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新聞社が教育を商売のネタにすることの意味 - どん・わんたろう

 1月5日付の朝日新聞・朝刊1面に掲載された自社事業の宣伝記事をご覧になっただろうか。「『今解き教室』中高生版を発行」という見出しで、「本紙の記事や写真、図表を活用した総合学習教材の中高生版を3月から新たに発行し、学校や塾など法人向けに販売します」と書かれている。1年ほど前に売り出した小学校高学年向けの教材に触れ、ご丁寧にも、購入している4つの塾の名前まで紹介している。

 同紙関係者によると、新しい学習指導要領に新聞を使った教育が盛り込まれたのを契機として、自らの新聞を利用した教材を作って一儲けしたいのだそうだ。受験勉強に新聞が有用だとあおり、発行部数も広告収入も落ち込むばかりの新聞を少しでも支える事業に育てるのが狙いで、あわよくば将来の読者の獲得につながればという魂胆もあるらしい。これまでも「新聞記事が入試によく出る」なんてPRして新聞の購読を勧誘していたが、一歩踏み出たわけだ。

 教材の営業の中心になっているのが記者出身者と聞いて、驚いた。要するに、自分や同僚が過去に取材した塾や学校、行政などに「あの時はお世話になりました」とか言って、恩着せがましく売り込むってことなんだろう。申し入れられた側は、新聞社の面会を断ると後々記事で嫌がらせを受けかねないと警戒するので、無碍にはできない。多少余裕のある塾だったら、貸しを作るつもりで教材を買うかもしれない。一種の「地位利用販売」ですね。

 改めて朝日新聞を見て、妙に納得してしまった。同じ1面に「教育 あしたへ」なんていう連載が躍っている。2面・3面へ続く重厚長大な記事だ。そっか、教材を売りやすくするためには「教育の朝日」という看板が不可欠だもんな。これって記事と商売を融合しようとする壮大な試みなのか−−。もちろん、強い違和感と共にですが。

 で、連載を読み返してみる。元日付の1回目は記者が唯我独尊に陥っていて何も伝わってこないし、社会保障の問題としか思えない2回目で連載の趣旨が分からなくなる。何より引っかかるのは、全般にできる子や裕福な家庭、勝ち組の大人の登場が目立つこと。3回目で「できる子伸ばせ」と臆面もなく謳い、6回目では30代の千葉市長や世田谷区議をもてはやし、最終回の主人公の20代の女性起業家は「大学3年になるまでは暇さえあれば、サイパン島に出かけ」ていたそうだ。7回目の「貧困救う学びの場」がなければ、上澄みの教育論にしか見えない。

 おいおい、どこ見て新聞作ってるんだよ、と文句を言いかけて気がついた。教材の販売ターゲットはできる子、その中でも有名どころの塾に通えるような裕福な家庭の子どもたちなのだ、と。そこに寄り添う記事を載せなければ、教材の営業に反応してもらえないってことか。いくら貧乏人の目線に立ったって、1銭にもならないもんな。なるほど、とても分かりやすい。

 「記事と商売の融合」が穿ちすぎであることを祈りたいが、私の疑惑は簡単に解けそうにない。なぜなら、哀しいかな、そう捉えられても仕方のない朝日新聞社内の動きを、関係者から聞かされているからだ。

 ある記事面のコンセプトと全く違う連載が唐突に始まるにあたり、「関係する企業から広告を取りたいため」と社内で説明があったそうだ。記者が企業関連の記事のネタの話をすると「それは商売になるのか(=記事をきっかけに広告が取れるのか)」と口癖のように尋ねる出稿部の部長もいるという。少なくとも、社内で、しかも編集現場で、記事と金儲けを同一線上に捉える輩が跋扈していることは確かなようだ。

 一線で奮闘する記者のことを思うとやりきれなくなってくるが、読者からすると冗談ではない。報道機関として、もはや終わっている。「ジャーナリスト宣言」って、そんなに昔のことじゃないよね。

 「『国民の代表』を名乗って取材した記事を、新聞社が自らの金儲けのために利用している」。そんな批判を受けないためには、当たり前のことだが、どこを向いて取材し、誰に向けて記事を書いているのか、紙面で示すしかない。ただでさえ論調や姿勢の変節が著しい朝日新聞。皆さんも今年の報道内容に眼をこらし、社内のおかしな情報があればマガジン9までお知らせください。

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