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保守・右翼の脱原発宣言 - 鈴木邦男

 保守派、そして右翼陣営の<流れ>が変わってきた。原発についての<流れ>だ。今までは原発賛成派が多かったが、このところ逆転しつつある。西尾幹二さんや、竹田恒泰さんなどの発言も影響が大きかった。又、日本の土地が汚されている。そのことへの危機感も強い。一水会でも機関紙『レコンキスタ』には反原発の主張が載り、一水会フォーラムにも反原発の人が講師として来ていた。

 一方、ネット右翼というか、「市民派右翼」というのか、そういう中には「反原発デモ」の妨害を行ったり,「原発推進デモ」をやった人もいる。


 僕は6月11日の(土)のデモに行ってきた。反原発のデモは4度目だ。長い時間歩いたので疲れた。午後の6時過ぎ、解散地点の新宿アルタ前に着いたら、もの凄い人だった。ただ、近くで,「市民派右翼」の人達がマイクで叫んでいた。「原発反対を言う人間は反日だ!」と。だったら「反日」でもいいやと思ってしまう。5月7日(日)に渋谷でデモをした時も、「こら鈴木! 売国奴!」と、知らない人に怒鳴られた。

 昔は僕らも同じだったな、と思った。左翼の言ってることに反対していればいい、と思っていた。憲法、防衛、天皇制、教育…と、あらゆる問題で、左翼に反対していれば、それが<愛国的>だと思っていた。同じことを未だにやってる人々がいるんだ。「反原発を言ってる奴らは、皆、左翼で、日本の国力を弱め、破壊しようとしてる奴だ」と思っていたのだ。今、そんなことはないのに。

 「原発賛成」と大声で言わなくても、「でも日本には必要だ」と思ってた右翼の人は多かった。ところが、このままでは日本は滅ぶ。そう憂い、「反原発」に変わり、それを勇気を持って言う人達が増えて来た。

 4月14日(木)、チャンネル桜で原発、是か非かの大討論会があった。推進派の人達4人と反対の人4人の討論だ。反対派の一人として僕も出た。又、西尾幹二さんも出た。西尾さんは言う。「今まで日本には原発は絶対に必要だと思っていたし、マスコミに出て、そう主張してもきた。しかし、今回の事故で、それは間違っていたと分かった。今までのことを自己批判し、これからは反対派に回る」と言った。勇気のある態度だと思った。普通、学者なら、絶対に間違いを認めない。あれこれ理屈をつけて、ごまかす。西尾さんは偉いと思った。

 「右翼、保守派の人は間違っていたと思ったら、謝るし、考えを変える。これは立派なことだ。左翼には全くない」と、ある新聞記者が言っていた。6月20日(月)の一水会フォーラムの時だった。この日は伴英幸さん(原子力資料情報室共同代表)が講師で、演題は「原子力発電と新エネルギーを考える」だった。二次会の時、出席者に聞いたが、最近考えを変えたという人が多かった。


 一水会自体は、昔から原発の危険性を説いてきた。25年前から、福島原発反対のデモをやったり、合宿をやったりしていた。又、チェルノブイリ事故の直後には高木仁三郎さんに来てもらって講演をしてもらった。6月の講師の伴英幸さんの「原子力資料情報室」の初代代表だ。「昔、高木さんが一水会に来たという話は聞いています。チェルノブイリ事故のあとです。私が来たのは福島事故のあとで、因縁を感じます」と言っていた。

 このフォーラムの他にも、竹田恒泰さんの論文が投げかけた問題提起が大きかった。竹田さんは一水会機関紙『レコンキスタ』の5月号の一面に、<原発には「愛」がない!=保守のための脱原発論>を書いたのだ。本格的な反原発論だ。勉強会の講師の発言ではない。機関紙の一面論文だ。一水会の方針でもある。竹田恒泰さんは慶応大学講師だが、実は、旧皇族竹田宮家の一員で、明治天皇の玄孫に当たる。旧皇族として、皇室問題についての本も沢山書いている。

 それに、非常に行動的な元宮様だ。2003年2月、イラク戦争直前のバグダッドに行った。木村三浩氏(一水会代表)が団長をつとめ、塩見孝也氏(元赤軍派議長)と僕が副団長だった。PANTAさん、大川豊さん、雨宮処凛さんなど40人近くが行った。その中に竹田さんもいたのだ。向こうでは、「プリンス竹田!」と呼ばれていた。

 竹田さんの最近出した『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』(PHP新書)は、何と、20万部突破だ。又、『レコンキスタ』に書いた<原発には「愛」がない!>は、大巾に加筆し、急遽、単行本化されている。
 旧皇族の方が「反原発」を言っているのだから…と、反響も大きい。「原発は日本にふさわしくない」「脱原発は現実的選択」と書いている。極めつけは「原発作業員も大御宝(おおみたから)であり、天皇陛下の赤子なのである」。これを読んで考えを改めた人も少なくない。

 そして、6月20日(月)の伴英幸さんの反原発講演だ。それにしても、木村三浩氏はどこで伴さんと知り合ったんだろう、と思って聞いたら「理性的に反原発のことを話してくれる人を探していたら、伴さんがいいと東京新聞の記者に言われた」そうだ。一面識もないのに電話してお願いしたのだ。一水会は、今でも「右翼」とか「新右翼」と言われることが多い。講演の依頼があった時、躊躇しなかったのか。伴さんに聞いたら、「それはなかったです。高木仁三郎さんが昔、一水会で話したと聞いてましたので」と言う。

 じゃ、僕も伴さんとは初対面だ、と思って名刺を出したら、「鈴木さんとは前に会っています。集会に一緒に出て話したじゃないですか」と言う。エッ? いつですか、と聞いたら、去年の5月だという。渋谷のウィメンズ・プラザだという。「あっ、言論サミットだ」「そうです。それです」。


 「あれ、それには僕も出てましたよ」と木村氏。「ロシアから帰ったばかりで、成田からそのまま駆けつけたんです」。何の事はない。3人とも会っていたのだ。それなのに初対面だとばかり思って、連絡を取っていたんだ。

 家に帰ってから、パソコンで調べてみた。昨年の5月23日(日)だ。正式には「第二言論サミット」という。「大マスコミ」に比べて、もうちょっと小さい「第二言論」「ミニコミ」のことらしい。なんと24人が登場し、6分ずつ喋る。初めに(テーマを)聞いた時は、面白くないな、と思ったが、当日聞いてみると、なかなか良かった。大きくコーナーが分かれている。「大マスコミとの闘い」「反戦&街へ」「プレカリアート系」「政治文化」「第二言論」「個別テーマから」・・・と。「青年の主張」のようで、清々しかった。

 伴さんは、13番目に登場していた。「原子力政策の転換を求め訴えてー430号を超えた私たちの月刊誌」。

 伴さんの後は、宇賀伸寿一さん(救援連絡センター)で、「司法改革、裁判員制度だけではない。刑事公判手続き、国選弁護」というテーマだ。こうしたテーマについては、この人は詳しい。だって、1974年の連続企業爆破事件で、捕まり、長期間、刑務所にいたからだ。人のことは言えないが、危ない人がいっぱいいる。そこで伴さんも話していたんだ。

 じゃ今度は原発問題にしぼって、脱原発も原発推進も呼んで「第ニ言論サミット・第二回」をやってみたらいい。エキサイティングな集まりになるだろう。

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