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法人税減税を巡る経団連の巧妙な作戦

 突然ですが、法人税の減税についてどう考えますか?

 企業関係者なら法人税減税を大いに歓迎するのでしょうか?

 多分、そのように想像する人が多いと思うのです。 

 しかし、よ~く考えてみてください。法人税が減税されると何故企業関係者は喜ぶのか、と。

 私が、こんなことを言うと怪訝な顔をする人が多いと思います。何をお前はバカなことを言ってるのか、と。企業は、国に納める税金が少なくて済むのだから、喜ぶのは当たり前ではないか、と。

 しか~し、冷静に考えてみてください。確かに法人税を支払っている企業は喜ぶと思うのですが…、では、法人税を支払っていない企業はどうなのでしょうか。

 つまり、毎年赤字の企業にしてみたら、そもそも法人税を支払っていないわけですから、幾ら法人税が引き下げられても何の有難みも感じない、と。

 そうでしょう?

 では、法人税を支払っていない企業は、どのくらいの割合を占めているのか?

 な、な、なんと我が国の企業のうち7割以上は、法人税を支払っていないのです。

 ですから、幾ら法人税が引き上げられても全然有難みは感じない企業の方が多いのです。いや、それだけではないのです。それどころか法人税の減税に反対する企業もあるのです。

 何故か?

 法人税を減税するとその代わり消費税増税の必要性が高まり…そうして消費税がさらに引き上げられると売り上げが落ちることが懸念されるからか?

 そういった事情もあるにはあるのですが…もう少しはっきりとした反対理由があるのです。

 それは、これまでの安倍政権の法人税の引き下げ論議は、あくまでも代替財源を見つけ出すということが前提になっており…具体的に言えば、例えば課税ベースを拡大する代わりに法人税率を引き下げようという方向で話が進んでいたからなのです。

 課税ベースの拡大とは何か?

 課税ベースの拡大とは、要するに課税の対象になる所得の概念を広げようというものなのです。

 例えば、国が企業に対し様々な租税上の優遇措置を講じると、本当は大きな利益を計上している企業であっても、課税所得が小さくなることによって支払うべき法人税が少なくなるのです。

 ということは、先ほど日本の企業のうち7割以上は法人税を納めていないと言いましたが、本当に儲かっていないので法人税を納めていない企業もあるのですが、そういった租税上の優遇措置のお蔭で法人税を支払わなくて済んでいる企業もあるということなのです。

 ということは、今後仮に課税ベースが拡大されれば、今まで法人税を支払わなくて済んでいた企業のなかにも改めて法人税を支払わなければならなくなるところが出てくるということなのです。

 分かりました?

 だから、企業によっては課税ベースの拡大によって新たに法人税の支払いが余儀なくされるところが出てくるので、そのような企業は、課税ベースの拡大を前提とした法人税率の引き下げは却って損になってしまうのです。

 ということで、経済界全体としみたら、幾ら見た目の法人税率が引き下げられようとも、企業が国に納める税金の額には変化がないことになり…そうなれば法人税率の引き下げに何の効果があるのかと私は疑問に思っていたのです。

 さらに言えば、課税ベースを引き上げつつ法人税率の引き下げを求める安倍政権の意図がどこにあるのかが分からなかったのです。

 しかし…その謎が解けました。

 経済界、そして安倍総理は、最初から課税ベースの拡大などを認める気は殆どなかったということなのでしょう。

 でも、財政の健全化のために努力しているという姿勢も示す必要があり…また、それ以上に法人税減税に消極的な財務省を動かすために代替財源を探し出す振りをしただけなのでしょう。

 貴方も、麻生財務大臣が、法人税の減税を実現するためには代替財源を探し出すことが必要だとしつこく言っていたことを覚えているでしょう?

 しかし、繰り返しになりますが、代替財源が課税ベースの拡大などによって賄われるのであれば、幾ら法人税率を引き下げても、経済界全体としての負担は軽くはならないのです。敢えて言えば、より儲かっている企業の税の負担が軽くなる一方で、余り儲かっていない企業の税の負担が重くなるというだけなのです。

 いずれにしても代替財源の話はどうなるのでしょうか?

 だから、ここに来て携帯電話税とかパチンコ税なんてことが急に話題になっているのですが…そんななか、経団連の榊原会長が言いました。
「一番大事なのは、(増減税で)帳消しになるのを避けることだ」「アベノミクスによる経済成長の分は財源に組み込んでもらいたい」
 要するに、課税ベースの拡大などされると法人税減税の効果が帳消しになるから認めることはできないと言っているのです。

 こうやって法人税減税の流れが決定的になった頃合いを見て、自分たちは課税ベースの拡大は認めないと言う経団連。

 もちろん、課税ベースの拡大を認めるならば、何のための法人税率の引き下げなのかということになるので、一概に経団連の言い分がおかしいと言う訳でもないのですが…でも、余りにも作戦が巧妙ではないのか、と。

 さらに、ここまで考えてくると、段々問題の本質が見えてくるのです。

 つまり、見た目の日本の法人税率は高いように見えても、本当に日本の法人税が高いと言えるのか、という疑問が湧いてくるのです。というのは、日本という国は、様々な企業優遇措置を講じて課税ベースを小さくしているのですから、実際の企業の税負担はそれほど重くはないのではないか、ということなのです

 では、何故見た目の法人税率が諸外国に比べて高くなっているのか?

 それは、法人税率を一律に下げれば一般国民の反発を招きやすいが、個々の企業優遇措置を施す場合にはそれほど目立たないで済ませることができるからなのです。そうして実際に企業はそれほどの税負担がかかっていないのにも拘わらず、見た目の負担は重く見せている、と。

 しかし、今や日本の企業はそうしたやり方には満足できないと言っているのです。見た目の税率を引き下げ、さらに企業の負担を軽くしろ、と。

 法人税の減税がほぼ既定路線になったところで、自分たちは課税ベースの拡大には応じないという経団連。見事な作戦です。

 でも、そうなると消費税はどこまで上がるか分かったものではないのです。そして、そのように消費者にばかり負担がかかると、消費活動に勢いがなくなり…結局、企業にもその影響が及ぶのです。

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