記事

ライフネット生命が、新卒採用対象者を1%以下まで絞り込む理由。

先日、就職活動を終えた大学生から話を聞いた。友人の多くが大手企業に就職し、おおむね希望通りの会社・業種に入った人が多かったという。今の景気浮揚が継続するか一時的かは分からないが、学生にとって追い風となった事は間違いないようだ。

以前書いた「ライフネット生命の新卒採用課題が難しすぎる件について」では、手間のかかる「重い課題」は企業側にとっては適切に絞り込みが出来る、志望者にとっては真剣に取り組めば仕事を疑似体験出来る良問だと指摘した。

この記事には多数の反響を頂き、ニュースキュレーションアプリのNEWSPICKS(ニュースピックス)では300件を超えるコメントを頂いた。課題については、素晴らしい内容、面白い課題、採用はこうあるべき、というものから大して難しくない、これに完璧に答えられるなら入社しないで起業した方が良いというものまで様々だった。

NewsPicks - ライフネット生命の新卒採用課題が難しすぎる件について

■20年後の未来に起きている事。

続きに取り組む前に、改めてライフネット生命の「重い課題」をおさらいしておこう。
現在の小学校1年生が大学を卒業して就職する頃には、65%の人が今は存在していない仕事に就くという調査があります。現在から20年後の社会と仕事の変化について、予想してください。

1・20年前から現在にかけてもっとも成長した産業ともっとも衰退した産業について、データを用いてその背景とともに説明してください。
2・20年後の未来に、現在と比較して大きく変化している社会・産業の状況を予想し、理由とともに説明してください。
3・2で予想した変化に伴い、20年後には、現在存在しないどんな仕事が新たに生まれているでしょうか。
新たな仕事を1つ挙げ、その仕事が生まれる背景と、その仕事に就くにはどのような能力が必要か予想して説明してください。

ライフネット生命 2015年新卒採用課題 重い課題 Bより
問1は前回挑戦したので、次は問2だ。

20年後の未来について、確実に言えることは少子高齢化が進んでいることだ。20年後に成人する日本人の数は今年生まれた子供の数とほぼイコールだ。移民受け入れや戦争でもない限り、人口が急に増えたり減ったりはしない。結果的に高齢者向けビジネスは増え、子供向けビジネスは縮小するだろう。

こういった状況になれば例えば人口減少を穴埋めするために大量の移民を受け入れることになり、通訳、日本語学校、外国人向けのアパートや飲食店などの需要が急激に増えるかもしれない。場合によっては治安が悪化し、警備会社の需要も増える事もあるかもしれない。

この位の予想ではさほど独創的とはいえないが、データを元に仮説・予想を立てる事もまた仕事では当然求められる能力だ。これも良い仕事の練習となるだろう。

■20年後には介護ロボットを遠隔操作?

最後の問3は、こういった予想した変化に伴い新たに生まれる仕事は何か、というものだ。

今後最も深刻な問題は介護の必要な高齢者が急激に増えることだろう。人数が増えれば問題の質も変わる。今までのやり方では全く対応できなくなるからだ。これを解決するような産業が生まれれば大きなビジネスになるかもしれない。

現在では遠隔地から手術を行う遠隔医療がある。腕の良い医者が移動で時間を潰すより東京にいながら日本全国で手術が出来ればメリットは大きい。今後、介護の必要な高齢者が急増する一方で介護業務に従事する人が増えなければ、介護士は医者並みに貴重になるかもしれない。しかもこれは市場メカニズムでは解決できそうにない。客である高齢者は高価な費用を負担出来ない可能性が高いからだ。

そこで遠隔介護・テレケアが取り入れられればどうか。現在の遠隔介護はカメラで高齢者を見守るといった仕組みだが、アメリカではカスタマーサポートが海外に置き換えられたように、介護をするのは海外から、そして部屋にあるのは介護ロボ、といった状況になるかもしれない。

介護で最も難しいのは人の判断で、コンピューターへの置換えはかなり難しいと思われる。これを実務は現場にあるロボット、操縦は海外にいる日本語を学んだ外国人、といった形にすればどうか。例えば現場で必要な介護人員を1/10まで減らす事が出来れば劇的なコストカットとなり、少ない人員でも介護が可能になる。かなり荒唐無稽な話になるが、外国人を受け入れる社会的コスト、そして物価の高い日本で暮らすコストを考えれば、こういったやり方が現実的になる時代が来るかもしれない。

■希少な資源と豊富な資源

仕事で重要な事は「何が希少価値を持つか?」という事だ。その希少なものを最大限活用するにはどうしたらいいか、つまりボトルネックを理解する事が重要だ。

今ロボットをつかった介護などといえば、そんなロボットを作ったら一体どれだけの費用がかかるのか? ただの妄想じゃないのか?と言われるかもしれない。これは技術的に可能であってもロボットの価格がボトルネックになる、という事だ。

今の時点ではおそらくそうだろう。しかし、もし20年後に低価格・高性能なロボットが作られて500万円まで値段が下がり、その一方で人口減少により国内の働き手が減ってしまえば、500万円のロボットと人手のどちらが希少か?という比較になる。

例えば20年前にyoutubeは成り立たなかった。サーバー・通信コスト・ストレージ(データを保管するディスク)がいずれも高価で、なおかつそこから収益を上げるネット広告の技術が未発達だったからだ。動画コンテンツを届ける手段として、ビデオレンタルは当時200~300円程度だったが、配信コストが何万円もするなら到底ワリに合わない。

技術的に出来るかどうかと、コストは全く別の問題だ。20年前でも最先端の通信技術を使えば動画配信はおそらく出来たのではないかと思うが、コストが希少性により決まる事を考えれば、それを無料で見せるようなビジネスモデルはあり得なかっただろう。何が豊富で何が希少かは時代とともに刻一刻と変わる。

20年前には通信コストがボトルネックだったが、今はよっぽど大きなデータでなければスマートフォンを使ってどこに居てもあらゆるデータを届けられる。そして受信のみならず発信もスマートフォンひとつで事足りる。つまり通信についていえば20年前とは「世界が変わった」わけだ。

■個人向けの配送インフラが無かった時代にアマゾンは成り立たなかった。

他の事例で言えば、宅配便がある。荷物を届ける手間とコストは20年前と比較すればさほど大きく変動はしていないが、40年前と比較すれば大きく様変わりしている。

1976年にクロネコヤマトが宅急便を始めるまでは、個人向けの宅配サービスはまともなインフラがなかった。価格は高く、手間もかかり、いつ届くかも良く分からない仕組みだったという。こんな状況ななら、アマゾンのようなビジネスモデルは成り立たなかっただろう。現在はネット通販の成長により配送量が増え過ぎてまた別の問題も発生しているが、荷物を手軽に低コストで届けられる、という豊富な資源を利用して提供されているビジネスの事例だ。

現時点でも、このような視点から苦境に陥った企業を分析するとまた違った風景が見える。デフレが続いていた今までは低賃金の従業員はそれなりに確保できた。それを活用したビジネスが外食産業では花型で、200円台の牛丼は「希少な商品」だ。

しかし現在では人員の確保が難しくなり、居酒屋や牛丼チェーンで大量の閉鎖店舗が発生するなど、状況が大きく変わった。低賃金のアルバイト人員が希少な資源となり、人海戦術による経営が行き詰まったとも言える。

このように、ビジネスで求められることは豊富な資源(リソース)を利用して、なおかつ希少なリソースは最大限効率的に活用して、客が求める希少な商品・サービスを作ることだ。

さて、20年後には何が希少で何が豊富なのか。そしてどのような商品・サービスが求められているのか。

求められる能力で言えば、大きな視点で考えると20年後に希少なリソースと豊富なリソースを見抜き、それを利用して希少な商品・サービスを作ってビジネスの形に組み立てる力だろうか。

このような能力を持った人でなおかつライフネット生命を志望する人はごくわずかだと思うが、それでも企業はそういう人を採用する必要がある。規模としてはまだ大企業とは言えないライフネット生命にとっては、新規に採用する社員は大手企業のような数千人や数万人の中の一人ではない。募集要項でも以下のように説明されている。
社員数90名程度(2013年12月現在)の会社が、新卒社員を採用する。今後のライフネット生命の成長において、そのインパクトは、私たちが想像する以上に大きいはずです。
ビジネス・ライフプランに関する記事は以下も参考にしてほしい。
■就職活動中の女子大生のために、ゾゾタウンの企業研究を徹底的にやってみた。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/37409548.html
■ライフネット生命の新卒採用に挑戦してみた。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/25469885.html
■家は余ってるから買う必要がない、というのは本当?
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/37689186.html
■8000万円の家、買えるけど買わない方が良い理由
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/37606326.html
■「ネットはテレビの脅威にならない」は正しい。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/37934085.html

ライフネット生命の新卒採用課題は歯ごたえがあるだけでなく、本気で取り組めば思考能力も鍛えられる。入社を志望する若手のみならず、社会人が本気で取り組んでみても面白いかもしれない。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
シェアーズカフェ・オンライン 編集長
●ツイッターアカウント @valuefp  
フェイスブックはこちら 
ブログの更新情報はツイッター・フェイスブックで告知しています。フォロー・友達申請も歓迎します^^。
※レッスン・セミナーのご予約・お問い合わせはHPからお願いします。
※レッスン・セミナーのご案内はこちら
※スマートフォンからのお申込みはこちら(サービスの詳細なご案内はPC向けサイトのみ)。

あわせて読みたい

「就職活動」の記事一覧へ

トピックス

議論福島第一原発処理水の海洋放出は許容できるリスクか?

ランキング

  1. 1

    毎日の誤報「公正」は口だけか

    青山まさゆき

  2. 2

    NHK「しれっと」報道訂正に疑問

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  3. 3

    タクシーのマスク強制が嫌なワケ

    永江一石

  4. 4

    トランプ氏の側近3人 暗躍失敗か

    WEDGE Infinity

  5. 5

    JALの旅行前検査 医師が「ムダ」

    中村ゆきつぐ

  6. 6

    田代まさし闘病で収監延期の現在

    SmartFLASH

  7. 7

    タワマン強盗の恐怖を被害者激白

    NEWSポストセブン

  8. 8

    橋下徹氏 毎日新聞は訂正すべき

    橋下徹

  9. 9

    鬼滅旋風で頭抱える映画配給会社

    文春オンライン

  10. 10

    橋下氏「否決なら住民投票無効」

    橋下徹

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。