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CM放映料を払わずに「世界でもっとも多く再生されたCM」ランキング1位となったECサイト「Lane Bryant」

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世論の支持を作り出す基盤となったコミュニティページ

Lane Bryantのサイトでは、この2年前にコミュニティページ「INSIDE CURVE」を開き、プラスサイズの女性のためのファッションやライフスタイルに関係する記事を定期的に投稿し、2010年の時点で、約3万人の熱心なファンを獲得していた。

2010年4月21日、このコミュニティページに「FOXとABCが視聴者に見せたがらなかったランジェリーのコマーシャル」というタイトルの377文字の記事が投稿される。

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この記事の主張はざっと次のようなものだ。

「Lane BryantはFOXの番組『American Idol』とABCの番組『Dancing with the Stars』のスポンサーとなり、この2つの局にCMの放映を依頼しました。

ところが、FOXはCMに大幅な編集を加えるよう要求してきたのです。当社がそれに応じず、スポンサーを降板すると脅した結果、FOXは番組の最後の10分の時間スロットで放映することをしぶしぶ認めました。ABCも番組の最後の時間スロット以外では、このCMは放映できないと伝えてきました。

視聴者に向かって何度もお尻を丸出しにしているアニメ『シンプソンズ』や、同じ町内の男性たちに次々と色仕掛けで迫るほどデスパレートな妻たちを描いたドラマをプライムタイムに放映しているテレビ局が、当社のCMを卑猥と言うとは驚きです。

当社のCMは、ランジェリーのCMで一般に起用されるスキニーなモデルたちよりも、世界に見せられるものをより豊かに備えた女性の官能美を表現したもので、セクシーですが、卑猥ではありません。

Victria's Secretには午後9時から午後10時のどの時間でもCMの放送を許可しているのに、Lane BryantのCMは番組の最後の10分でなければ放映できない正当な理由がどこにあるのでしょう?

YouTubeに問題のCMをアップしました。皆さん、ご自分の目でこのCMを見て、この件について、Lane Bryantとテレビ局のどちらを支持するか選び、この記事をどんどんシェアしてください

この記事にはその日の夕方までに、198人が「いいね!」をクリックし、54のコメントがついた。マーケティングや広告をテーマとしたオンラインメディアAdWeekがこの件を取り上げ、「メディア戦争勃発」と報じた。

翌日になると、この話題の注目度はさらに高まり、twitterや各種のブログ、ラジオ番組を通じて、どんどん拡散し、Lane Bryantを支持する声が増えていった。

The New York Post紙は、4月22日の記事で、「もしLane Bryant社がFOXの提案を受け入れて、CMを編集していたら、モデルの顔以外はほとんど何も映せなかっただろう」と、Lane Bryant側の主張に味方している。

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YouTubeにアップしたCM動画の再生回数は3日間で200万回を突破し、この週と翌週には、Visible Measuresというサイトが毎週発表している「世界でもっとも多く再生されたCM」のランキングで1位を獲得した。

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さまざまなテレビ番組でもこの話題が取り上げられ、その度にこのCMが番組内で再生され、視聴者の目に触れた。

マーケティングの専門家Eve Mayer Orsburn氏によれば、このCMを放映したテレビ番組の数は300にのぼる。それだけの放映時間を正式にスポンサー料を払って購入すれば、4000万ドル(約40億円)に相当するが、Lane BryantがCMに投資した金額は、その8分の1の約500万ドル(約5億円)だった。

Lane Bryantは爆発的な知名度の上昇に乗じて、「40%のディスカウントクーポン」をECサイトに提示し、さらに集客力と売上のアップにつなげた。

顧客を味方につけると、テレビ局にも勝てる。

Lane BryantはFOXとABCがCMの放映に条件をつけたことに対して怒りの声明を発表したが、もしテレビ局側がLane Bryantの要求を最初から受け入れて、問題のCMをそのまま放映していたら、視聴者からはLane Bryantに対してきっと反発も寄せられていたことだろう。

それが「テレビ局に放映を拒否された」ことで、より多くの視聴者の目に届き、同ブランドの好感度が上がる結果につながったことは間違いない。

Lane Bryantが、今回のプロモーションを初めから戦略的に行っていたかどうかは分からない。いずれにしても世論の支持を得られたのは、このずっと以前から、同サイトがプラスサイズの女性たちの要望に熱心に耳を傾け、その要望に応えてきた実績があったからだ。サポートを求めれば、すぐに応えて行動を起こしてくれる顧客コミュニティを構築していたことが、今回の成功につながったのだろう。

この事例では、情報発信と情報操作、世論誘導に長けているはずのテレビ局が、YouTube動画やtwitterなどと連携を取って発信された377文字のブログ記事にあっさり敗北した。それも注目に値する。

話は変わるが、今年5月、化粧品サンプルのECサイトBirchboxが、テレビCMを初めてロンチしたことが話題になった。会員数1000万人を誇る子供服のプライベート・セール・サイトZulilyも昨年からテレビCMに投資している。ECサイトがより多くの消費者にリーチする目的でテレビCMを打つ動きは今後も活発化していきそうだ。

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