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反原発デモへの過剰な警備を批判しつつ、その背景は冷静に分析したい - どん・わんたろう

 無責任に傍観者の立場で書けば「警察の作戦勝ち」ということなのだろう。9月11日、東京・新宿での反原発デモ&集会。12人もが逮捕され、「反原発デモは怖い」とのレッテルを一般市民に流布されてしまった。

 確かに私が見た限りで言えば、アルタ前広場での集会に対する規制は異常だった。

 会場の広場に立ち入らせないように、地下街から上がる2か所の階段の下に制服警官4、5人を配置して「一方通行です。迂回してください」と通せんぼする。広場に通じる2か所のスクランブル交差点では、青信号に変わるたびにそれぞれ十数人の警官が規制線を張り、盛んに笛を吹いて流入を制限していた。目の前の新宿通りには警察のバスが目隠しのように並んでいて、向いのアルタの下からでも登壇者の姿は見えず、マイクの音量も抑えられていたようで演説はよく聞き取れなかった。ちなみに、まわりには私服の公安警官がうじゃうじゃ。

 「島」に閉じ込めて、外部との人や情報の行き来を封鎖するのが警察の狙いだった。残念ながら、集会の訴えは遮断され、日曜夜の繁華街を行き交う若者たちには伝わっていなかった。通行人から「右翼の街頭宣伝?」なんて話し声が聞こえてきたりした。

 主催者によると、デモのコースも、直前になって警察の指示で急きょ変えられた。このため、当日、どこでデモに加われるのかわからず、右往左往していた人も多かったようだ。これも嫌がらせだろう。デモ参加者によると、警官の圧力は前回までに比べると相当強くなり、コンビニに寄ったりするために隊列を離れるだけでも執拗な脅しを受け、戻るのも一苦労だったらしい。

 テーマが「反原発」であるか否かにかかわらず、デモや集会という憲法で認められた権利を侵すような規制には強く異を唱えたい。

 ただ、なぜ今回、警察の介入が急に激しくなったのか、背景を冷静に分析しておく必要はある。反原発派には「権力側がデモの影響力を恐れているから」と捉える向きもあるようだが、違うと思う。私の取材経験から言えば、警察って世論の動向にとても敏感である。そして、強い者には弱く、弱い者には強く出る傾向にある。警備強化は、それらを反映した動きに他なるまい。

 要因の一つは、野田政権の発足だ。「脱原発」を明確に打ち出した菅政権とは異なり、原発に対する基本的なスタンスは「容認」だから、警察も反原発派に対する規制がやりやすくなったのだ。だって、菅さんの時は、首相と似たようなことをデモでアピールしている人たちを、そう容易く弾圧するわけにはいかないでしょ。

 それから、世論の変化である。たとえば朝日新聞の世論調査でさえ、停止中の原発について、安全性の確認と地元の理解が得られれば再稼働を認める野田首相の姿勢を「評価する」が53%を占め、「評価しない」の33%を大きく上回っている(9月10日付朝刊)。「すべての原発をただちに廃炉にせよ」というデモ参加者の主張は、今や決して世の多数を占めてはいない。そんな権力側の見極めと安心感が、強権的な対応の後ろにあるのだろう。

 潮目が変わっているのである。

 一方で、反原発派の意識はどうだろう。もちろん、デモや集会という表現形態を否定するつもりは毛頭ない。3.11後のデモが大きな影響力を持ち、現代民主主義の一境地を拓いたのは確かだ。萎縮する必要は全くない。

 ただ、デモや集会に参加する人たちに、自分たちの主張こそが正しいだとか、一般市民にわかってもらえるはずだとか、我田引水的な思い込みはないだろうか。現実問題として、いとうせいこう氏が「廃炉せよ」と格調高くアジっても、広場の周辺を行き交う人たちには届いていない。さらに、権力側のプロパガンダが奏功し、新聞社の世論調査を見ても一般市民の考えは原発を「時間をかけて徐々に減らす」に収斂されつつある。「脱原発」の主張の中身やアピールの方法を、考え直さなければいけない時期に来ている気がしてならない。

 前々回をはじめ当コラムでも何回か書いてきたが、脱原発の輪を広げるカギは「生活基盤の維持」にあるのだと思う。脱原発の行き着く先で、雇用やライフスタイルがどう変わり、そこから落ちこぼれても社会がきちんと守ってくれるのかが不透明なままでは、「すぐに原発なくしましょう」なんて言われても、簡単には同意できない。原発が危ないってことは十分に承知しているにせよ、「原発事故で死ぬより先に、仕事を失い生活を維持できずに死んでしまうのでは」と躊躇してしまう。「原発なくせ」に共感を得たいのなら、そうした不安を和らげる方策を一緒に提示することが不可欠だ。

 そのうえで、具体的に原発をどうしたいのか――すべての原発の即時停止・廃炉なのか、当面は老朽化したものや耐震性に疑問があるものだけを停止するのか。原発の再稼働にはすべて反対なのか、それとも条件付きで認めるのか。時間をかけて廃止していくのなら何年後になくすのか――といった点を、わかりやすい言葉で呼びかけていくべきだろう。生活を維持する枠組みの構築とセットにするためなら、「10年以内に原発を停めましょう」なんて訴えるのも一つの方法かもしれない。

 もう一つ。「生活」という点で共通するのだけれど、原発の地元への目配りも忘れてはいけない。最近発表された、来春の高校卒業予定者の求人倍率(7月末時点)がとても気になっている。引っかかったのは、青森県の「0.18倍」という数字。就職を希望する高校生100人が、条件に全くこだわらないとしても18人しか就職できないのだ。

 新聞記事を読むと、青森では求人数自体が前年同期より12%減ったらしい。もともと沖縄に次ぐ全国ワースト2ではあったが、「原発銀座」の下北半島があるだけに、今年は原発施設の稼働や建設が停まって関係企業が採用を控えているのも原因なのだろうか、と考えてしまった(「下北半島プロジェクト」とも絡めて考えていきたいテーマなので、情報やご意見をお寄せください)。

 就職先がなければ、若者たちは都会へ出ていくしかない。高齢化は進み、まちは寂れ、人々は疲弊していく。地元から「早く原発を動かしてくれ」「原発をなくさないでくれ」っていう声が沸き起こっても不思議はない。脱原発であろうが原発容認であろうが、交付金や補助金と引き換えに危険な原発を過疎地に押し付けては依存体質を強めさせ、代わりに安全に電気の恩恵を享受していた都会の民に、それを拒否する資格があるだろうか。

 原発の地元の生活をこれからどうするか。「脱原発」を唱えるのであればなおさら、都会の側から代案を示すべきだ。これも、脱原発派の大きな課題である。

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