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「官僚」がよくわかる本 - 芳地隆之

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 「ミスター文部省」あるいは「ゆとり教育の提唱者」として世間に知られる著者は、冒頭、「官僚は『犬』である」と挑発的な表現を使う。読む方は「政治家や上司に尻尾を振って媚を売る役人」といったイメージを思い浮かべてしまうが、その肝は次のような文章にある。

 「本来犬は、ご主人様が見ていないところで悪いことが起こったときのために飼ってあるのではないでしょうか。今のように不景気で税収が不足しているときにこそ、官僚は喜んで仕事をしなければなりません」

 官僚は縁の下の力持ち的な仕事を厭わず、公益のためならアドレナリンを上げて働く。そんな印象が私にはある。ひと頃、官僚の不祥事に関する報道が続いたが、問われるべきは「犬」をきちんと管理し、仕事をさせる「ドッグトレーナー=政治家」の能力だろう。

 「官から民へ」のスローガンの下、マスメディアの官僚バッシングに火をつけた小泉政権の罪は重いのではないだろうか。優秀な官僚のやる気を削ぎ、天下りでもしなきゃ損とでも思わせてしまいかねない空気をつくってしまった。

 その一方で官僚の傲慢さも目に余る。検察による恣意的な捜査の実態が明らかになっているが、昨年12月に宮内庁の羽毛田長官が、天皇陛下と中国の習近平副主席の会見をめぐり、「政治利用にあたるのではないか」との懸念を表明したことも記憶に新しい。天皇陛下の体調を慮っての発言と同長官は述べた。しかし、一官僚が記者会見を開いて、内閣の方針に異議を唱えるなどということがまかり通るのは、高級官僚の意識が、天皇から任命を受けていた明治時代を引きずっているからではないかと本書は指摘する。

 国民からの委託を受けた政治家が官僚を使って国を運営する。民主国家のあるべきかたちをつくるのは、「ドッグトレーナー」の雇い主である国民である。しかし、不都合が起こるたびにドッグトレーナーを取り換えればいいというものではない。ドッグトレーナーの資質によってだけで問題は解決しないことを私たちは気づき始めている。

 菅政権になってから、すっかり影が薄くなってしまったが、「コンクリートから人へ」「新しい公共」の理念は、官僚だけでなく、みんなでつくっていくものだと著者は言う。本来あるべき政治家と官僚の関係、天下りの実態とその解決策、マスコミや一部政党による過剰な官僚バッシングの問題点などを丁寧に論じた上での主張だけに、とても説得力がある。

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