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刑事手続きの「物語」が変わる?『司法取引』導入に向けた議論が本格化。

アビタス米国弁護士コース担当の坂本です。

日本でも、いわゆる『司法取引』導入が具体的な検討課題となるようです。

6月23日開催の「法制審議会-新時代の刑事司法制度特別部会」で、新たな捜査手法として、その導入の是非が議論されたと報じられました。

なお、報道などで語られる『司法取引』は、「答弁取引」と「刑事免責」の二つを混同している場合があります。

(これら二つの違いについては、以下まとめています)
http://xn--vcsu8bszjpl8ahyp.net/learning/qualification_lawyer/column/vol17.php

29日19時時点ではまだ試案が公表されていませんが、過去の資料(後掲参考参照)を見る限り、現在焦点が当たっているのは、「刑事免責」の方だと考えられます。

すなわち、被疑者が共犯者の犯罪を供述した場合、検察官が起訴を見送ったり、求刑を軽くしたりすることを可能にするとされており、対象としては、経済事件や組織犯罪などを想定している模様です。

類似の制度としては、独占禁止法上のいわゆるリニエンシー(課徴金減免)制度があります。現行制度においても、検察官の訴追裁量の運用などで、事実上、刑事免責のような機能を果たしてきた例もあるようです。(刑訴法248条参照)

刑事免責については、主に、免責付与の結果得られた証言の信用性をいかに確保するかが、懸念されています。

もちろん、そのような懸念への対策は、海外での運用事例を参考に方策を立てるべきです。ただ、現行でも類似の運用が可能であり、訴追裁量の不透明さを払拭するには、刑事免責を制度化したほうが合理的だと考えます。

さて、刑事免責などが議論される背景には、日本の刑事手続きの考え方が、大きく変化しつつある事情があるのかもしれません。

取調べと自白に重点を置いた従来の刑事手続きが、多くの批判を浴びてもなお支持されてきた背景には、取調べを通じ「被疑者が真摯に罪と向き合った結果自白に至る」という、一つの物語があったと思います。

そのためには、取調べは密室で行われるべきでしょうし、自白を取引の対象とするのは、言語道断という結論になるでしょう。

しかし現在この「物語」が大きく揺らいでいます。

まず、冤罪事件の度重なる発覚により、取調べは正しさが疑われています。また、微妙なニュアンスでの言葉が通じない外国人犯罪者や、犯罪組織に自己のアイデンティティを託す組織犯罪の被疑者には、かつての取調べが機能することは稀でしょう。

従来の刑事手続きは、このように、ミスマッチによる制度疲労を起こしていると考えるべきなのではないでしょうか。

法制審議会の部会では、「刑事免責」に加え取調べの可視化など、実に多くの論点が議論されてます。個々の議論を追うことに加え、刑事手続きの「物語」を新しくすべきという潮流を、感じるべきなのかもしれません。

≪参考:法制審議会-新時代の刑事司法制度特別部会≫

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi03500012.html

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