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佐賀県のリアルな有効求人倍率

いまから6年前。ある会合で会った大学生からこんなことを言われた。

「僕は佐賀県出身でいまは県外の大学にいます。これから就職を考えていかないといけないのですが、佐賀県にはなかなか働くところがなさそうで。」

僕は答えた。「いい企業もいろいろあるし、求人もけっこうあるよ。」

それに対して彼はこう答えた。「でも有効求人倍率低いですよね。」

学生が有効求人倍率の数字を見て将来のことの判断材料にしているのか。新鮮な発見だった。

そこで、有効求人倍率のことを勉強してみた。そしたら、面白いことがわかった。

有効求人倍率というのは「佐賀県内のハローワークに登録している求職者の数」と「佐賀県内の職場に対する求人の数」の倍率、とふつう思うではないか。

ところが違うのだ。

求職者、つまり仕事を探している人、についてはそれでいいのだけれど、求人数については違っていて、「佐賀県内のハローワークが受理した求人の数」だ。

たとえば、佐賀県内に本社はないけれど工場や事業所がある、という場合は、佐賀県内の工場や事業所の求人についても、その企業の本社の採用担当部局が一括して本社の所在地のハローワークに出すケースも多いらしい。なので佐賀県における求人数にはカウントされずに、本社所在の都道府県における求人数としてカウントされてしまうというのだ。

昨年佐賀に進出されたSBI損害保険株式会社佐賀オフィス(コールセンター)にしても、現在佐賀工場を建設中の株式会社山本海苔店にしても県内で多くの求人を出していただいているのだが、進出時は佐賀県内に事務所機能がないため、本社所在地にカウントされて佐賀県の数字にはならないのだ。この有効求人倍率の取り方を「受理地別」という。これまでは、これが公表されてきた。

では実際に「佐賀県内の職場に対する求人の数」に基づく有効求人倍率はないのか、といえばそれはある。それが「就業地別有効求人倍率」という数字だ。ただし、当時は公表されていなかった。

佐賀県の場合は、これまで公表されてきた「受理地別有効求人倍率」とこの「就業地別有効求人倍率」とを比較すると「就業地別」の方が高い。本社が少なく工場や支店が多い地域は、どうしてもそうなる。

このことが勉強の結果わかったのだ。

さっそく数か月後に、厚生労働省に対して「就業地別の有効求人倍率を全国的に公表していただきたい」という提案書を持って訪れた。(平成20年6月3日)

厚生労働省の答えはノーだった。「これまでの統計との整合性が取れないから」みたいな理由だったと思う。ただ、「就業地別の数字にご関心がおありのようなので、佐賀県だけには佐賀県の数字を毎月お知らせするようにしますから」と付け加えられた。わざわざ僕が行った、ということに対する心くばりだったのかもしれない。

その後、佐賀県は毎月有効求人倍率を公表する際に、必ず「受理地別」と「就業地別」の両方を公表するようにした。それ以来、つねに「就業地別」の方が数字が高い。

佐賀県庁のwebサイトでは、「受理地別」と「就業地別」をずっと取り上げてきている。このサイトではわざわざ「就業地別有効求人倍率の方が、雇用の需給バランスをより反映した数値と考えられます」と注までつけている。

佐賀県の有効求人倍率

ところが、メディアはこの数字を全く取り上げてくれなかった。いつも佐賀労働局が公表する「受理地別」の数値でしか記事は書かれなかった。WEBサイトで「実は数字はもっと高いんです」と説明したところで、これを見てくれる人は多くない。何度か「就業地別」の数字を記事にしていただくようにお願いしたが、取り上げてもらえなかった。

それが、この6月27日から厚生労働省は「受理地別」だけでなく「就業地別」も公表することになった。

となったら新聞によってはそのことを書くようになった(西日本新聞6月28日3面「求人倍率改善1.09倍」)。

なんかさ、取り上げていただくようになったのは嬉しいのだけれど、僕らが公表していたときには無視だったのにな、とすねたくもなる(笑)。


佐賀県が政府に提案したことが6年経ってやっと実現したことを嬉しく思う(残念なことに佐賀新聞では相変わらず受理地ベースだけで記事が書かれているけれど)。

できれば、あの学生だった人に会ってこう報告したい。

「平成26年5月の佐賀県内の有効求人倍率は受理地別で0.92でしたが、就業地別では1.04でした。九州では熊本県に次いで2位。全国で31位です。

これだけの働く場が、いまならあります。やっとこう言えるようになりました。あなたのおかげです。」

それともう一つ。

佐賀県では8月12日(火曜日)に就職面談会を開催する。いい仕事がいろいろある。県内にお住いの方もお盆で帰省される方も、ぜひ参加してみてほしい。

ふるかわ 拝

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