明しか受けておらず、NISA制度の優位性(非課税であること)のみを鵜呑みにして、本来

「投資とは何なのか?」
「どのようにして投資運用を継続していけばよいのか?」
「投資型の商品をどのようにして組み合わせ、そしてその後どのようにして管理していけば良いのか?」
「そもそも投資運用でどのように利益を出していけばよいのか?」

などは全くレクチャーを受けていない。

先頃、弊社のセミナーを受講され、個別相談を申し込まれた年配者の方から「自分はNISAを活用して投資信託を購入したが、これで大丈夫か確認したい」とアドバイスを求められた。持参されたのはご自身が現状保有する投資信託の明細書(残高報告書)であった。

○○ハイイールド債、BRICS○○債券、グローバル○○債、豪○○債、すべて債券であった。おそらく高齢者であったから【株式】や【不動産】を組み入れた投資信託ではなく、【債券中心】の投資信託を営業マンが薦めたのだろうと容易に想像できるが、クライアントの皆さんならば、【債券】だけに資産を偏らせることの怖さを十分に理解できるだろう。

複数の国々の、複数のアセットクラス(資産クラス)に分けることこそが、リスクを低減できるのである。「将来のことは誰にもわからない」、だからこそ異なるアセットクラスに「分ける」のである。

NISAを利用して○○J-REIT、ワールド○○リートと今、流行の複数のリート(不動産投資信託)ばかりに投資していた人もいた。また日本株○○ファンド、中小型○○日本株と、昨年上昇率の最も高かった日本の株式の投資信託を複数保有されていた高齢者もいた。

皆さん、NISAを活用して、「分散」というアドバイスの元に複数の投資信託を推奨され、言われるがままに購入されたらしい。ほとんどの方が一時の相場の好調で幾分利益は出ているものの、おそらく、おそらくですよ!再び相場が不調になったときに大きな損失を抱え、投資に対する失望や誤解をもたれるのだろうと思うと非常に悲しい。

私は、NISAという制度が一人歩きしていることに不安を持っている。

今回出版した書籍にも書いているが、【非課税】【ノーロード(販売手数料無料)】は確かに顧客にとって有益な制度・商品であるが、そこのみに着目して、投資をする本来の目的である【利益を獲得する(リターンを獲得する)】ことについては何ら知識を持たないようでは、金融機関・金融セールスマンの手数料稼ぎの餌食になるだけである。

投資商品を取り扱う金融機関や金融セールスマンも良く考えて欲しい。今回、政府が後押しする【NISA】によって、多くの投資家たちに、それこそ5年、10年、20年(NISAの制度は5年間だから5年以内に利益を出せばよい、などと勘違いしている金融マンが存在していたならば、それこそ悲劇である)かけて利益がもたらされなければ、投資家たちから見捨てられるだけでは済まされない。

大袈裟に言えば、日本という国自体が【終わる】!そんな危機感を抱かせるのである。

我が国にはバブル時代まで四大証券会社(野村、大和、日興、山一)が証券市場に君臨していた歴史がある。特に私が在籍していた1983年~1992年頃は世界の四大証券とまでうたわれた。にもかかわらず、90年以降登場した新手のネット證券にほとんどの個人投資家を奪われて、わずか10年程度でリテール部門(個人営業)の勢力図は大きく変貌した。

巷では「手数料が安いから、ネットで証券取引を行う」というが、多少手数料が高くとも、過去の歴史の中で証券会社が多くの投資家たちの財産形成に大きく貢献できていたならば(だって高度成長を経てバブル時代まで、右肩上がりの日本社会に投資していたならば、ほとんどの投資家たちが膨大な、本当に膨大な利益を獲得したはずである)状況は大きく違ったはずである。

きっと多くの投資家たちは当時使い慣れないインターネットでわけのわからない證券用語や市場情報を自分自身で検索・検証するよりも、親切で相場環境の好調時も不調時も絶対に逃げないで寄り添ってくれ、そして大きな利益をもたらしてくれた(多くライフプラン達成に貢献してくれた)證券営業マンを簡単に見捨てなかったと思う。

簡単に『手数料の安さだけ』で見捨てられたと言うことは、まさに長きに渡り顧客利益に貢献できていなかった証拠である。

アホな『NISAでキャッシュバックキャンペーン』で新規口座獲得競争に明け暮れるのではなく、今回のNISA導入を一時の投資ブームとして終わらせてしまってはいけない。

NISAで多くの投資家が財産を形成し、『(貯蓄運用ではなく)投資運用』が財産形成の有効な手段であるということをすべての日本人が体現できることを願う。

特に当該制度が20代、30代、40代の若年層に広がっていき、彼らの将来不安が払拭され、豊かなライフプランの達成が実現されることを望むばかりである。

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