- 2014年07月01日 07:00
「集団的自衛権」のリアル――自衛隊の戦略的活用を考える - 伊勢崎賢治×柳澤協二
3/3一度出したら引けない
伊勢崎 最後に、質問していいですか。いま、南スーダンに自衛隊が派遣されています。派遣されてから、現地では政府勢力と反政府勢力との抗争が激化していますよね。状況はどんどん悪くなりつつありますので、もし、本格的な戦闘がはじまったら、派遣時の法的根拠である、PKO協力法の「5原則」である「紛争当事者間で停戦合意が成立していること」を破ることになりますよね。柳澤さんだったら、自衛隊に帰って来いと言いますか。
柳澤 ……言えないですね。
伊勢崎 ああ、そうなんですね。
柳澤 PKO法では、停戦合意が崩れたら業務を中断しなければならなないし、戦闘が恒常化するのであれば撤収することになっています。しかし、日本だけ撤収するのは周りに対する影響は大きいですし、やはり難しい。私が官邸にいたら、なんとか理屈をつけて撤収を引き延ばそうとしたでしょうね。
ただ、そうしたところで、根本的な解決にはなりませんし、状況任せというわけにもいきませんから、非常に悩んだでしょうね。
伊勢崎 僕もそれが正しい道だと思います。自衛隊が一番先に撤収したら、世界中の人道団体から非難が来ると思いますよ。
柳澤 スーダンへの派遣は、私が官邸にいた時から、自衛隊を出せないかという話があったんです。一番の「抵抗勢力」は防衛省でした。どこに国益があるのか分からないし、あんなに物騒なところに部隊は出せないと。防衛省が一番現実的に考えていました。部隊というのは、一度出したら簡単に引けないものです。
伊勢崎 そうですね。だから、大部隊を送る意味を考えた方がいい。一度出してしまったら、少しの犠牲が出たからって簡単に引けるものではないんです。安倍首相の言う「積極的平和主義」についても、その観点を持った上で議論をしていくべきだと思います。
(「マガジン9」(http://www.magazine9.jp/ )が主催する第32回マガ9学校『集団的自衛権と自衛隊 「積極的平和主義」はホンモノか』より一部抄録)
(本記事はα-Synodos151号からの転載です。)
同イベントは、マガジン9HPにも掲載されております。
1部 http://www.magazine9.jp/article/shudanteki-jieiken/13052/
2部 http://www.magazine9.jp/article/shudanteki-jieiken/13144/
画像を見る伊勢崎賢治(いせざき・けんじ)
1957年東京都生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。東京外国語大学大学院「平和構築・紛争予防講座」担当教授。国際NGOでスラムの住民運動を組織した後、アフリカで開発援助に携わる。国連PKO上級幹部として東ティモール、シエラレオネの、日本政府特別代表としてアフガニスタンの武装解除を指揮。著書に『インドスラム・レポート』(明石書店)、『東チモール県知事日記』(藤原書店)、『武装解除』(講談社現代新書)、『伊勢崎賢治の平和構築ゼミ』(大月書店)、『アフガン戦争を憲法9条と非武装自衛隊で終わらせる』(かもがわ出版)、『紛争屋の外交論』(NHK出版新書)など。新刊に『「国防軍」 私の懸念』(かもがわ出版、柳澤協二、小池清彦との共著)
画像を見る柳澤協二(やなぎさわ・きょうじ)
NPO法人国際地政学研究所理事長
1946年東京都生まれ。大学卒業後の1970年に当時の防衛庁に入庁。防衛大臣官房官房長、防衛研究所所長などを経て、2004~2009年まで内閣官房副長官補(安全保障担当)。イラクへの自衛隊派遣などを監督する。2009年の退官後はNPO「国際地政学研究所」理事長などを務める。著書に『検証 官邸のイラク戦争——元防衛官僚による批判と自省』(岩波書店)、「改憲と国防」(共著・旬報社)、「亡国の安保政策」(岩波書店)などがある。



