「日本市場では、先進主要国に比べて、個人が個人投資信託を買付け、ならびに保有する際に投資家が負担する費用の高さが指摘されている。その背景として、販売会社の営業員に対するインセンティブが投資信託の買付時に投資家が負担する手数料収入に依存する傾向にあることが挙げられる」(「個人資産軽視の拡大に向けての提言」より)
楽天証券が中心となってつくる民間グループが、「個人資産形成の拡大に向けての提案」という、国内の投資信託の販売手数料の不透明さなどを問題視する提言をまとめました。
面白いところは、販売時の手数料を取らないノーロード商品を取り揃えているネット証券が、投資信託の販売手数料の高さや不透明さを問題視したところです。ビジネス的にいえば、リアルの証券会社が高い販売手数料を取れば取る程、ネット証券は有利な立場に立てるように思えるのですが、実際にはそうなっていないのかもしれません。
さて、いま、投資信託を購入する際には、最大3%ほどの販売手数料がかかります。この投信の販売手数料というのは、約款の中で販売会社が3%以内で決定し徴収できると定められているもので、一律幾らと決められたものではありません。その投信を販売する会社が自由に決定出来る決まりになっていますから、同じ投信であっても販売会社によって販売手数料が異なる「一物二価」ということもあり得るのです。
また、販売手数料は販売会社が決めて、販売会社が徴収するものですから、運用会社には一銭も入りません。
投信の販売手数料を決定し、徴収しているのは販売会社ですから、それを直接的に是正できるのは販売会社以外にないと言えます。しかし、個人的見解でいうと、高い投信の販売手数料を引下げて行くためには、個人投資家の認識も切り替える必要があるように思います。
切り替える必要があるのは「情報」に対する認識です。
投資家にとって、投資信託の販売手数料は高いものに映るかもしれません。では、何故高いのかというと、その一つの理由は、販売会社がタダで提供した「情報」の料金を回収しているからというものです。販売会社は個人投資家を「貯蓄から投資へ」誘うために、無料セミナーを繰り返し開催しています。時には講演料の高い有名人を呼んで参加者を集めたりもしています。
投信の主要投資対象である企業経営の分野では、「所有」と「経営」の分離が進んで来ていますが、投信ビジネスの分野では、「情報」と「販売」「運用」の分離は進んでおりません。
無料ビジネスといっても全てがタダということではなく、どこかでそのコストを吸収しています。ネットゲームなどであれば広告収入やアイテム課金、携帯端末なら月次の通話料などでコストを回収するのが一般的です。しかし、中途解約が頻繁に行われる投信ビジネスでは、ビジネスモデル上、無料で提供した情報のコストを販売手数料で回収して行く以外にないというのが現実です。
記事
- 2014年06月11日 17:02