- 2014年06月25日 12:05
袴田事件の再審開始決定を契機に日本の刑事司法改革を進めよう! - 西嶋勝彦
1/42014年5月24日@渋谷校
「けんぽう手習い塾」でおなじみの伊藤真さんが主宰する、資格試験学校の伊藤塾では、
法律家・行政官を目指す塾生向けの公開講演会を定期的に実施しています。
弁護士、裁判官、ジャーナリスト、NGO活動家など
さまざまな分野で活躍中の人を講師に招いて行われている
「明日の法律家講座」を、随時レポートしていきます。
なおこの講演会は、一般にも無料で公開されています。
西嶋 勝彦氏
(弁護士、お茶の水合同法律事務所所属、袴田事件弁護団長)
●講師プロフィールはじめに
福岡県生まれ。中央大学卒業。司法研修所修了(17期)。東京弁護士会登録。袴田事件弁護団長の他、日弁連刑事拘禁制度改革実現本部副本部長等の要職も務める。数々の冤罪、再審事件の弁護に関わる傍ら、日弁連拘禁二法案対策本部事務局長を1987年から足かけ18年間務める。著作に『世界に問われる日本の刑事司法』(共編著、現代人文社)、『死刑か無罪か――えん罪を考える」(共著、岩波ブックレット)等がある。
今年3月27日、静岡地方裁判所は袴田事件の第二次再審請求について、再審を開始する決定をしました。この決定は、新たな証拠を重視し、事件の犯行が袴田巌さん(78歳)に結びつかないとしたばかりでなく、捜査官側による証拠ねつ造の疑いも指摘。即日、袴田さんの釈放を命じました。袴田事件は、これからの刑事司法改革に必要なキーワードを、いくつも浮かび上がらせました。①全事件・全過程の取り調べ可視化、②取り調べへの弁護人の立会い、③代用監獄の廃止、④人質司法からの脱却、⑤全面的証拠開示、⑥検察官上訴の禁止、⑦証拠ねつ造、隠匿の責任者追及、⑧えん罪原因究明の第三者機関の設置、⑨死刑廃止への取り組み、⑩マスコミの問題です。裁判所を聖域にせず、袴田事件のようなえん罪を防ぐ方策について、西嶋弁護士が語りました。
日本の再審制度は二段階になっており、まず再審請求審で再審開始決定が出てから、再審公判(裁判のやり直し)を行います。今、袴田事件が当面しているのは、再審請求から公判への入り口です。
今回の再審開始決定は、袴田さんを拘置所から釈放することも認めました。これは画期的な判断です。通常は死刑の執行停止だけですが、身柄拘束も死刑執行と一体のものだと考えられました。検察官は、釈放を直ちに取り消すよう東京高裁に求めましたが、「特段、不合理なことはない」として棄却されました。そうして袴田さんは再審開始決定の確定に向けて、準備ができるようになったわけです。
袴田事件が再審決定までたどり着くことができた背景には、「DNA鑑定」と「味噌漬け実験」がポイントになっています。
2008年に最高裁で棄却された第一次再審請求でも、「5点の衣類」(シャツやステテコ、ブリーフなどの証拠品)のDNA鑑定を行いましたが、DNAを検出できずに終わりました。当時の鑑定技術が今ほど進んでいなかったからだと思います。今回の第二次再審では、DNA鑑定によって5点の衣類のシャツについていた血痕が袴田さんのものではないと判明し、新たな証拠として採用されました。
もう一つ、弁護人側が行った味噌漬け実験も、再審決定に大きく寄与しています。5点の衣類は、事件が起こった1年2カ月後に、現場の味噌工場にあった味噌タンクから発見されたものです。味噌の色が染みついた状態から、「長期間、漬け込まれたもの」と判断されていました。しかし、ほぼ同じ衣類を味噌に漬ける実験をした結果、わずか20分で、発見直後と同様の色合いになりました。念のために1年以上漬けた実験では、証拠品の生地の色も、それに付いていた血痕も見えなくなるほど濃い色に染まっていました。5点の衣類は、発見直前に何者かが味噌タンクに入れたもの、つまり捜査関係者がねつ造した疑いが強くなり、再審開始決定につながりました。



