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バルテュスの描く少女は、ポルノグラフィーか否か?

すっかり忘れていたのですが、もうすぐ終わってしまうので、東京都美術館の「バルテュス展」に行ってきました。

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バルテュスって日本では有名でないのか、私も名前以外あまり知らなかったんですが、どうやらピカソとならぶ現代フランスの巨匠だそうで、オークションでは億単位の価格がつくこともあるそうです。そしてその作風といえば、上記の『夢見るテレーズ』のような、何やら良からぬ香りのする少女が圧倒的に多く、また代表的な作品として知られてもいます。

そして今回のこのバルテュス展は、下記のツイートが話題を呼んだりもしました。

芸術と児童ポルノの問題といったら、諸外国ではどうなのかよく知りませんが、日本ではすっかりおなじみといった風情があります。マンガ表現の規制に始まり、最近では2013年の会田誠の個展に抗議があったことなんかも記憶に新しいですよね。

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会田誠作品集 天才でごめんなさい

この問題については、とても根が深いものなので私も安易にホイホイ文章を書く気にはなれないのですが、私はやはり「芸術側」の人間なので、今回のバルテュスにしろ会田誠にしろ、「児童ポルノじゃないよー」と思っています。というか皮肉なことですが、芸術ってやはり「禁忌を犯してナンボ」みたいな部分があるので、抗議が上がったことによって余計その芸術の価値、美術展の価値が上がったりすらするのではないかと思っています。今では正統な西洋美術史の作品の1つとして教科書に載っているマネの『オランピア』も、発表された当初は「神話の女神じゃない、これは娼婦を描いている!」ということで大スキャンダルになったわけですし。

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エドゥアール・マネ『オランピア』1863年

……という話をすると、とても嫌な顔をする人がたまにいるのですが、「芸術側ではない」人に1つ誤解してほしくないのは、「禁忌を犯す」ということは、実はものすごい技量がいるということです。そのへんの画家見習いの素人が奇を衒って「こんなん作りました!」とやっても、それは単なる見るもおぞましい俗物です。「技量ってどこで判断するんだ」みたいな話になるとまた長くなるので止めますが、高い技術と信念を持ったアーティストだけが初めて犯せる領域というものがあって、美術史というのはそこから生まれたものが作っていくんだと私は考えています。


いずれにしろ、100年経てばわかることです。時の洗礼というのはもっとも正直かつ残酷で、バルテュスも会田誠も、死後100年近く経ってから初めて“本当の評価”が下されるでしょう。現時点で私が「児童ポルノじゃないよ」と思っているあれもこれも、100年後のみなさんが「いや、あれはポルノだよ」といったら、やっぱりそっちが正しいのだと思います。“今日の議論”には限界がある。それは、美術や文学や映画を論じるときに、気に留めておいたほうがいいことだよなー、と私は考えています。

私の考える芸術とポルノグラフィーの境目

ちなみに、今日の私は「芸術」と「ポルノ」の境目はどこにあると思っているのかというと、澁澤龍彦『裸婦の中の裸婦』で語られている、以下の考え方がいちばんしっくり来ています。

どんな芸術的な裸体画にだって、ポルノグラフィーと変わらぬ催淫性の効果はあるんだよ。ただ芸術作品とポルノグラフィーとの違いは、前者が催淫効果だけにとどまってはいないということさ。(p18)

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裸婦の中の裸婦 (河出文庫)

何て曖昧なんだ、という感じですが、そもそもが絵画というのは感覚的なものなので仕方ありません。催淫効果だけにとどまっている・いないというのも、同じ絵画を見ても個人によってきっとちがうので、めんどくさい話ではあります。みなさんも、「芸術」と「ポルノ」の境目を、自分の定義で考えてみると面白いかもしれません。


何だか肝心のバルテュスの話をほとんどしなかったのですが、バルテュス展は良かったです。ただ、バルテュスって静かな部屋で、1人でひっそりこっそり鑑賞するのが似合う画家ですよね。東京都美術館のバルテュス展はわりと混雑しているのでそこだけが残念ですが、こればっかりは贅沢いえないのでしょうがないです。

もうすぐ終わってしまうので、気になっている方はお早めに!

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