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facebookを駆使して売上を伸ばす子供服のECサイト「Lolly Wolly Doodle」

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今回紹介する「Lolly Wolly Doodle」は子供服全般を扱っている米国のサイトだ。女児のドレスを中心に、兄弟姉妹、親子でのお揃いの服や、子どもの名前やイニシャルを入れた子供服が購入できる、一見したところ特に変わったところのない普通の子供服のECサイトのように見える。

実はこのサイト、毎年売上を約2倍に伸ばし続け、2013年には1100万ドル(約11億円)もの売上を計上、facebookのファンは90万人を超える人気で、これまでに2300万ドル(約23億円)の投資を集めるなどの高い実績を誇っている。

このサイトの何がそんなにすごいのか調べてみて驚いた。「facebookセールを征服したスタートアップ(The Startup Conquered Facebook Sales)」とInc.誌で特集されるほどの実績をあげているサイトだったのだ。

facebookセールといえば、2010年に米国の大手デパートチェーンであるJCペニーが大手としては世界初のfacebookストアをオープンしたのを皮切りに、他企業もfacebookストアを次々とオープンし、「fコマース」がAmazonを脅かす存在となるかと話題になったが、1年もしないうちにひっそりとみなクローズに追い込まれている。

Lolly Wolly Doodleはその中にあって、なぜfacebookで成功できたのか? 彼らのストーリーを追いながら、その秘密を探っていこうと思う。

余った生地がもったいないとeBayでビジネスをスタート

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創業者の名前はBrandi Temple(以下テンプル)氏。米国ノースカロライナ州レキシントンという人口2万人にも満たない小さな街の出身だ。

テンプル氏の幼少時代からの夢は「お嫁さんになること」だった。結婚して家庭に入り、夫のサポートをするという長年の夢を叶えるべく20代で結婚するがほどなく離婚。その後フロリダ州オーランドに移住し別の男性と婚約するも、婚約者が自動車事故で亡くなるという悲劇に見舞われる。

失意の彼女は2人の子どもを抱え、家族を頼って故郷のレキシントンに戻ってきた。そこで現在の夫であるWill Temple(以下ウィル)と出会い再婚。ウィルの連れ子と彼女の連れ子に加え2人の間にも子どもが産まれ、6人家族として再スタートを切ることになった。

テンプル氏は家庭に入り、夫のサポートと子どもたちの世話に追われる毎日のかたわら、4人の子どものために洋服を作るようになった。小さい頃には母や祖母が作った洋服を着ていたテンプル氏にとって、洋服を作ることは自然な流れだったのだ。

洋服を作ったあとにどうしても生地が余ってしまうのがもったいないと思った彼女は、作った洋服をサンプルとしてeBayに出品し、注文の入った分だけを製作するオンデマンド形式で生地を使い切ることを思いつく。

eBayストアに「Lolly Wolly Doodle」という名前を付けて販売をはじめたのが2009年のこと。注文は順調に増え続け数ヶ月で需要に追いつかなくなってしまい、友人や親戚の助けを借りながら注文に対応するようになっていった。

facebookページを使って商品を販売

そのころ、不況のあおりを受けて、夫ウィルの会社の経営状態が悪化し、給料が半分ほどになってしまう。テンプル氏は家計を助けるためにと、事業を大きくするためのアイディアを考えるようになる。

まずはアリババという世界貿易のB2Bマーケットプレイスのサイトで見つけた中国の会社に、いくつかサンプルのドレスを作らせてみた。しかし、完成した商品はゼブラ柄ではなく牛に見える上に、縫製も彼女の基準からはほど遠いものだったという。

こんな商品をeBayに出せば悪い評価がついてしまうかもしれない。でもせっかく作ったのに捨ててしまうのももったいない......。

そう思った彼女は、Lolly Wolly Doodleのfacebookページに商品を格安で掲載してみることにした。購入希望者にはコメント欄にメールアドレスを残してもらい、Paypalで請求書を送るという単純な試みだった。

当時Lolly Wolly Doodleのfacebookページにいた150人ほどのファンのほとんどは、直接の知り合いと言う状態だったが、知人たちが購入すると、顧客はニュースフィードで販売を知った知人の知人へと広がり、格安の中国製ドレスはわずか30秒で完売した。

驚いた彼女は、今度は別のデザインをeBayと同じオンデマンドの注文方式で掲載してみると、これも面白いように売れた。なんと1日で、eBayでの1ヶ月分の売上をたたき出したのだ。

テンプル氏はその後数週間facebookを試してみて、eBayからfacebookにビジネスを完全に移行することに決めた。彼女の家のガレージは裁縫工場と化し、友人や親戚を総動員して昼間は裁縫、夜は請求書作りと商品の送付という忙しい毎日が続いた。

Lolly Wolly Doodleは順調に顧客と売上を増やしていたが、テンプル氏は壁にぶつかっていた。ビジネスとしては成功しているが、自分のガレージで続けるには限界がきていたのだ。ちょうどそんなとき、夫のウィルが勤めていた会社を解雇されてしまう。

テンプル氏はビジネスの売却を決意する。ウィルが次の仕事を見つけるまで家族で生活していくために100万ドル(約1億円)くらいで売却できれば、と何の根拠もなく思いたち、知り合いの銀行マンに買い手を探して欲しいと頼んだ。その銀行マンは、Shana Fisher(以下フィッシャー)氏というニューヨークの投資家を紹介してくれた。

テンプル氏から電話を受けたフィッシャー氏は開口一番こう言ったという。

"このビジネスを売ってしまうのはもったいないわ。私が投資するから事業を拡大しましょう。あなたは、今まで誰もできなかったことをもうすでに成し遂げているのよ"

Lolly Wolly Doodleのビジネスに可能性を見いだしていたフィッシャー氏は、テンプル氏にビジネスを続けるよう説得し、取り急ぎ自身で10万ドル(約1000万円)を投資、数ヶ月後には140万ドル(約1億4000万)の投資を集めてくれた。

フィッシャー氏のアドバイスのもと、レキシントンの元タイヤ工場を裁縫工場として借り、裁縫師を募集し始めた。レキシントンはその昔繊維の街として栄えていたが、ここ10年で中国の安い労働力に仕事を奪われたくさんの裁縫師たちが失業したという経緯も幸いし、人材はすぐに集まった。

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こうして事業を拡大しはじめたLolly Wolly Doodleはオンデマンドだけでなく大量生産も始め、自身のサイトを2010年にオープン。現在ではレキシントンだけでなくニューヨークなど4拠点に工場を持つ起業に成長している。

facebookで簡単に商品が購入可能

2014年6月現在、Lolly Wolly Doodleは商品をサイトとfacebookの両方で販売している。

サイトではオリジナルデザインの子供服を扱っている。洋服に子どもの名前やイニシャルを入れたり、アップリケを追加したりとカスタマイズすることはできるが、基本的には大量生産の商品が中心だ。

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これに対し、facebookでは創業当時と同じくオンデマンドの商品が販売されている。購入希望者がfacebookのコメント欄にサイズ、メールアドレス、イニシャルを追加などの希望を書き込むと、Paypal経由で請求書が送られてくる。支払い完了後、2−4週間で商品が届くしくみだ(ちなみに送料は無料)。

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商品は先着順に販売されるが、商品がfacebookのウォールから削除された時点で販売は終了する。

自分が商品を購入できるかどうかは、請求書がeメールで送付されてくることで確認することもできるが、facebook上の「Winner」タブで自分の名前を確認することも可能だ。また「Winner」ページの自分の名前をクリックすると支払いの画面が表示される。

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JCペニーなどのfacebookストアは商品をウォール上ではなく別のタブへわざわざ行って購入の手続きをする必要があり、その複雑さが面倒でうまく機能しなかったという。購入までの手続きが面倒だと購入意欲を阻害する可能性が大きい。

その点Lolly Wolly Doodleでは購入手続きが簡単で分かりやすい。コメント欄に記入し、請求書が送られてきたら代金を支払えば、あとは商品がくるのを待つだけだ。

また、Lolly Wolly Doodleの商品を販売はタイムライン上で行われるので、コメントを記入した時点で購入者の友人たちのニュースフィードにどんどん紹介されていく。人目に触れる機会が自然と増えていき、購入者の友人、その友人と少しずつファンを増やしていった。つまり、マーケティングや宣伝の費用を一切かけずに知名度を上げ、売上を伸ばしていったのだ。

facebookでの販売はあくまでもサンプル商品としての販売という位置付けで、人気のあった商品は改良を経た上で大量生産化され、サイト上で販売されていくという。

どのような商品が人気があるのか、どのような商品が実際に売れるのか、市場調査として活用しているようだ。

集客、商品販売、コミュニケーション、コミュニティ化...。
ソーシャルメディアの活用方法はいろいろとありそうだ。Lolly Wolly Doodleの事例を参考に、あなたも新しい活用方法を見出してみよう。

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