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中国の圧力が増す南シナ海など。国際法における『法の支配』とは?

アビタス米国弁護士コース担当の坂本です。

国際紛争の解決手法として、改めて、『法の支配』が注目されています。5月30日、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議で、安倍総理大臣が『法の支配』を提唱する基調講演を行ったのです。その内容として、

・国際法に照らし正しい主張をする
・力や威圧に頼らない
・紛争は平和的解決を図る

を3原則として挙げています。これは、南シナ海諸島の領有権争いなどを受け、武力行使の緊張を高める中国を牽制したものと報じられています。

ではそもそも『法の支配』とは何でしょうか?

法の支配とは、領域内において最高かつ他に対して独立な国家主権でも、従うべき『法』があり、属人的、恣意的な権力行使を抑制するという考え方です。

しかし、国家の権力行使を抑制する『法の支配』は、由来において、国家同士の争いを規定する考え方ではありません。

国内であれば、『法の支配』を行き渡らせるために、例えば成文憲法を作り、行政機関の権限を法律で定め、不当な権力行使を裁く裁判所を設け、判決を執行する仕組みを作ることになるでしょう。

もちろん、国家同士でルールを定め、紛争解決を図る試みはあります。国際連合や、国際司法裁判所などの全般的な試みに加え、通商分野のWTOなど、様々な専門分野において、先行して行われています。

領有権争いに対しても、国際司法裁判所の判断を仰ぐという方法があり、同裁判所でも判断の事例はあります。ただ原則として両当事国が付託を求めなければならず、また、判決の執行を担保する手段も、十分に確保されているとは言い難いと思います。

そのため、やはり国際的な発言力、武力、国力がある国の意見が優先されやすい点は否めません。それは決して『法の支配』とは言えません。

このように、国際的に『法の支配』を普及させるには、権利義務について定めた「実体法」の考え方はもちろん、実体法の考え方を前提にしつつ、主張立証方法や判断結果の順守を担保する「手続法」が不可欠です。

ただ、国際法の分野では、事例の蓄積はあるものの、それらはまだまだ体系化され、活用されていないといっても過言ではないはずです。国際法における『法の支配』は、これから発展していくべきと考えるべきでしょう。

その意味では、日本による『法の支配』の提唱は、単なる中国への批判ではなく、地域的な領土紛争解決のルール作りに中国の参加意思があるか、見解を質したものと考えてよいかもしれません。

さて、日本においても、労働関係や反社会的勢力の問題など、『法』ではなく当事者の力関係や情実関係での解決が優先されがちな分野が存在します。

外国で『法の支配』を提唱していくには、国内でも『法の支配』を重視する意識を喚起すべきではないでしょうか。

≪参考1:アジア安全保障会議安倍内閣総理大臣の基調講演(官邸HP)≫

http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0530kichokoen.html

≪参考2:主な国際裁判所(外務省HP)≫

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/shihai/

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