記事

新聞、読み比べて見えてくること - 鈴木耕

1/3
 ああ、この連載ももう56回目か。だいたい1年ほども続けたら、連載もマンネリになる。だから50回ほどでやめようかと思っていた。しかし、3月11日。あれ以来、僕は震災と原発について書き続けてきて、連載終了のキッカケを失っている。

 正直に言って、こんなにしんどい思いで文章を綴ってきたことはない。本音では、もうそろそろ連載を終わりにしたい…。でも、読んでくれる方は増えているという。もっと書き続けろ、という声も聞こえてくる。もう少し、もう少しだけ続けよう…か。

 かつて出版社勤めをしていた頃、僕は出勤してすぐに、全国紙はもちろん琉球新報まで含めて新聞7〜8紙をめくるのが日常だった。編集という職種では、新聞を読むのも大事な仕事だったのだ。

 いま僕は、新聞を3紙購読している。朝日、毎日、東京。さすがにそれ以上は経済的にきつい。読売、産経、日経、地方紙などは、できる限りネットで検索する。

 いまは、会社勤めのころよりも時間を自由にできることもあって、新聞の読み方も変った。隅々まで記事を追いかけ、小さな記事をなるべく丁寧に漁るようになったのだ。そうすると、時折、なかなか興味深い事実を知ることとなる。

 たとえば、続々と明らかになる例の「プルサーマル説明会」での「ヤラセ問題」だ。7月31日の各紙は一面で「古川康佐賀県知事、やらせ誘導」と大きく伝えた。当然だろう。しかし、中身を比べてみると、妙なことに気づく。
【毎日新聞】
 (略)九電第三者委員会の郷原信郎委員長は30日夜に会見し、大坪潔晴・佐賀支社長が段上守・前副社長の指示で、知事公舎で古川康知事と面談した際のやりとりをメモしていたことを明らかにした。中身は「メールなどで(再稼動への)賛成意見も集まるようにしてほしい」という趣旨の内容だったという。(略)

【朝日新聞】

 (略)古川知事は会見で「当事者である九電に『声を出すべきだ』と発言したのは軽率で、反省している。私が言ったから(やらせメールが)行われたとは考えていない」と述べた。
 東京新聞では微妙にニュアンスが変る。記事の最後に、面白い文章があるのだ。
 (略)九電はやらせメール問題が発覚した直後に社内調査でメモの存在を把握していたが、「メモの内容と出席者の話が一致していない部分がある」「古川知事に重大な責任が生じる可能性がある」などとして、十四日の経済産業省への報告書には記載していなかった。
(略)郷原氏が二十七日に古川知事から事情を聞いた際、知事は「経済界の賛成意見が番組を通じて表に出るように話したが、九電が組織的に賛成意見を出すように働きかけたことはない」とやらせメールの“要請”を否定した。しかし、メモには「経済界」という文言はなく、「ネットやメールを通じて賛成意見も集まるようにしてほしい」という内容が書かれていたという。
 読み比べてみればお分かりだろう。

 古川知事は記者会見で、「賛成意見も集まるように、とは言ったが、それでヤラセが行われたとは思わない」と自らの責任を否定している。しかも「経済界の賛成意見」という表現で、自分の意見ではなく経済界からの要請であったように郷原氏には答えたし、テレビで観た古川知事の記者会見でも、確かにそう述べていた。だが、東京新聞のみは「『経済界』という文言は、九電側のメモにはなかった」と、はっきり古川知事の言い分を否定している。

 同じ会見を取材していながら、なぜか表現が違う。細かなニュアンスながら、古川知事が自らの責任回避のために、微妙な言い回しで、九州電力と“経済界”という漠然とした業界に責任を押しつけ、(結果的には)ウソをついていた(かもしれない)ことを、記事できちんと触れているのは、3紙のうちでは東京新聞だけだったわけだ。

 どこが何を隠し、誰が虚偽説明をしたのか。

 すべての責任を古川知事によって押し付けられることに、さすがに九電側も我慢できなかったのか、郷原・第三者委員会委員長に真相をぶちまけたのだろう。むろん、ヤラセを行った九州電力に第一義的な責任はあるだろう。だが、実は古川知事も同じ穴の狢(むじな)だった。それを「すべては九電の責任。私はそんなことを言った憶えはない」と責任回避しようとした古川知事に対し、「それはないでしょう」というのが、九電側の正直な気持ちだったのではないか。狢同士の醜いケンカ(?)。

 記事の最後の数行で、そんなことも見えてくる。

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。