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ニートは、新しい「福祉」課題~それは雇用対策ではない

■「35才」の161万人

最近、ニートが3万人減ったと話題になっている。政府の2014年版「子ども・若者白書」がそのネタ元で、15~34才の子ども・若者の内、2012年は63万人だったニート数が、2013年に60万になったという(こんな記事とか参照「ニート、60万人に減少 子ども・若者白書 」)。

これに対してはどうやら大反論が沸き起こっているそうで、たとえばこの記事(政府発表「ニート3万人減少」に批判大殺到 「しょぼいごまかし」「手柄を捏造するな」)にあるように、ニートの上限年齢「34才」がポイントだという。

いまの15才は少子化が始まったあたりの年齢であり、その年齢の人口は118万人いる。

これに対していまの35才は、団塊ジュニア世代の最期のほうに当たるためボリュームはまだ大きく、その年齢の人口は161万人もいる。

ニートは定義上34才までなので、35才になった161万人中の何人かのニートはここには含まれない。15~34才の若年無業者の割合は2.2%らしいので、これを35才年齢にも当てはめてみるると、161万人の2.2%は3万5千人程度となる。

この3万5千人が2013年の63万人に含まれているとすると、それが1年経って定義上ニートではなくなったわけだから、まあ60万人程度にはなるだろう(素人計算なので間違ってたらごめんなさい。でも、63万から3万5千を引くと59万5千人のはずなのに60万人なのは、新しい15才のニートが案外いるのか、全世代にわたってプチ増加しているのか?)。

■「当たり前」

ニートが日本に翻訳輸入された2003年頃から支援してきた僕にとっては、これは肌感覚で「当たり前」の話であって、もっというと3万人減ろうが3万は統計マジックだろうが、40代半ばころまでの「全世代」を含めると、増えることはあっても減ってはいないのではないか? と根本的に思っている。

だから上の「しょぼいごまかし」記事ほど怒りを覚えることはない。

まあ、15~34才という「限られた」年齢区分で見ると、だいたいそんなもんだろうというのが実感なのだ。

そうはいっても、現在話題になっている「ひきこもりの高齢化」と合わせて考えると、この34才(あるいは地域若者サポートステーションの対象上限年齢である39才)という区分はもっと真剣に見つめなければならないとは思う。

昨日も僕は某市役所において「45才ひきこもり息子と80才母親」の「自立」についての相談を受けたが、この年齢になってくると、親自身の資産や年金、子どもの社会保険や「障害者年金」の可否といった、いわば「高齢ひきこもり(あるいはニート)のファイナンシャルプラン」というシビアな問題と直面し始める。

が実は、こう書くとシビアに映るかもしれないが、当人たちからすれば「どうやって今後の生活費を確保するかという」極めて具体的な話題になるので、案外さっぱりしている。ここまで問題が突き詰められていない場合は、本人の「心理的」問題や「就労体験」問題を見つめてそこを支援するという方向になるし、相変わらず親の子育ての仕方といった今更考えてもそれほど変化も期待できないことを当事者たちは要求される。

そうしたことに比べれば、「高齢ひきこもり(あるいはニート)のファイナンシャルプラン」は、その重さを一旦引き受けてしまえば、問題がクリアであり、逆にさっぱりするのだ。

■ニートは減ってない

高齢化の問題はさておき、僕が一番重要だと思うのは、「ニート数はこの10年でほとんど変化がない」という事実だ。

この厚労省のページを見ると(若者雇用関連データ・ニート状態の若者の推移)、2002年(平成14年)の64万人に始まり、あとは64万~60万のなかで推移している。

上に書いたように、この10年で少子社会となり団塊ジュニアが40才を迎えようとしているのに(つまり大きな人口ボリュームである団塊ジュニアが定義上ニートではなくなったというのに)、その数はほとんど変化がない。

一方で、「若者自立塾」(2005~2010)、「地域若者サポートステーション」(2006~)といった国から委託され主としてNPOが運営するニート支援機関は、サポステを中心としつつ途絶えることはない。

「高齢化」の問題も含め、現実に我が国には「若者問題」が大きく存在し、それの解決へのニーズが常在し、そのニーズに対するサービスも年々洗練されている(ように見える)。

要するに、ニート的若者は若干の割合数の変化を伴いながらも、その数自体は一向に減ってはいない。そして、この問題に対して行政がサポっているかといえばそうでもなく、それなりの予算をかけて対策し続けている(それも、自立塾をやめてサポステ中心のシステムに切り替えるなど、かなり柔軟に対応している)。

それでも、ニート数はドラスティックに減ることはなかった。

■「減らない」種類の問題

対策してもそれほど減らない。要するにこれは、「減らない」種類の問題なのだ。

社会には一定数存在し続け、その問題に対する対応を求める声も一定数存在し続ける。そしてそれを行政予算を元に対応していく。そういう種類の問題だということだ。

つまりこれは、「福祉」の問題なのである。障がいのような定義上明確な対象ではないかもしれないが、「恒常的に行政予算が必要な」問題であり、継続的にその「サービスの質を維持しつつできればその質を上げる」問題なのだ。

このサービスの質には、「クォリティ・オブ・ライフ」的側面(ケアの質)と、「システムの変革」的側面(制度)が含まれる。

いずれにしろ、これだけ取り組んできて一向にその数が減らないのだから、これはもう単なる「雇用対策」ではないし、社会構造(生産労働人口の確保)維持が目的だけの問題でもない。

これは、しんどい人を、どう継続的に支援していくかということが問われる「福祉」の問題であり、こう考えると「5年かけて丁寧に支援していくとやっとアルバイトできた」というエピソードにも、諸手を上げて「成功」のサインを書くことができるだろう。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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