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私なら新電力は選ばない

電気購入先、消費者の54%「乗り換え」検討 経産省調べ (日本経済新聞)

 電気の購入先を選べるようになると、消費者の54%が購入先の乗り換えを検討したいと考えていることが経済産業省のアンケート調査で分かった。購入先を選ぶときに重視するのは49%が「料金の安さ」と回答。下げ幅が5%以下でも、およそ半数の人が乗り換えを検討するという。

 今月成立した改正電気事業法で2016年に家庭向けの電力小売りが自由化される。経産省は4月上旬にインターネットを通じて1500人から回答を得た。全体の63%が小売りの自由化を「進めるべきだ」と回答。自由化に期待する項目としては回答者の79%が「電気料金の抑制」を挙げた。

 自由化後の電気の購入先の変更については「検討したい」と「やや検討したい」が合計で54%。変更に1週間かかると、47%が乗り換えをやめると回答した。契約手続きの簡略化が競争促進にとって重要との結果が浮かび上がった。

 16年以降は異業種の企業が多様な料金メニューを用意する見通し。回答者が最も興味を持っているのは「長期契約による割引」(63%)で、「時間帯によって料金が異なるメニュー」(55%)がつづいた。ガスや水道、通信とのセット割引には半数超が「興味がある」と回答した。

 経産省によるアンケート結果が発表されたそうですが、回答者は1500人と言うことで省庁がやるにしては寂しい数値のような気もしますね。曰く「インターネットを通じて~」とのこと、ここに集った1500人が平均的な人々なのか、それとも何らかの面で目立った関心を持った人々であるのか、その辺もまた問われるように思いますけれど、新聞社はその辺までは気にしないものなのでしょう。

 ともあれ回答上は消費者の54%が乗り換えを検討するということになっているわけです。ただし変更に時間がかかるならば47%が乗り換えをやめると回答したそうで、料金が安くなるなら検討しないでもないけれど、そのために面倒な手続きを踏まされるのなら別に良いかな、ぐらいなのでしょうか。この辺は電話回線――例えばNTTからKDDI乗り換えてみる――みたいな感覚が近いのかも知れません。

 1500人なんてネット上で呼びかければ簡単に埋まってしまう数値です。反原発・反東京電力・反福島な方々が賛同者を募って一斉にアンケートに回答すれば、結果は違ったのかも知れません。その場合はもっと強行に、何が何でも既存電力会社から乗り換えるという意思が示されたことでしょう。しかし今回の集計結果から見えてくるのは、引用元の見出しから受ける印象よりは随分と「緩い」意向が多いようです。

 なお購入先を選ぶときに重視するのは49%が「料金の安さ」で、回答者が最も興味を持っているのは「長期契約による割引」(63%)、「時間帯によって料金が異なるメニュー」(55%)とのこと。「長期契約による割引」には一般論として中途解約による違約金なども設定されるものですが、この辺は理解されているでしょうか。東京都が東京電力との間で結ばれた契約を一方的に破棄しようとして、当然ながら違約金の支払いを求められたこともありました。この場合は例によって東京電力側が悪玉視されたところですけれど、商行為として正当な請求はあるわけです。

 そして「時間帯によって料金が異なるメニュー」が挙げられています。まぁ今でも、時間帯によって電気料金が割安に設定されているプランは利用できますよね。電力需要のピーク時間帯と、需要の少ない深夜とでは料金が異なるもので、その辺を積極的に活用していきたいと考える回答者が多かったようです。しかし、時間帯によって料金が異なる中で、わざわざ電気代の高い時間帯を選ぶ人がいるでしょうか?

 事業者にとって好都合なのは電気代が安くなる時間帯、すなわち深夜です。時間帯別の料金設定がエスカレートするほど、事業者は深夜に操業した方がコストを削減できることになる、引いては日本社会に深夜労働を拡大させることにも繋がりかねません。3年ばかり前には震災と菅内閣の暴走によって日本全国に電力不足が広がる中、節電に協力すると称して平日日中の操業を土日や深夜にシフトさせるような動きも少なからぬ事業者に見られたものですけれど……

 なおアンケートでは専ら料金面ばかりが気にされている辺り、実際のところはどうなのかと首を傾げないでもありません。もうちょっと、供給の安定性とかは考慮されなかったのでしょうか。ほんの一瞬の供給の乱れで、製造中の精密機器は一瞬にして産業廃棄物の山に変わってしまいます。安いけれど安定性に疑問の残る電力会社と契約して、その不安定性を補うために自前の発電設備を増強する――みたいなことになったら完全に本末転倒です。

参考、自由が与えられていない電力会社もあるのですが

 トラブルなどで新電力の安定供給が難しくなった場合は、東電からの融通などがあり、送電が止まる恐れはない――東京都が電力調達先を東京電力から新電力へと切り替えた際には、そう伝えられました。新電力からの安定供給に問題が出た場合、結局は東京電力がケツを持つことになっているようです。いやはや、東京電力に同情するばかりです。本当に「自由化」というのならば、もうちょっと東京電力にも自由が与えられても良さそうなもの、しかし自由化とは真逆の制約ばかりが課されるばかりなのですから。

 まぁ、ある意味で日本社会は独特の電力会社への信頼感があるのかも知れませんね。原発を強行停止させて電力会社の事業を妨害しても、それでも電力会社は必要な電力の供給を続けてくれるであろうと、そういう責任の丸投げが続けられたのが悪夢の菅内閣時代でした。電力会社を信頼していなければ、とてもできないことです。能力のない電力会社であれば、行政による妨害が即座に停電の頻発を招き、国内産業をショートさせてしまうことになります。それでも日本の電力会社なら何とかするだろうという目論見があったのでしょう。今回の新電力への切り替えにしても然り、新電力が危ないことになってもそのときは東京電力など既存の電力会社な何とかしてくれるであろうと、そういう甘えがあるのだと思います。

おまけ

 なお新電力に関しては色々とトラブルも多いと言いますか、悪質な事業者も目立つようです。

新電力:新規参入で実態不明の業者多く トラブルも(毎日新聞)

 東京電力福島第1原発事故後、電力会社に一定価格での買い取りを義務づける固定価格買い取り制度(FIT)の導入もあり、再生可能エネルギー市場が注目された。新規参入が相次ぐ中で、G社のケースのように太陽光発電事業などを巡るトラブルが目立ってきており、適正化に向けた対策が求められる。

 国連環境計画などの報告書によると、国内の昨年の再生可能エネルギーへの投資額は約3兆円で前年比80%の伸び。経済産業省によると、新電力会社の届け出は原発事故前の約45社から現在は250社を超えている。

 だが、届け出は書類審査のみ。事業内容などは詳しく調査されず、実態が不明な業者が多い。民間信用調査会社「帝国データバンク」の4月の調査では、新電力206社のうち事業実態が判明しない「未詳」に分類された業者は72社(35%)に上った。

 新電力会社を宣伝文句に使う業者もおり、ある新電力の代理店業者は「見せかけのために届け出だけしておく業者が多い」と指摘する。G社も新電力会社本来の電力供給事業は行っていなかった。

 太陽光発電事業を巡っては、投資を集めた長野県のファンド販売会社が今年5月、ずさんな資金管理を理由に金融庁から業務改善命令を受けるなどトラブルが絶えない。FITに関しても、固定価格が高いうちに発電計画だけ国に提出する業者が相次ぎ、経産省が2月、計画認定の取り消しに乗り出した。

 電気事業法の改正案が今月、国会で可決され、大口顧客のみに可能だった新電力による電力供給は16年をめどに一般家庭も含め全面自由化される。経済産業省の担当者は「これまでは門戸を広げるため、書類の不備がなければ、新電力の届け出を受理していた。全面自由化に合わせ、審査を厳格化し、実績のない業者を洗い流したい」と話している。【前谷宏】

 そして原発批判の文脈の中で、「利権が、利権が」と連呼して喝采を浴びた愚かな議員もいたものですが、原発であろうと太陽光発電であろうと、金が動く以上は何であっても利権は生まれますし、裏で金が動くことだってあり得るのです。

太陽光認定で経産省職員に10万円 新冠の牧場主 贈賄申し込み容疑で逮捕(北海道新聞)

 【新冠】再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」の運用見直しに絡み、太陽光発電の設備認定が取り消しにならないよう経済産業省職員に現金を渡そうとしたとして、道警捜査2課と苫小牧署などは2日、贈賄申し込みの疑いで、日高管内新冠町万世、軽種馬生産牧場「ベルモントファーム」会長、川上晋容疑者(69)を逮捕した。

 川上容疑者は、太陽光発電を計画する東京都内の事業者に所有地の売却を予定。同省は事業が進まないことから、この事業者の認定失効を検討しており、道警は川上容疑者が失効を免れるよう便宜を図ってもらう目的があったとみている。

再生エネ固定価格買い取り、3月は7割増 太陽光発電の駆け込みで(北海道新聞)

 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、認定を受けた太陽光発電設備の出力容量が3月に急増し、前月末までの累計から約7割増えたことが20日、分かった。実際の買い取りでは、設備認定時の価格が適用される。4月に買い取り価格が引き下げられたため、その前に認定を受けようとする駆け込み申請が集中した形だ。

 4月申請分から導入された認定取り消しの新ルール逃れの思惑もあったとみられ、事業者の意識が問われている。

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