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震災・原発報道の陰で続く「沖縄差別」の構造 - 岡留安則

 東日本大震災による巨大津波と福島第一原発からの大量の放射能流出という大惨事ですべてがチャラにされた。天変地異の大災害には誰も勝てない。特に外国人からの献金問題が発覚して辞任問題に発展しそうだった菅総理、沖縄に対する暴言問題で国務省・日本部長を解任されたケビン・メア総領事に対する追撃記事がすっかり鳴りを潜めてしまった。悪運の強い二人である。「悪い奴ほどよく眠る」という言葉を思い出すのが関の山だ。

 むろん、この二人だけではない。天災としかいいようのない大地震の方はともかく、原発施設の崩落、爆発による放射線漏れは明らかに人災である。東京電力、経済産業省原子力安全・保安院、歴代の自民党政権、官邸、原発御用学者、大手メディアがこの人災のA級戦犯である。すでに、スリーマイル島の原発事故を上回るレベル6というのが国際的認識だ。今回の原発事故からすでに20日間近くが経過したが、放射性物質は被災地だけではなく、東京の浄水場にまで及んでいる。東北・東関東の野菜や牛乳からも汚染が検出された。海にも大量の放射性物質が流れ込んでおり、いずれ魚介類の汚染で漁業の方も壊滅的打撃を受けることは確実だろう。福島第一原発はいまだに予断を許さない状況が続いているが、最悪の場合はチェルノブイリ以上の大事故に発展する可能性も否定できない瀬戸際だ。

 「原発は安全」という神話をまき散らしてきたA級戦犯たちは打ち首ものである。石原都知事の「天罰」発言はこうした連中にこそ向けるべきだった。にもかかわらず、情報を隠すだけではなく統制し、御用学者たちも口をそろえて「人体に影響はない」を繰り返す。そんな妄言を誰が信じるというのか。ミリシーベルトで言えば、一年間海水を飲み続けても問題ないと豪語する。海水を一年間も飲み続けるバカがいるというのか。そのくせ、やましさがあるのか、幼児には水道水を使わないように通達を出す。場当たり主義の原発事故対策しかやっていないのだから、こうしたチグハグな判断が出てくる。念の為にという事で、福島第一原発から20キロ、後に30キロまで拡大した避難地域に関しても、現在はどのくらいの放射性物質が流出しているのか、いっさい公表しないのだから、一時帰宅を希望する住民たちに対しても的確な方針が出せないのだ。

 あ、この連載は、沖縄からの発信だった。怒りのあまり原発批判に走ってしまったが、ケビン・メアのその後に話を軌道修正したい。解任されたはずのケビン・メアが、今回の大震災における米軍と日本政府の調整担当に任命されたのをご存じだろうか。「火事場ドロボー」のような節操のない米国のやりくちだった。反省ゼロ。それは、菅総理も一緒で、参議院の問責決議で「処分」されていた仙谷代表代行と馬淵国土交通大臣を震災対策で現場に呼び戻した。危機対策の一言で、最低限のルールである政治倫理すらも吹っ飛ばしてしまった。それが国家であり、政治の本性といえばそれまでだが、完全に民意を無視したやり口が許されていいのか。

 今回の東日本大震災で、米軍が被災地支援で政治的プロパガンダを行使し、一部で批判を浴びた。まさに「火事場ドロボー」みたいなものだ。その代表格は、普天間基地の海兵隊が支援物資を空輸したことをアピールするあまり、「普天間飛行場の死活的重要性が証明された」と強調したことだ。「沖縄に海兵隊はいらない」という沖縄県民の意思を完全に無視した、米軍の「宣戦布告」は沖縄県民の気持ちを逆なでした。この救援活動の背後には、「沖縄はごまかしとゆすりの名人」「沖縄人は怠惰でゴーヤーも栽培できない」と言い放ったケビン・メアが暗躍したことが容易に想像できる。

 沖縄の地元紙は東日本大震災が発生した直後から極太見出しと見開きページで震災関連記事を大々的に報道していた。しかし、数日後にはこのケビン・メアに対し、「メア氏更迭 『舌禍』への怒り」「差別の深層を解く―メア氏発言と日米沖」といった囲みの連載も同時進行で掲載されていたことは全国的に知られていないだろう。メア氏が調整担当に就任したことに対しても仲井真知事に「おかしなこと」と批判させるなどのキャンペーンをはってきた。特に普天間基地を抱える元宜野湾市長の伊波洋一氏などは、元沖縄総領事だったメア氏とのこれまでの交渉の舞台裏も公開していた。伊波氏は、メア氏には普天間基地の移設が進まず、いらだちがあったのではないかと分析し,「メア氏の姿勢は辺野古移設を県民に押し付けることに終始した」とも語っている。そして、米国がメア氏を更迭したことは、米国が辺野古基地移設を強行するための措置だと警鐘を鳴らしている。

 おそらく、本土メディアも全国紙もメア問題は大震災報道で吹っ飛んでしまったのだろうが、「ごまかしとゆすりの名人」などと決めつけられた沖縄県民にとっては到底許すことのできない発言だったのだ。民主党執行部も、このメア発言に対しては見て見ぬふりをしている。先の鳩山前総理の「方便」インタビューと同じく、日米関係の根幹にかかわる問題だけに、無視して「なかったことにする」方針なのだろう。大震災政策でも、メチャクチャな政治をやろうとしている菅政権に対して沖縄県民は完全に絶望している。本土メディアの他人事という姿勢に対しても、同様だ。

 最後に、こうした本土メディアと沖縄の地元メディアの基地問題に関する温度差の本質について、4月16日午後2時より、朝日新聞福岡本部で労働組合西部主催「全国メディアの沖縄報道を考える」と題して対談をやることになっている。相手は『砂上の同盟』の著書もある沖縄タイムスの論説委員の屋良朝博氏。福岡地方にお住まいの方で興味のある向きは、一般参加も自由なので西部本部の組合に会場を確認の上、ご参加下さい。

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