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「空き家」を地域コミュニティの交差点に (「太陽のまちから」2014年6月17日)

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コミュニティの拠点「シェア奥沢」となった築80年の日本家屋(提供:シェア奥沢)

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「空き家」活用をめぐり、活発な意見がかわされた(提供:シェア奥沢)

 住宅街の中でも、ひときわ緑の深い古い民家の玄関には靴がびっしり並んでいました。中に入ると、コワーキングの場となる事務的スペースと広めのキッチン、そして二間続きと縁側付きのオープンスペースがあります。ここで、コンサートあり、映画会あり、寄席あり、勉強会ありと、地域私設公民館として多彩な活動が始まっています。

 「空き家活用」をテーマとした空き家再生の地域コミュニティ・スペース「シェア奥沢」はもともと、多摩美術大学教授、堀内正弘さんの自宅の別棟でした。この築80年の日本家屋を改装して、私設公民館・地域コミュニティ・スペースにつくりかえ、2013年の「世田谷らしい空き家等地域貢献活用モデル事業」の一つとして助成も受けています。

 「ここは長い間、ごみがうずたかく積まれているごみ屋敷でした。私も入ることができずに放置していました。ところが、『この空間を片付けて使いたい』という人たちが現れたんです」(堀内さん)

 日曜日の夕刻、集まったのは「空き家活用」を手がけたり、関心を持ったりしている人たちです。堀内さんがSNSで呼びかけたところ、2日間で満員となってしまったそうです。

 私が「空き家活用」に着目したのは3年前。震災・津波の被災者・原発事故の避難者をひとりでも多く受け入れたいと試行錯誤していた時に、「私の家の離れを使ってもらえないでしょうか」と、区民からの申し出を受けたのがきっかけでした。

 貸家や貸部屋を被災者・避難者に安く提供する「居ながらボランティア」を呼びかけたところ、100件を超える反響がありました。この時、不動産物件を持っている人たちの中にも、公共的公益的な用途に役立てたいと思っている人が少なくないことを知りました。

 世田谷区は以前から「空き家活用」の先進事例を育んできました。空き部屋・空き家を活用した「地域共生のいえ」は15カ所を数え、近年も続々とオープンしています。また、高齢者のサークル活動などが行われている「ふれあいの家」は一軒家を活用したものだけで12カ所あります。

 2年ほど前、「地域コミュニティの交差点として、空き家活用をはかりたい」と発信したところ、反響が広がりました。「オーナーと借り手との間のマッチング窓口」を開設し、「活用モデル事業」を呼びかけました。フォーラムやシンポジウムも重ね、区内のあちこちで、「空き家活用」を広げたり準備したりする動きが始まっています。

 さて、「シェア奥沢」では小さなグループに分かれて、ワイワイガヤガヤ話し合いが続きました。後半、その内容をシェアする時間に行われた報告はユニークでした。

「農地保存と空き家活用をセットで追求していきたい。コミュニティ・スペースを拠点にして、子どもから高齢者までが使われていない畑で農体験できるようにしたい」

「コミュニティの中で多世代が交流する場として活用したい。そこでは『食』を共通項にして、『おたがいさま食堂』をつくって楽しい時間を過ごす。子育て世代だけでなく、幅広い年代の人が集まるといい」

「コミュニティビジネスを展開しているが、ボランティアだけでは長続きしない。継続するためにはお金も必要で、地域や行政に協力してもらうだけでなく、企業にも参加してもらいたい」

「空き家にならないまでも、空き室は増えている。昔6人で住んでいた家に今は1人か2人というのは珍しくない。昔の下宿のような感覚で、持ち主の高齢者は1階に、地方から上京している学生たちは2階に住んで、高齢者の見守りや手伝いをしながら、家賃はうんと安くしてもらうという住まい方はできないだろうか」

「話をしているだけでは面白くないので、明日から『空き家活用をやろう』という話になりました。地域福祉の小規模施設をつくりたい方がいて、せっかくだから応援することにしました。こうして、違う世界の人が出会って協力しあうことで、具体的な場を開いていくことが重要です」

 イギリスでは、「空き家解消」のための厳格な制度がつくられています。獨協大学教授の倉橋透さんによると、2年を超える空き家について、正当な理由がない場合、日本の固定資産税にあたる税金を150%引き上げるだけでなく、自治体が空き家の利用権を取り上げてカギを取り換え、第三者に提供できる、という制度(EDMOs=空き家管理命令)がつくられているそうです。2013年からで、まだ実施例は少ないとのことですが、イギリスの自治体の持つ強い権限を物語っています。

 全国で756万戸(2010年、総務省「住宅・土地統計調査」)の「空き家」を抱えている日本も、対策が急がれます。

 世田谷区はこれから2年半かけて、27カ所ある地域行政拠点(出張所・まちづくりセンター)に、「身近な福祉の相談の窓口」をつくっていきますが、その周辺に空き家活用型のコミュニティ・カフェや住民による地域福祉事業所が生まれれば、福祉のネットワークはよりきめ細かくなります。そんな希望はあながち夢ではない、と感じた一晩でした。

「空き家活用」を地域コミュニティの交差点に (「太陽のまちから」2014年6月17日)

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