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質問主意書への答弁書で「吉田調書は公文書、情報公開請求の対象」「内訳は公開しない」と閣議決定。でも、ヒアリング記録は「非公開には合理的理由が必要」なはず。「内訳」を公開しない理由は?

6月27日、「東京電力福島原子力発電所事故における事故調査・検証委員会が行ったヒアリング記録に関する質問主意書」(以下、ヒアリング記録質問主意書)「吉田昌郎・元福島第一原子力発電所所長に対して行われたヒアリング記録に関する質問主意書」(以下、吉田調書質問主意書)に対する答弁書が閣議決定されました。

また政府は、私の質問主意書に対する答弁書の提出日と同日、下記の方針を決めました。

政府事故調査委員会によるヒアリングの記録開示に関する本人の意向確認ついて

これについて、6月28日の朝日新聞が以下のように報じています。

朝日新聞記事「政府原発事故調 調書HP公開へ」(2014/6/28)

●ヒアリング記録質問主意書
質問主意書
答弁書

●吉田調書質問主意書
質問主意書
答弁書

両質問主意書に共通した問題意識は下記の通りです。

・政府事故調の設置目的が、「福島第一原発事故の原因究明と再発防止」である以上、その目的に合致する作業は事故調解散後も積極的に進めるべき。政府事故調自身が、時間がなくて「いまだに解明できていない点も存在する」といっているではないか。

・そもそも、「世界一安全」と喧伝されていた日本の原発がこのような事故を起こしたことに対し、世界の関心は高い。そしていまも汚染を続けていることに対し、日本は十分な責任を果たしているとはいえない。事故の真相に迫る被災者、日本国民はもちろん、全世界の歴史的知見であり、秘匿されていいものではない。

・もしもプライバシーの問題があるのであれば、当該箇所を除いて公開すべきだし、国会議員や公務員(経産省の官僚など)の記録は、本人の意思確認の必要すらないのでないか。広い意味では、あれだけ税金が入って事実上国有化されている東電関係者の記録についても、プライバシーに一定の配慮はした上で公開されるべきと考える。

・そもそも国民の税金で行った調査の報告書は、公文書ではないのか。それなら、それに従った運用がなされるべきではないのか。

・問題の吉田所長のヒアリングについては、当初政府事故調は「その記録が公になる可能性がある」と告げ、所長も了解している。第一、所長が懸念しているのは、「他人に対する私の評価」を「率直に述べた部分があり」「誤解を生んでしまう」こと、「記憶の薄れ」「記憶の混同」による事実誤認の危険があることである。

こうした懸念は正当なものなので、それらがないような形式をとった上で、「現場対応の責任者」吉田所長のヒアリング記録は公開され、検証を受けることこそ、事故の再発防止を願う故人の遺志を真に尊重するものと考える。

以下、主要な答弁を記します。

・政府事故調によるヒアリング記録は「公文書管理法」に規定する公文書に該当する。秘密指定はなされておらず、情報公開法に基づく開示請求の対象となる。

・本人からの同意が得られたものについては、個人の権利利益を害するおそれがある情報、国の安全を害するおそれがある情報等を除き、公開しても特段の問題はない。

・ヒアリングを受けた人数の内訳は、「関係者ヒアリングの結果を原則として公開しないこととしているため、お答えすることは差し控えたい」。

・吉田所長は「福島第一原発事故の現場対応の責任者」である。

・吉田調書については、「記憶の混同等による事実誤認が含まれる可能性があるため、内容のすべてがあたかも事実であったとの誤解を招くこと等が危惧され、第三者に向けて公表されることは望まない旨の意思が明確に示されていたこと等から、当該ヒアリング結果は公開しない」。

ヒアリング記録を情報公開の対象と明確に答えさせたことや、取扱いについて政府の方針を決めさせたという点では、今回の質問主意書に一定の意味があったと考えます。

しかしこの答弁書でさらに重要なのは、答弁で答えられていない点です。

・国会議員や公務員のヒアリング記録については、本人の意思確認など不要なのではないか、という問いは無視されている。

・「関係者ヒアリングの結果を原則として公開しない」ことと、「国会議員、官僚、東電社員」などの人数的「内訳」を公開することが、何の関連性があるのかわからない。

両方の根拠となっている答弁書の「四及び五について」では、二つの文書が根拠となっています。

ヒアリングの方法等について(文書1)

東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)への資料提出について(文書2)

文書2は、吉田調書の取り扱いについて触れたものです。重要なのは、文書1です。

これによれば、「2.ヒアリングの方法について」は「原則として、非公開」とあります。

しかし肝心の「5.ヒアリング結果の使用等について」では、「非公開を前提に調査に協力した個人については(略)各個人が特定されないような記載の仕方について配慮する」「非公開で行ったヒアリングによる聴取書については、必要な範囲で開示する」

「が、供述書の特定につながる部分及び供述者が非開示を希望している部分については開示しない」とあります。

これを見る限りでは、「方法」は「原則非公開」、でも「結果」は「原則公開」と読めるのです。ただ、配慮しろ、ということ。

さて、供述者の非開示希望については、本人が望めばすべて「非開示」になるのでしょうか。

実は、政府が答弁書でふれなかった文書があります、文書1と同時に出された文書です。

「2011.07.08 第2回東電福島原発事故調査・検証委員会の開催結果について」

非公表とする必要のある資料・情報の取扱い等について(文書3)

文書3には、

「当委員会が資料・情報の提供を受けるに際し,相手方から資料・情報を非公表とするよう求められた場合は,公表することにより関係者(提供者以外の者を含む。以下同じ。)の権利・利益又は公共の利益を害するおそれがあるなど非公表とすべき具体的な理由を確認し,当委員会が合理的な理由があると認める場合は,非公表の取扱いとする。」

とあります。

そればかりか、

「当委員会による資料・情報の提供要請に対し,非公表とすべき合理的な理由がないと認められるにも関わらず,相手方が非公表の取扱いに固執して資料・情報の提供に応じない場合は,相手方の対応について公表するなどの適切な措置をとる。」

とさえあるのです。

結果を非開示にするには「合理的な理由」が必要です。政府事故調の設置目的や、「税金で行っている調査」という立ち位置を考えたときには、当たり前といえる原則がきちっと明文化されていました(まさか、「ヒアリングして得られた内容だけは、『調査。検証の過程で入手した資料・情報』には含まれません」と言い逃れするつもりはないと思いますが)。

「内訳」が公開されない理由は、もっと理由になっていません。

根拠となった文書1には「各個人が特定されないような記載の仕方について配慮する」とあるだけです。ヒアリングを受けた約770名のうち「東電関係者が○名」と書いたところで、どうやって個人を特定するというのでしょうか。そもそも、特定されてまずいのは内容との関連でしょう。「内訳」情報が、「関係者の権利・利益又は公共の利益を害する」というなら、どんな「関係者」の、どんな「権利・利益」または「公共の利益」を害するのか、明らかにされたい。

「内訳」を非公開とする理由は、今後本人の意思確認が進んで、「国会議員は、●人中▲人がOK」「経産は・・・」「東電は・・・」という数字が並ぶことを恐れているからでしょうか。だとすれば、今回の記録公開はいったい誰のために行うというのでしょうか。

私が「意思確認」を重んじることに疑問を抱くのは、

・事故の関係者の「不利益」になる内容を含むのが当たり前のこのヒアリングが
・事故の関係者に対して行われている以上
・関係者の意思を尊重すれば、関係者本人(や関係者の所属する組織)にとって都合の悪い真実は隠されてしまう

という懸念があるからです。だからこそ、当初の政府事故調でも、「結果は原則公開」と読める方針を立てていたのです。

責任追及ではなく、「福島第一原発事故の原因究明と再発防止」のために。

関係者や原子力ムラの利益のためではなく、故郷を失った被災者の方々をはじめとする国民の未来のために。

ヒアリング記録の公開に向け、この問題にとりくんでいきます。

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