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不妊に悩むカップルは「里親」になることを検討してみては:「施設入所」という社会的課題

ヒューマンライツウォッチ(HRW)がひっそりと骨太なレポートを出していますね。

夢がもてない 日本における社会的擁護下の子どもたち(PDF)

「里親」の比率が少ない日本

親や親族の手で育てられなくなった子どもたち。「児童養護施設」に入所したり「里親」として受け入れられたりするわけですが、日本では諸外国に比べて「里親」の比率が著しく低い現状があります。

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その背景には、「児童養護施設」より「里親」の方が子どもに取って断然望ましい、という態度があります。HRWのレポートから引用。
多くの研究が、施設養育一般を指して、子どもの精神・身体・知能・言語の発達が被る悪影響の一因だとする[96]。多くの子どもが実家庭の虐待やネグレクトが原因で施設に委託されているにもかかわらず、施設養育が悪影響を及ぼし、子どもの受けたダメージを深刻化しかねないのだ。

英国ノッティンガム大学で法心理学・児童保健学を教えるケヴィン・ブラウン教授は「『質の良さ』がはっきりしている入所型養育施設でさえ、子どもの人間関係形成能力に一生を通じて有害な影響を与える」と論じる[97]。里親養育は施設養育よりも、子どもとの間により深く持続的で一貫した関係を築くことが可能である。
「有害な影響」とはなかなかショッキングな言葉です。レポートに詳しく記載されていますが、特に日本の施設は「職員配置の面でヨーロッパや北米の児童養護施設と比較して圧倒的に劣る」「プライバシーがない」「いじめ・虐待」なども見られると、HRWは指摘しています(ちなみに、児童養護施設の支援を行うNPOも存在しており、3keysLIPブリッジフォースマイルなんて団体が有名です。ぜひ関わってみてはいかがでしょうか)。

そんな課題は日本政府も認識しており、里親の比率を高める動きを始めているとのこと。
日本政府は2011年に、社会的養護のバランスを変え、今後10数年間で本体施設(新基準は45人以下)、施設の運営によるグループホーム、里親(ファミリーホーム含む)でそれぞれ3 分の1 にするとの目標を掲げた[103]。この方針に沿い、多くの大舎施設でユニット化、グループホーム化に向けた新築や改築が進められている[104] 。
そんな課題は日本政府も認識しており、里親の比率を高める動きを始めているとのこと。

里親制度の問題点

しかしながら、里親制度にも問題点があり、稀な事例ではありますが、里親が里子を殺す事件も起こっています。
最悪の場合、里親委託下の子どもが死亡する事件も(極めてまれではあるが)起きている。

2010年に東京都杉並区で起きた事件はマスコミの大きな注目を集めた。2010年8月23 日、午後5時30分頃から午後10時45分頃までの間に、里親の鈴池静被告が里子の渡邉みゆきちゃん(当時3歳7カ月)の頭や顔を繰り返し殴打したとされる。多数の挫裂創傷等を受けたみゆきちゃんは、8月24日午前2時頃に死亡した。

里親による傷害事件は、ここ数年でほかにも複数が報道されている。

2009年2月、北海道在住の里親、根本靖子容疑者が里子の女児(7)の首にピンを突き刺したとして逮捕された。子どもは全治2週間の傷を負った。裁判所は根本被告を傷害で有罪とし、罰金刑の判決を下した。

2009年5月、大阪市の里子の女児(5)が、里親の吉村陽子容疑者により全治6カ月の重い裂傷を負わされた。大阪地方裁判所は吉村被告に懲役 3年(執行猶予5年)の有罪判決を言い渡した。
里親委託が進まない理由については「現在の社会的養護の中心は施設養育とされており、そのような運用が長年続いてきたこと」「里親への十分な支援と効果的なモニタリングがないこと」「児童相談所の職員数不足と専門性の欠如」の3点が指摘されています。里親による虐待などは、2番目、3番目の課題が原因になっているのでしょう。

不妊治療に悩むカップルは「里親」になることを検討してみては

レポートはかなり骨太なのでこのくらいにして、本題を。

ご存知の通り、「不妊」は日本における大きな問題となっています。サイバーエージェントのように「不妊休暇」を制度化する企業も現れているくらいです(#IVS 妊活も支援!サイバーエージェントの人事制度「マカロンパッケージ」が面白い:「成長企業の組織・チーム作り」)。

単刀直入にいって、不妊治療に悩んでいるカップルは、里親になることを検討してみてはいかがでしょう。

無論、里親になるという選択は容易ではないですし、レポートを読んでいただければ分かるとおり、それ特有の困難もあります。そうした困難に向き合う前提で、選択肢として「里親」を考えてみてはどうでしょうか、ということです。

デリケートな話題なのであんまり盛り上がっていない感じがしますが、「不妊で大変な思いをしているので、里親になる」というのは、局所的に見てもマクロで見ても、合理性のある話です。実際、そのような選択を取る方々も数多くいらっしゃいますし、体験記の類も山ほどあります。
私たち夫婦が里親になり1年が過ぎようとしています。息子との出会いはちょうど1年前、運命の出会いでした。

私たち夫婦は6年に及ぶ不妊・不育治療をしてまいり2度妊娠に至りましたが流産、子どもを抱くことはできませんでした。 医師からも今後の妊娠・出産は厳しいことを告げられました。

~里親養育体験記~
「里親になる」というのは、個人としても幸せになりえる選択肢ですし、里親を増やしていくというのは、国レベルでも求められていることです。

ただ、その割に、なんだか「里親」は語られざるテーマみたいになっている気がするんですよね。本来これは、もっともっとカジュアルに語られるべき話題だと思うのですよ。

タブーっぽくなっている現状が続くのは、子どもたちにとってもよくないわけですし。「里親/里子になるのは特別なこと」という認識を、せめて社会の側から過去のものにしていかないといけないと、勝手に思っているのです。

とはいえ、里親をもっとカジュアルにしていくためには、まず制度的、そして精神的・価値観的なハードルがあるでしょう。

関係しそうなところとして、最近ぼくがハマっているお釈迦様は、「子どもは、"自分の"子だと思わず育てなさい」と語っています。
慈しみとは「この子は私のものではない。地球上に生まれてきた大事な人間です。この子が間違いを起こさず幸福でいてほしい。責任感のある立派な人間に育ってほしい」という気持ちのことです。

リンク先を見る一生役立つブッダの育児マニュアル―親の「どうしたら?」と子供の「どうして?」に答えを出します (シリーズ心を育てる本25)
posted with ヨメレバ
アルボムッレ スマナサーラ,日本テーラワーダ仏教協会パティパダー編集部
日本テーラワーダ仏教協会
2004-08-30
ぼくは里子でもありませんし、子どもについても妻が妊娠して産みました。うちはそうやって子どもを授かったわけですが、それは別だ、「理想」「普通」ではないとも思っています。

どんな子どもも、人類レベルで見れば平等な子どもであるわけです。子どもは子どもなんですから、「自分の子どもだ!」というこだわりを強く持ちすぎるのも、問題の源になりえます。そういうお釈迦様的スタンスは、里親制度をカジュアル化させるためのヒントになりそうです。

と、サクッと書くつもりが長くなってしまいました。まずはぜひHRWのレポートをご覧ください。一冊の本くらいの重みがあります(この手の情報って本で買うと高いので、ある意味お得です)。色々課題に触れると、価値観が否が応でも変わらざるをえませんから。

夢がもてない 日本における社会的擁護下の子どもたち(PDF)

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