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株式会社による株主の議決権行使禁止の仮処分命令申立

いよいよ株主総会シーズン到来、ということで、今年も総会ネタを少しばかりご紹介したいと思います。

伊豆シャボテン公園のカピバラ虹の広場のオープンや、伊豆ぐらんぱる公園の新アトラクションの紹介など、心温まる適時開示で和ませていただいているソーシャル・エコロジー・プロジェクト社(JDQ)ですが、この心温まるリリースに挟まるように、6月11日、同社が株主の議決権行使を禁止する旨の仮処分命令申立を(東京地裁へ)行った旨、開示されています(開示リリースはこちらです)。また、同日、この仮処分の相手方株主が、東京地裁に対して、株主総会における検査役選任の申立を行っていることが明らかにされ、同社と一部株主の間におけるバトルが本格化している模様です(注-このバトルの内容や、紛争の対象とされている不動産の権利関係などは、以前からいろいろと話題になっていましたが、ここでは取り上げません)。

株式の帰属をめぐって株主間または会社と株主間で紛争が生じ、議決権行使の禁止が仮処分で争われる、という事例は比較的わかりやすいと思います。しかし、会社自身が、「当該株主が議決権を行使することは、株主共同利益を害するものであり、権利濫用にあたる」として、自社の株主による議決権行使の禁止を求めるような仮処分というのは、あまり聞いたことがないかもしれません。

株主による議決権行使の制限といえば、昭和56年商法改正前までは、株主総会の議題に対して、特別利害関係を有する株主の議決権行使が禁じられていましたが、同商法改正によってこの規定は廃止されています。株主が私利私欲のために議決権を行使することは、むしろ当然のことであり、たとえ議題に対して利害関係があったとしても議決権は制限されてはならないという理由だったと思います(現行法では、特別利害関係者が議決権を行使することで著しく不当な決議がなされた場合にのみ、決議取消事由となる可能性があるだけです)。また、このたびの会社法改正においても、実現はしませんでしたが、会社法制の見直し要綱の段階では、金商法規制違反株主に関する議決権行使の差止請求に関する条文の導入が検討されていました。ということで、株主の基本的な権限である議決権も、その行使が制限される場合がある、という考え方は、あながち間違いではないように思います。

ただ、それは立法論としてであり、解釈論として「株主共同の利益を害する権利濫用」というのは想定されるのでしょうか。株主総会で基準日における株主が議決権を行使することは、株主としての重要な権利行使であることは間違いないので、この議決権が会社法の解釈によって制限される、ということは果たしてありうるのか、という疑問が生じます。この点、過去には、権利濫用として議決権行使が仮処分命令によって制限された事例はあるようです。たとえば国際航業事件決定(昭和63年6月28日東京地裁決定)では、会社が申立人となり、株主に対して議決権行使の禁止を命じた仮処分が下されています(おそらく権利濫用ということで認められたものかと)。

また、株主総会の議事進行を妨害するおそれのある株主に対しては、会社が株主総会への出席禁止の仮処分を命じた例(東京三菱銀行事件-京都地裁平成12年6月23日)などもあります(なお、この事案は相手方株主のブログなどが公開されていますが、そこで公開されている事件の概要からしますと、かなり特殊な事案だと思われます)。

なお、会社が株主の議決権行使の禁止を求める仮処分の前例があるとしても、満足的仮処分に該当するはずですから、被保全権利や保全の必要性については厳格に審査されるように思います。保全の必要性については、上記ソーエコさんのリリース等でも詳細に述べられていますが、被保全権利はどうなっているのか、よくわかりません。会社法では議決権行使を差し止めることができるような規定はありませんし、総会決議取消権についても、会社自体には決議取消訴訟における原告適格は認められていません(国際航業事件や三菱東京銀行事件でも、このあたりは明確にはされていないようです)ので、仮処分命令申立事件の被保全権利は一体何なのか、釈然としないところがあります。

このように会社と一部株主との間で、議決権行使の是非が問題となっていますと、株主総会当日の議事進行についても影響が出てくるかもしれません。たとえば議決権行使の判断については議長に権限がありますので、総会議長が適正な議事進行を行っているかどうか、検査役を選任してチェックをしてもらいたい、というのが株主側の意向だと思われます。ただ、過去にも、こういった検査役選任が権利濫用に該当する、として検査役の選任を認めなかった事例もあるようなので(岡山地裁決定昭和59年3月7日)、会社側としても、こちらも争う、ということになるのでしょうね。いずれにしましても、株主総会シーズンに入り、こういった紛争は、企業法務的には興味深く見守りたいところです。

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