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日朝合意(その1)

 日朝協議で一定の合意を見ることが出来ました(ココ )。この合意の背景には色々な事情があるとは思いますが、それはあえて脇に置いて、この合意文書から思う事を、複数回に分けて少し書いておきたいと思います。


 まず、北朝鮮側が包括的調査のために特別調査委員会を立ち上げ、調査を開始する時点で、①人的往来の規制措置、②送金報告および携帯輸出届出の金額に関して北朝鮮に対して講じている特別な規制措置、③人道目的の北朝鮮籍の船舶の日本への入港禁止措置を解除することとしました。

 これは全体的に「制裁解除」と報じられています。しかし、①と②はそもそも「制裁」とは呼べないものです。いわゆる制裁法制の中で、制裁といえるものには入ってきません。したがって、単なる手続き強化を元に戻すだけです。③はたしかに国内の特定船舶入港禁止特別措置法に基づく制裁ですが、そもそもの所で何が「人道目的」かは争いのあることです。国土交通大臣は「医薬品等」みたいな話をしていました。官房長官も「万景峰92号」は含まれないと言っていました。

 ここでポイントとなるのは、制裁の根拠となる特定船舶入港禁止特別措置法上で、現在、北朝鮮関係の船舶はすべて入港が禁止されていますが、この対象となる船舶は閣議決定で決められています。この閣議決定を変更し、それを国会承認に掛ける必要があります。特定の個別船舶が解除されるのか、それとも「人道目的」を具体化することは定性的な解除基準を設けるのか、によって、かなり異なるでしょう。

 しかし、北朝鮮は「この人道目的の北朝鮮籍の船舶」の中に「万景峰92号」は含まれると考えているでしょう。ここは「同床異夢」だと思います。まず、ここでケチ付けがスタートするでしょう。北朝鮮と色々な取り決めをする際に、いつも問題になるのは「同時性」ということです。もっと簡単に言えば、「後出しじゃんけん」と言い換えても良いです。具体例は出しませんが、かつてこの「同時性」に苦しんだことがあるのでよく分かります。

 「調査開始の『時点で』制裁解除である以上、制裁解除のための具体的な手続きが取られ、それが執行されることに相当の確証を得ない限り調査は開始しない。」と主張するはずです。そうすると、閣議決定をして、国会承認を得て、その内容を見て、納得しない限りは開始しないと言い始めるでしょう。

 ただ、一般論として言えば、今回、日本はよく頑張っていると思います。日本独自の制裁解除となっていますが、今回、日本独自の制裁措置を全部解除したのではなく、制裁の大玉である「輸出入禁止」は残ったままです(勿論、国連安保理決議制裁も残っています。)。となると、日本にやって来る船、出ていく船舶が「人道目的」である以上は、積み荷も厳に「人道目的」であることが要求されるでしょう。それは、税関レベルで厳しくチェックすべきです。

 現時点では、制裁でも何でもないものの緩和と、とても窮屈なかたちでの(しかも日本に裁量を残すかたちでの)船舶入港禁止解除だけです。私から見ると、日本は「上手く高く売り付けたな」という感じです。ただし、上記の通り執行段階で相当に揉めるでしょう。

 逆に、政府からすると、マスコミに「制裁解除」と大々的に喧伝してほしいはずです。「かなりの成果が取れた」と北朝鮮に思っていただくためのメッセンジャー役として(マスコミはそういう役を担っているとは思っていないでしょうが)。

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