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大地震・津波・原発――メディアは使命を果たしたか - 柴田鉄治

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 東日本を襲った巨大地震と大津波で沿岸地域は壊滅的な被害を受け、死者・行方不明者は3万人を超えた。また、福島原子力発電所が炉心溶融や爆発を繰り返して制御不能の状態に陥り、周辺に放射能を撒き散らして住民に被曝者まで出るという深刻な状況になっている。未曾有の大災害である。

 どんな事件であれ大事件が起こると、それが大きければ大きいほどメディアの役割も大きくなる。俗に言う「みんながメディアにかじり付く」状態になるからだ。メディアと受け手との間の距離も縮まり、メディアに対する期待が大きく膨れ上がると同時に、メディアへの不満や批判も一段と厳しくなるものである。

 今回の大震災に対するメディアの報道はどうであったか。地震災害だけでも未曾有の規模なのに、原発事故という理解しにくい新たな状況が重なって、メディアの役割がいっそう重要になったときだけに、その使命を果たしたといえるのかどうか厳しく問われるところである。

 事態はなお流動的であり、いまはまだ詳しく検証する段階ではないが、発生から2週間余をすぎたこの時点で、私なりに感じたことを報告しておきたい。

「地震の巣」で起こった巨大地震



 まず地震について。今回のマグニチュード9・0の地震は、エネルギーの大きさでは関東大震災のざっと40倍、阪神大震災の500倍もある巨大地震で、日本を襲った地震としては最大級のものである。しかし、想定外の地震だとはいえない。

 地震には二種類あって、阪神大震災のような「直下型」と関東大震災や今回のような「プレート型」「海溝型」と呼ばれるものだ。日本には直下型の原因となる活断層も多いし、海溝型の原因となる巨大岩盤のプレートが4つもぶつかり合っている地域にあるため、もともと世界有数の「地震国」なのである。

 今回の震源は、太平洋プレートと北米プレートがぶつかっている「地震の巣」で、これまでにも三陸沖、宮城県沖、福島県沖などと何度も聞かされた場所であり、その何個分かが一度に起こったような巨大地震だったのだ。

 これまで地球で起こった最大の地震は、1960年のチリ地震だといわれている。マグニチュード9・5、エネルギーにして今回より10倍も大きい巨大地震で、地球を半周して日本にやってきた津波が140人余の命を奪ったほどだ。そのほかマグニチュード9を超える地震は何回か起こっているのだから、いつか日本近くで起こってもおかしくないと予測されていた範囲内のものだったといっていいだろう。

 地震の被害は、起こった場所と時刻によって異なる。関東大震災は昼食前の火を使っていたときだったため火災で死んだ人が10万人を超え、阪神大震災は夜明け前の就寝中だったため逃げ遅れた人が多かった。今回の発生時刻は、人命被害の最も少ないはずの時刻だったのに、そうはならずに津波のため大変な犠牲者が出た。

 地震が起こってから津波が来るまでには30分くらいの時間があったのになぜなのか。メディアの伝達に問題があったわけではない。どの電波メディアもいち早く地震発生と津波警報を伝えている。それに、50年前のチリ津波とは違って今回は、大地震という「津波の前触れ」があったのである。あれだけの地震を体感した沿岸部の住民が「津波はどうか」と考えなかったはずはない。

 それでも逃げ切れなかった人が多いのは、津波が予想以上に大きかったこともあるが、人々の大地震に対する心の備えに油断があったということだろう。その点では、メディアの責任も決して小さくはないと私は思っている。

「次は東海地震」の風評が油断させた?



 というのは、いまから33年前、1978年に大規模地震対策特別措置法(通称、大震法)が制定されてから、次に日本で起こる大地震は「東海地震だ」という風評が広がってしまったからだ。

 東海地震というのは、駿河湾付近を震源とするマグニチュード8クラスのプレート型の巨大地震で、安政東海地震(1854年)以来120年余も起こっていないので「あす起こってもおかしくない」という学説が出たため一躍、注目を集めたものだ。

 地球物理学の進歩でプレート型地震の研究が進み、直下型とは違って100〜200年の周期で繰り返すことが分かってきて、観測網を集中すれば予知ができるかもしれないという期待が生まれ、予知できた場合の手順を決めたものが大震法である。

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