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続・リビアで今、起こっていること 〜アーデル・スレイマンさんインタビュー

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◆リビアにはためく三色旗


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革命前、カダフィが住んでいたとされる住宅。壁は落書きで埋めつくされている。

――そして、9月にはアーデルさんもリビアへ向かうんですね。

震災でいったんは頓挫していた支援活動ですが、ともかく組織化して動き始めようということで、6月にLSAJ(Libyan Student Association in Japan/在日リビア人留学生の会)という団体を立ち上げたんです。

そして、日本国内のモスクなどで募金を集めて、それをチュニジアでリビアへの医療支援や食糧支援活動をしているNGOに贈る、といった活動を始めました。

それで9月になって、暫定政権の樹立といった話も聞こえはじめたので、そろそろもう一度、本格的に日本からの支援を考えてもいい時期なんじゃないかという話になったんです。

そこで具体的な支援内容について話し合っていたときに、「闘いで手足を失った人への義手・義足支援」という案が出てきた。

手や足を失うというのは、命に関わるわけではないことが多いだけにあまり注目されていないけれど、精神的、経済的な負担は非常に大きい。LSAJのメンバーには医師が多いこともあって、そうした人を1人でも助けられれば、と考えたんですね。

とはいっても、誰にどんな支援をするのか、自分たちに何ができるのかもわからない。ひとまず現地を見に行ってみようということで、僕を含めLSAJのメンバー3人で、リビア入りすることになったんです。

あと、日本ではリビアについての報道もかなり少なくなっていたし、自分たちが見たこと、聞いたことを写真や映像に記録して、たくさんの人に伝える機会をつくりたいという思いもありました。

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戦闘に巻き込まれて左足を失い、チュニスの病院に入院中の15歳の少女。「在日リビア人留学生の会」では、彼女への義足支援にまず取りかかるという。

――現地にはどのくらいの期間いたんですか?

隣のチュニジアを含めて1週間ほどですね。実は、リビアで義手義足を必要としている人を探そうと思って、現地の病院にも問い合わせてみたんですが、まだちょっと混乱状態で状況が把握しきれていないようだった。

それで、インターネットを通じて知り合ったあるリビア人ビジネスマンが、チュニジアで難民の医療支援などをしているというので、まず彼を訪ねることにしたんです。彼と一緒に首都のチュニスの病院を回って、翌日、そこから国境を越えてリビアに入りました。

そのとき、リビア側にはためいている三色旗を見て、初めてリビアの「変化」を実感しましたね。警備してる人たちも「どこから来たの?」「おかえりー」みたいな感じで、すごくフレンドリー。革命前だったら絶対にあり得なかった。

――街の様子はどうでしたか。

とにかく「盛り上がっている」というのが印象でした。街じゅう、至る処に三色旗がはためいていて…「カダフィ出て行け」といった落書きもあちこちに残っている。

もちろん革命前に書かれたものなんですが、以前はそういうのも、書いたことがばれたら逮捕されたり、もしかしたら殺されるかも、というのが当たり前だったんですよね。

トリポリに入った翌日が金曜日で、イスラム教の礼拝の日だったので、殉教者広場での礼拝にも行きました。革命前は「緑の広場」と呼ばれていた場所で、周りに繁華街や博物館があって、僕はよく「日本の渋谷みたいなところだよ」と説明するんですが(笑)、そこにすごい数の人が集まってきていました。

通常は礼拝はモスクの中でやるんですが、殉教者広場は革命の象徴的な場所でもあるし、まだ解放されていないトリポリ以外の都市への祈りも込めて、そこで礼拝をということになったようです。

驚いたのは、広場のあちこちに掲げられていたカダフィの写真が一枚もなくなっていたこと。正確に言うと、地面に「踏み絵」みたいにして置かれているのが1枚だけありましたけど。あとは全部、国旗とか看板に替わってましたね。面白かったのは、「祝砲をやめましょう」っていう看板。

――やめましょう?

トリポリ解放後、あちこちで祝砲が撃たれて、その撃った弾が落ちてきてけが人が出たり、車のボンネットにぶつかったりという事故があったらしいんですよ。それで「もう十分やったからいいでしょう、もうやめよう」ということみたいです(笑)。

そのくらい、お祭りのような騒ぎなんです。その日の夜も、「みんなで集まってお祝いしよう」という呼びかけのビラが配られて、何万人という人が街に出てきて、あちこちでライブやイベントが行われていましたね。

――写真を見ても、すごい人の波ですよね。ちなみに、目的の一つだった、義手義足支援については目処がついたんですか?

チュニスの病院で、左足を膝上から失ったある1人の女の子と出会ったんです。彼女は15歳で、戦闘には参加していないんだけど、家族と一緒に逃げる途中で政府軍に包囲されて、撃たれた。完全に民間人としての被害だし、両親の経済状況も苦しいということで、まずは彼女への支援を行おうということになりました。

ただ、リビアやチュニジアでは義足をつくる技術もないし、リハビリの設備も十分じゃない。日本に来てもらうことも考えたけどあまりに遠いし、文化的な違いが大きすぎて家族の負担も大きいだろうということで、ドイツでの受け入れ先を探しています。

ドイツなら技術力も高いし、アラブ人コミュニティも大きいのでサポートもしやすい。現地の支援団体にお金を渡してすべて任せるという形にするのか、こちらで病院やリハビリ施設を探すのか、一番いい支援のやり方を今、探っているところです。

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