- 2014年06月16日 12:42
関係機関と法の谷間で。児童の所在不明問題について
アビタス米国弁護士コース担当の坂本です。
先月、神奈川県厚木市のアパートで、当時5歳だった男児の遺体が見つかり、父親が保護責任者遺棄致死罪容疑で逮捕されたという、痛ましい事件が発覚しました。
報道によれば、2014年5月22日に児童相談所の職員が警察署を訪れ、「今年4月に中学校に入学する男児が入学していない」と通報。捜査の過程で、父親立会のもとアパート室内を調べ、身長約1メートルの白骨化した遺体が発見されました。
これを受け、神奈川県で所管する児童相談所で対応した約3000人の子どもの調査をしたところ、10日午前中の段階で所在が確認できない子どもが51人おり、うち39人が虐待を受けていたとのことです。
このように、公的機関で児童の所在が確認できないという、所在不明児童の問題が表面化しています。
2012年5月時点の文部科学省の調査によれば、一年以上居所が不明の児童の数は、【976人】。約1,000人もの子どもが、1年以上所在が不明となっているのです。しかも、その中に虐待等の被害児童がかなりの数含まれている可能性が、指摘されています。
ただ、現行制度上、このような所在不明児童の情報を把握し、必要に応じた保護を行うことは、なかなか困難です。
まず現行制度では、居所などの児童の所在情報に関するについては、
・住民基本台帳(住民基本台帳法:地方自治体/総務省)
・学齢簿(学校教育法:教育委員会/文部科学省)
を中心に情報が管理されています。
しかし、学齢簿は住民基本台帳を前提に作成されるため、例えば転居の際、住民登録を変更しなければ、適切に記載されません。(学校教育法施行令参照)
その他、虐待など問題を抱えた児童については児童相談書(厚生労働省)、さらに犯罪に関係があれば警察など、多様な機関に情報が分散しています。これらの情報を、関係機関で共有する法的な義務付けはなく、むしろ、個人情報保護などの理由から消極的な例もあります。
情報の不備および分散に加え、DVや厚木の事件のようなネグレクトなど何らかの被害児童を緊急に保護するための制度も、必ずしも十分ではないようです。
児童虐待防止法の改正により、関連職員の立入検査や、裁判所の許可状を得ての臨検や捜索が強制処分として認められています(児童虐待防止法9条等)。しかし、例えば保護者が臨検や捜索に抵抗した際、それらの職員だけでは限界があると思います。やはり、犯罪捜査以外の局面で、警察官による介入を制度化することも検討されてよいのではないでしょうか。
さて、日本では現在、様々な少子化対策が議論されています。将来の日本の人口を考える上では、確かに重要です。
しかし、今危機にある子ども達を救うこと、およびそのための法制度的担保を作ることが、まず優先されるべきではないでしょうか。
≪参考≫義務教育諸学校における居所不明の児童生徒の把握等のための対応について(文科省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shugaku/detail/1331763.htm



