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児童ポルノ法に関する発言を巡るいろいろなこと

 さる6月4日、衆議院法務委員会にて「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案」(いわゆる「児童ポルノ法」の改正案)の委員長提案の動議に関して発言を行いました。その内容はBLOGOSにおいて主要部を掲載して頂いています。これに関していささかの反響を頂き恐縮しています。いくつか思うところを補足したいと思います。たかだか20分の質疑を行うだけでも、言葉として口にはしなくてもこのくらいのことは考慮しているということを感じていただければうれしいです。

 まず、児童に対する虐待は多くの場合刑法上の傷害罪や強制わいせつ罪、強姦罪などにあたります。さらに児童虐待防止法があり、保護者による暴行、わいせつ行為、育児放棄、暴言、絶食、配偶者間暴力等心理的外傷を与える暴力まで、禁止されています(ただし児童虐待防止法は虐待に対する行政の対応を定めたものであり、虐待そのものに対する刑罰はありません)。一義的にはこれらの法律によって規制され防止されるべきものです。

 その上で「児童ポルノ法」が存在する意味は、その商品的価値により児童虐待が誘発されることを防ぐためだと僕は思います。だから「買春の実行、周旋、勧誘」および「ポルノの所持、提供、製造」が罰則つきで禁止されているのであり、虐待そのものではなくその誘因となる周囲に対して罰則つきの規制対象を拡大することが本法のポイントなのです(もちろん、児童買春の実行や児童ポルノの製造は、同時に刑法犯となる場合も多いと思います)。「児童ポルノ法では虐待は防げない」みたいな議論を見かけますが、刑法等と組み合わせて考えて頂くべきことですし、「暴力的虐待」の画像等は「性的虐待」の画像と比較してネット等での流通量がそもそも少なく、画像の所持や製造等を規制しても虐待を減らす効果が期待できません。当然ながら明らかな刑法犯として取り締りの対象となる行為の動かぬ証拠となる画像を流通させる人もあまりいません。そのために本法の対象となっていないものと思います。

 その上で「マンガ、アニメ、CG等の児童ポルノに類するもの(以下マンガ等)」をどう扱うかで大きな議論があります。まず一点確認したいのは、昨年提出され今回の改正案に際して撤回された改正案(自公維案)もマンガ等を規制するものではなかった、という点です。質疑の際に読み上げた通り「政府はマンガ等と児童虐待の関係性を調査する」という検討規定に過ぎませんでした。ですから「不当に表現の自由を規制するものだ!表現者を萎縮させるものだ!」という真正面からの主張に対しては「いやいや、何の規制もしていません。関係があるかないかわからないためただ調査するだけですから、ご指摘は全く当たりません」という肩透かし的反論が成り立ちます。正直、論壇からの反論は過剰に大袈裟に過ぎ、かえって効果の薄い議論が多いと思っていました。マンガ等に関する法改正に反対された方々も自分の胸に手を当てて考えて頂きたいと思います。考えの違う人に対する反論は、自分の言いたいことを大声で言えばよいというものではなく、相手の心に届くものでなければなりません。さもなくばただの味方向けのパフォーマンスに見えます。

 ですから僕は、調査することの妥当性について議論をすることにし、対照との比較調査の困難さや因果関係と相関関係の鑑別の困難さ、そして「政府が調査する」こと自体のインパクトを問題にすることにしました。一応学生時代から社会調査法の授業を受け、多少の実施経験もある身としては、発言したような問題はすぐ頭に浮かびました。また世論誘導のための調査や実施そのもののインパクトを狙った邪道な調査の存在は常々苦々しく思っており、日本国憲法に次ぐ高い地位を持つ社会規範である法律でそんな邪道なものを規定するなんてもっての外!という思いもありました。個人的にはこの思いがこの項目に反対した最大の理由かもしれません(こんな感覚は調査屋経験のある立法屋なんていう珍しい人しか共感されないだろうなあ…)。

 なお「検証されていない仮説に基づく立法・仮説はすべきでない」といささか大見得を切りましたが、本当はこれは「原則として」という言葉があるべきです。「検証されない」ことを理由に規制が遅れ、その結果として被害が拡大してしまった、後で原因が判明して公害や薬害と呼ばれるに至った事象を、私たちは過去にたくさん経験しています。伝染病の拡大など一刻を争う事態もあり得ますから、場合によっては検証されなくても迅速な規制が功を奏することもあるでしょう。一方で、法律等による規制は何の根拠もない恣意的なものであってはならないのも当然なことであり、どちらが優先されるかは因果関係の推論の確かさや被害拡大の急激さや深刻さ等を勘案してケースバイケースで検討されるべきことだと思います。その上で私は今回の場合は、マンガ等の規制と児童虐待との因果関係はいまいち明らかではないため、原則によるべきという立場に立ったわけです。

 逆に言えば「マンガ等と児童虐待は無関係である」という立証も誰も行っていませんので、土屋正忠議員の主張にまったく理がないとは言い切れません。実のところ衆議院総務委員会では土屋議員と僕は隣の席で、いつもお喋りしてる当選同期の仲良しです。歳は親子くらい違いますし、特に地方自治の経験は国会議員随一ですからいろいろ教えて頂いています。その上で、それぞれの意見を堂々主張できる個性の強さと、皆の意見を聞いた上で最終的に決まったことには従う謙虚さを併せ持つ人が多いことが、自民党という政党の良いところだと個人的には思っています。ああいう主張を堂々述べた上で改正には賛成したのですから、僕は土屋正忠議員は立派な方だと思います。ただし個人的には正直、「海外からこのような指摘を受けたから」「専門家からこのような提言があったから」という理由での立法は僕は嫌いです。参考意見としてはあり得ますが、我が国の国民を縛る法律なのですから、主にはやはり国内の事象による立法事実に基づき、国会にてその中身が検証され、立法されるべきだと思います。

 なお児童ポルノに類するマンガ等について、発言中にも触れていますが、今回の法改正で検討項目を外したからといって、放置することを勧めるつもりは毛頭ありません。法律に書くべきではないとは申しましたが、マンガ等と児童虐待の実行にどのような関係があるのかないのか、誰か研究者が社会科学的に妥当な方法で調査研究を行うことは支持しますし、結論は参考にすべきです。また公序良俗の維持といった別の観点で、販売規制等を行うことは考えられるかもしれませんし、表現についても、表現者自身が社会に与える影響を考慮してほしいなと思うこともあります。

 最大の問題はインターネットです。書籍等であれば成人コーナーを設ける等適切に入手方法を制限することができますが、ネットにそのようなハードルを設けることは困難です。自民党内の議論でも、児童ポルノに限らずリベンジポルノ問題や3Dプリンターでの拳銃作成など、最近はネットでの違法ないし有害情報の流通をどうにかできないかという指摘が必ずあり、大体僕は弁護側に回りますが、集中砲火を浴び続けるのはなかなかシンドイものがあります。ここは、本当に、利用者一人一人の自覚を強く促します。さもなくば不本意な規制を考えざるを得なくなりかねません。例えばインターネットを使うのに免許証が必要な社会というものを僕はあまり想像したくありませんが、人身事故被害があまりにも多ければ、いつかそんな話にならないとも限りませんよ。このままでは。

 そんなここんなを踏まえ、今回の質疑となりました。なお今回の改正法の衆院通過(および昨年に提出された自公維案の撤回)にあたっては、多くの方がの理解とご協力がありました。特に最大の功労者は、意欲を持って実務者協議を重ね合意形成し各党の党内を取りまとめた衆議院法務委員会の理事(オブザーバー含む)各位だと思います。すなわち吉野正芳、土屋正忠、ふくだ峰之、盛山正仁、大塚拓(以上自民党)、遠山清彦(公明党)、階猛(民主党)、西田譲(日本維新の会)、椎名毅(結の党)の各衆議院議員です。まだ参議院での審議が残りますが、仮に成立した場合、最大の賛辞は上記各氏に捧げられるべきだと思います。ぜひ賞賛してあげてください。これはとても大事なことですよ!

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