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リビアで今、起こっていること - アーデル・スレイマン

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40年以上にわたって独裁政権が続いていた北アフリカ・リビアで、今年2月、大規模な反政府デモが発生。動きが急速に拡大する中、政府による武力弾圧で多くの犠牲者が出ていると伝えられ、国際社会からは非難の声も高まっています。

では、そのリビアとは、そもそもどんな国だったのか?人々はなぜ今、何を求めて立ち上がっているのか?日本人の母親とリビア人の父親を持ち、少年時代の多くをリビアで過ごした、アーデル・スレイマンさんに語っていただきました。

リビアは暮らしやすい国だった



僕の父親はリビア人で、母親が日本人です。生まれたのは日本なのですが、父親の仕事の関係で6歳のときリビアに移り、19歳までそこで暮らしていました。高校を卒業した後、日本のNGOで働くために今度は1人で日本に来たのが2006年のこと。今は通信社でアラビア語の通訳・翻訳をしながら、大学にも通っています。

僕の知っているリビアは、もちろんその時期によって違いはあるけれど、安全だし、人もいいし、本当に暮らしやすい、住みやすいところでした。今も、もちろん大好きな国です。

僕が初めてリビアに行ったのは1994年ごろで、国連による経済制裁のさなか。首都のトリポリでさえ、まだ高いビルは数軒しか建ってないような状況でした。モノも不足していて、砂糖や油など配給制のものもあったし、ジュースや煙草などの日用品もとても高かったですね。

その後、徐々に市場経済が導入され、1999年に経済制裁が解除されると、徐々に経済発展も進んでいきました。街にビルが次々建ったり、高い外車に乗る人が目立つようになったりして。一方で、政府にコネのある人間だけがお金持ちになっていったりと、貧富の差が急速に拡大した面もあるんですが…。ただ、どちらにしてもそれで「食べていけなくて飢えている」人がいるような状況ではなかったと思います。

僕が子どものころには、学校でも厳しく「反米」を教え込まれたりしたけれど、経済制裁が解除される少し前から、それも少しずつ変わっていきました。なんとなくちょっと政府がアメリカに接近しつつあるのかな、という雰囲気は感じていたし、現在のリビア国民のアメリカに対するスタンスもさまざまだと思います。

アメリカの政府については、たしかに嫌いな人が多いです。特にイラク戦争やアフガン戦争のときにはリビアも空爆を受けましたから、その意味での「アメリカ」に対する敵対感情は強いでしょう。でも、アメリカ政府とアメリカ人は別だ、とちゃんと考えている人もたくさんいます。そもそも、みんなアメリカの音楽は聴くし映画も見ますからね。

そう、映画や音楽については、基本的にいっさい制限がありませんでした。インターネットも普通に使えるので、海外の情報はちゃんと入ってきていたんです。海外のテレビも見られて、時間によってはNHKのBS放送も見られた。他の締め付けが厳しい分、そういう部分では自由を与えて、国民の不満が溜まりすぎないようにしていたという感じ。そこがサダム・フセインなんかとカダフィの違うところですね。

※国連の経済制裁…1988年、イギリス上空を飛行中だったパンアメリカン航空の航空機が爆発・墜落する事件が発生。のちにリビア政府の関与によるテロ事件と断定され、リビアは1999年まで国連による経済制裁を受けた。

西洋的な「自由」はなかったけれど



もちろん、何も問題がなかったわけではありません。公の場で政府を批判することは厳しく禁じられていたし、メディアにも基本的に政府批判はいっさい載りませんでした。革命直後のころのように「政府批判を口にすれば即縛り首」という時代ではないので、友達同士で話しているときに「カダフィはダメだ」みたいな話をすることはあったけれど、それを公に口にすることはありませんでしたね。1996年には、刑務所に収容されていた政治犯1200人が、突然軍によって虐殺されるという事件までありました。

それに、「人民主権に基づく直接民主制」だというけれど、国民に決定権があるのは小さな問題だけで、国政にかかわるようなことにはまったく関与できない。そもそも、政府が何をやっているのか、何をしようとしているのかも、リビア国民にはまったく知らされないんです。2003年に「核兵器の廃棄」が発表されたときも、国民のほとんどの反応は「核なんて持ってたの!?」でしたから。

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