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地方の雇用と収入を確保し国土を守るために 水産政策の転換を提言しました

今朝のみなと新聞に、これまで合同水産政策勉強会で進めてきた水産政策の改革提言について取り上げていただきました。

<WEB記事から引用>
自民党・合同水産政策勉強会 「IQで日本漁業再生」提言自民党の水産政策勉強会(武部新代表)と若手水産研究会(小林史明代表)がつくる合同水産政策勉強会は17日、「日本漁業再生のための個別漁獲枠(IQ)制度導入」を柱とする提言をまとめた。今後、水産部会などで議論を深め、政策としての実現を目指す。
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/week1.html
実際の提言本文は下記。

専門用語が入っていたり、政策の意味がパッと見はわかりづらいと思いますので補足を※青字で加筆します。

提言

日本の漁業を持続的な成長産業とし水産日本を再生するため、新たな資源管理制度として科学的な根拠をベースとする個別漁獲枠制度を導入する

提言概要

 日本の水産業は衰退の一途を辿っている。日本の漁業従事者は、過去40年で三分の一に減少し、その半数は60歳以上の高齢者である。漁村の限界集落化が進行し、地方の衰退に拍車をかけている。漁業が衰退する背景には、日本周辺海域の水産資源の減少がある。

日本の沿岸では、捕獲が厳しくなってきている魚種や、漁場がだんだんと遠くなっている魚種が多く存在している。漁業者が収入を確保するために漁獲圧を高めた結果、資源がますます減少し、漁業全体の長期的な利益が損なわれるという悪循環に陥っている。このまま水産資源の減少が続けば、水産日本の再生の重要な柱である輸出倍増戦略に支障を来すのみならず、今まで普通に食べていた海の幸が次の世代では食べられなくなる可能性すらある。

海外に目を向けると、ノルウェー、ニュージーランド、米国など、多くの先進国の漁業が経済的に成長を続けている。今の日本と同じような状況から、政治主導による政策の転換によって、漁業を成長産業に導いたのである。これらの国に共通して導入されているのが「個別漁獲枠制度」である。

個別漁獲枠制度とは、十分な産卵親魚を確保できるように全体の漁獲枠を設定した上で、早獲り競争を防ぐために漁獲枠を個々の経営体に配分する資源管理手法である。個別漁獲枠制度を導入することで、水産資源が生み出す価値を増やしつつ、得られた利益を漁業者間で公正に配分するための制度である。個別漁獲枠制度の導入により、
① 資源の持続可能な利用、
② 競争の緩和によるコスト削減、
③ 魚のサイズ・品質の改善による単価の向上

などの効果が期待できる。

魚種の資源状況によっては一定期間減収となることも想定されるため、政府による補償で収入を担保しつつ、厳格な資源管理を実施することで、上記にあげた効果により、漁業者同士の対立・紛争を抑制し、離島や遠隔地の雇用を担っている小規模な漁業者の収入を安定させるとともに、大規模な漁業が中心となる沖合漁業者の収益を向上させることができる。

また、ロンドン以降のオリンピック・パラリンピックでは、国際的な持続性認証された水産物のみを提供するという調達方針が示されている。東京五輪で国産魚を提供するために、国際水準の資源管理を導入した上で、それを国際的に周知する必要がある。

 この考えに基づき、合同水産政策勉強会は、次のとおり提言する。

1.漁業生産に占める割合が大きな広域分布する魚種(TAC魚種、ブリ、クロマグロ、トラフグなど)について、国が総漁獲枠(TAC)を設定し、大臣許可漁業は漁船ごとに、知事許可漁業は地域ごとに漁獲枠を配分する。

※TACとは:資源状況等の科学的データを基礎に、漁業経営等の社会的事情を勘案して、魚種別に年間の漁獲量の上限(TAC)を設定する制度。(TAC:TotalAllowable Catch)現在、日本のTACは7魚種のみで資源管理を実現している国と比べると少ない。資源調査・管理が可能な魚種については、資源状況がよいものも今のうちからTAC対象として管理したほうが持続的に漁獲可能なため、TAC対象を増やすことも必要です。

大臣許可漁業とは県境をまたいで漁をおこなうような漁業で沖合漁業が中心。

県知事許漁業とは沿岸漁業が中心です。IQは基本的に船ごとに漁獲可能な量を割り当てる管理方法なのですが、沿岸の場合は船ごとではなく地域ごとに割り当てることで現実的な管理ができると考え提言しています。

2.離島や遠隔地など、漁業の雇用が特に重要な地域には、離島・遠隔地特別振興漁獲枠を設定し、地域の雇用確保に努める。

沖合漁業は資源さえあれば、効率的な漁業で国内外へ流通させ収入をあげていただきたいのですが、離島や遠隔地の場合はそこに人が住んでいるもしくは漁をしていることが、安全保障上も重要になります。そこで、離島や遠隔地の漁業者の漁獲量を一定枠確保することで、雇用と収入を確保する政策を提言しています。

3.科学的根拠による資源管理を円滑かつ公正に実行するため、資源量の評価及び調査、漁獲量の適切な監視及び統制を実施できる体制を整備する。
独立行政法人水産総合研究センターの調査結果をもとにTACを設定しているのですが、現在は漁業者の収入源を配慮することからTACを年度の途中で増やしたりと本来の機能を果たせていない場合があります。予算も不足しているため、組織の在り方を再検討する必要があります。

4.国は、それぞれの港の水揚げ量を確認し、漁獲枠を超過しないように必要な指導を行う。漁獲枠を超えて漁獲した場合、水揚げ代金は国に返納する。

5.大臣許可漁業は、漁獲枠の範囲内で自由に操業を行い、漁業利益の増大、食料の安定供給及び輸出の増進に貢献する。

6.知事許可漁業は、漁業協同組合の調整の下で地域漁獲枠を運用し、地域の雇用を支える。漁場の偏りが生じた場合には、当事者の話し合いで解決をする。

沿岸漁業における漁獲枠の調整は地域の事情に精通した漁協に調整をしていただくべきと考えています。

7.すでに減少している資源については、資源回復を最優先として、漁獲圧の削減を行う。それにより生じた短期的な漁業収入の減少を緩和するための経営的な支援措置を講じる。

IQなど厳格な資源管理導入を提案する際、一時的な減収が予想されます。そこに対してはしっかりと補償を用意し、その後資源回復後に漁業者の方々には稼いでいただき税収として返していただければよいと考えています。新潟県では収益返納型という、一定期間の減収を補償し、その後利益が出た時から返納してもらうという手法もとられており、その場合は最終的には国に負担はありません。

8.二国間協定による漁業管理に大きな問題が生じてきている東シナ海においては、多国間漁業管理が実行できる国際的な地域漁業管理機構を創設する。

非常に難しい課題ですが、日中台韓で同じテーブルで議論する以外に解決策はありません。共通の資源である水産物でまず同じテーブルにつくことができれば、外交上も大きな意味を持つと考えています。

9.他国の専門家をアドバイザーとして招聘し、資源評価及び漁獲枠設定のプロセスについての助言を得る。

10.天然魚はMSC、養殖魚はASCの予備審査を受けて、国際的な認証取得に必要な措置を講じる。

日本にはMELという認証がありますが国内の水産関係者で構成された団体のため国際的に認められるのは現状では難しい体制です。ロンドンオリンピック以来、オリンピック開催時に関係者へ提供できるのは上記の認証を得た水産物に限定されています。私自身、MELを全否定するつもりはありません。もし日本は欧米型のMSCではなく、MELで日本は行くのだ!と覚悟をきめるのであれば、他国から専門家をいれて世界的に認められる認証に育て、欧米とは漁業環境がことなるアジア共通の認証にまで昇華させるべきと考えています。

 この提言を強い政治のリーダーシップにより実行、実現することにより、未来に日本の食文化の礎である漁業資源を残していくことが水産日本の再生であり、漁村山村がある地方での生活を豊かにすることに直結し、地域経済の再生と活性化につながる有効な手段となると信じる。 

以上が提言の内容です。補足とあわせると長文になりましたが、この政策は、今後の日本の漁業だけでなく地方の雇用と収入をどう確保し、過疎化を防ぐか。加えて離島や遠隔地での漁業を持続させて安全保障的役割をになってもらうか。水産物の輸出を増加させ一次産業を成長産業とできるかがかかっている重要な政策です。

この提言を自民党水産部会の幹部の方々に説明にまわり、今後自民党内に検討組織をたちあげていただけるよう調整しているところですが、この資源管理政策はその第一歩でしかなく、そのほかにも流通、加工、販売など各工程で課題がありますので、次期国会では全体を整理し、解決に取り組んでいく体制を作っていきたいと考えています。政策の転換には関係者だけでなく多くの方の理解が必要になりますので、ぜひ理解いただき賛同いただければ多くの方に拡散いただけると幸いです。

※なお、今回の提言はこれまでの水産庁の政策を否定するものではなく、政策的に後押しをし、もう一歩踏み出してもらうためのものです。ネット上では場合によっては役所そのものを非難するような意見がでますが、現場をよく知り一番汗をかいているのは役所の方々ですので、そこはご配慮ください。

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