記事

脱法ドラッグ対策はどこまで進んだか

池袋駅前で発生した事故の衝撃が広がっています。このところ、脱法ドラッグ対策が次々に投入され、一定の成果を挙げていると思われた矢先に、このような事件が起きてしまったことから、苛立ちを感じておられる方も多いことでしょう。

●問題点の整理

まず、いまの問題を整理しておきましょう。
リンク先を見る

■脱法ドラッグ=未規制薬物
私がここで「脱法ドラッグ」と呼ぶのは、法規制をかいくぐって販売されている薬物のことで、現行の薬物規制法令による規制が及ばない未規制薬物が「合法」と称して販売されています。
これまで、厚労省は、市場に流通している未規制薬物をできるだけ迅速に規制下におくよう、様々な対策を進め、現在では、「指定薬物」として規制されている物質は、約1300種に及んでいます。
ところが、ある物質を規制すると、それと類似の化学構造をもつ新種の物質が登場してしまうというイタチごっこは、いまだに続いています。その背景にあるのは、ほとんど無限にある類似物質の存在で、規制薬物とそっくりな化学構造を持つ別種の薬物が、いくらでも供給されてしまうという現実です。

■規制対象になった薬物に対する取締まりは進展している
「指定薬物」に関しては、従来は販売業者に対する取締まりが中心になっていましたが、今年4月から施行された改正法によって使用や所持、購入なども禁止され、乱用行為も取り締まりの対象になりました。
近年、脱法ドラッグ問題の拡大に対応して、販売業者や製造業者に対する指導・取締まり体制の強化・拡充も進み、現在では、都道府県の薬務課、厚労省の麻薬取締官に加えて警察による監視・指導・取締まりが行われ、一定の成果がみられるようになりました。

■交通事件などで問題になるのは、ほとんど未規制薬物
それでも、依然として「合法」と称して販売されている脱法ドラッグは後を絶たず、迅速化した規制導入に対応して素早く成分を切り替えながら、相変わらず未規制薬物が供給されています。そして、こうした製品を買い求めた使用者が、その強力な作用下で思いがけない事件や事故を起こし、他人に被害を及ぼしているのです。
こうした事件や事故の原因となった製品の多くは、ごく最近、販売店から購入された製品で、その成分は基本的に、法規制の対象になっていない未規制薬物です。
さて、ここで新たな問題が浮かび上がってきます。切り替えペースの速い脱法ドラッグ市場で、現在流通している薬物成分を正確に把握する体制が、まだ整っているとは言えず、脱法ドラッグの作用下で重大事件が発生した場合に、その原因となった薬物を特定するのにかなりの時間がかかるのです。
事件発生現場では、捜査員が即座に原因薬物を判定できず、手探りでの捜査が続きます。また、現場で押収したドラッグ製品等を鑑定して薬物を特定することになりますが、その鑑定に、1か月から場合によっては数か月を要しています。さらに、当事者の血液や尿を採取して薬物の影響を確かめるのですが、この鑑定作業にも同じように時間がかかっています。

●対策は進んでいるのか

脱法ドラッグ関連事件への対応には、数えきれないほどの困難が待ち構えています。とくに、現時点での流通品(未規制薬物)の状況は常に変化していて、なかなか把握しきれないところもあります。
近年の対策によって、一定の成果は上がっているものの、まだまだ大きな課題が残されています。
重点分野別に、これまでの対策の流れとその成果、そして今後の課題をまとめておきましょう。


■販売店対策
脱法ドラッグ問題が浮上し始めた2011年下期から2012年上期ころ、対策の立ち遅れから販売店の急増を許してしまった経緯があります。その後、販売店に対する立ち入り検査や巡回指導が頻繁に行われ、また違法販売の取締まりが強化されるなどした結果、2012年上期ころをピークに販売店は減少に向かいました。
しかし、一部では、店舗を閉鎖した業者がインターネット販売やデリバリー販売に転向していることなどが指摘されています。
流動している販売店の変化を把握し、さらなる対応をしていかなくてはなりません。

■消費者対策
多少の広報が行われていますが、この分野が最も立ち遅れているようです。
そのなかで、各府県によって脱法ドラッグ販売等を規制する条例が制定されてきたことは、地域社会での世論形成に大きく寄与したと思います。
また、薬事法の改正によって指定薬物の乱用行為も取締まりの対象になりましたが、この制度に対応した広報活動が、必ずしも十分に行われていないことは残念です。
それでも、社会の関心が高まるにつれ、使用者増加にある程度の歯止めがかかったようです。愛知県の脱法ハーブ関連の救急搬送者集計によると、最近では、搬送者の数が減少し、とくに若年者が減少しています。
今後は、健康問題や生活問題が顕在化している人たちを中心に、脱法ハーブ使用者への教育指導や医療ケアなどの個別対策が求められることになります。また、使用者予備軍になりうる若者に的をしぼった情報提供、とくに危険情報の提供なども検討課題となるでしょう。

■薬物規制
前述したように、2012年ころから矢継ぎ早の対策が投入され、現在では、わが国は、先進国の中でもいち早く未規制薬物に対して法規制を導入することができています。
立ち遅れているのは、薬物鑑別技術の開発で、前述したように薬物の鑑定に時間がかかることが、様々な分野での法執行の勢いをそいでしまいがちです。
また、これまでほとんど解明されていない輸入・製造の実態を把握し、規制に応じた指導・取締まりをしていくことも、今後の課題としてあげておきます。

●一発解決は望みえない、衆議をつくして一歩ずつ進展を

脱法ドラッグ問題は、いま先進諸国をひろく悩ませています。各国は様々な対策を試み、試行錯誤を繰り返していますが、事態は、一進一退といったところでしょうか。
一発で問題がスッキリ片付く解決法は、おそらく望みえないでしょう。
だったら、衆議をつくし、何でもトライして、一歩ずつ前へ行くしかないでしょう。今こそ、オープンな議論をしていくときです。

あわせて読みたい

「危険ドラッグ」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。