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【第4回】1人1票実現訴訟の連続提訴 - 伊藤真

7月11日の参議院議員選挙について、7/21から8/9にかけて、全国8高等裁判所及び6支部で1人1票実現訴訟を連続提訴しました。公職選挙法が人口比例に基づいて定数配分しておらず、憲法が定める「正当な選挙」に基づく代議制及び選挙権の平等の保障に反する配分になっているので、それぞれの選挙区における選挙は違憲無効であるとの訴えです。

人口最小の鳥取県民の選挙権を1票とすると、東京都民の1票は実は0.23票の価値しかありません。全国に広がるこうした不平等を是正し、1人1票を実現することを目的としています。東京高裁に神奈川県と東京都の2件を提訴したので、14カ所15件の訴訟になりました。各地における1票の価値と高裁・提訴日は以下の通りです。なお選挙無効訴訟は法律によって高等裁判所が1審となっています。

東京0.23・神奈川0.20@東京高裁7/21、大阪0.21@大阪高裁7/23、愛知0.25@名古屋高裁7/26、福岡0.24@福岡高裁 7/27、宮崎0.52@福岡高裁宮崎支部7/24、島根0.82@広島高裁松江支部7/28、宮城0.51@仙台高裁7/29、広島0.42@広島高裁 7/30、香川0.59@8/2高松高裁、北海道0.21@8/3札幌高裁、沖縄0.45@8/4福岡高裁那覇支部、岡山0.31@8/5広島高裁岡山支部、石川0.51@8/6名古屋高裁金沢支部、秋田0.52@8/9仙台高裁秋田支部。以上14カ所、15件の訴訟です。

主張の骨子は、各地の有権者の選挙権が1票の価値を保障されていないこと、つまり0.何票しかないことの不当生と伴に、この投票価値の不平等により選挙区選出の参議院議員146人の過半数74人が全登録有権者の33%によって選出されている。国民の少数によって国会議員の多数が選出されてしまっており、憲法の要請である「正当な選挙」(民主主義の根幹である多数決)とはいえないとする点にあります。

今回の参議院選挙では民主党が敗北したので、こうした訴訟を提起すると、民主党を応援したいのかと誤解される方がいるのですが、昨年の衆議院選挙でも同様の訴訟を提起しています。つまり特定政党を支持するという趣旨はまったくありません。党派制は無関係であり、単に1人1票を実現するためだけの訴訟です。

特定の原告団がいるわけでもなく、弁護団があるわけでもなく、升永英俊、久保利英明、伊藤真の3弁護士はすべての訴訟の代理人になっていますが、それぞれに地域で弁護士が参加してくれています。原告も1票が保障されていないのはおかしいという考えの人がそれぞれ原告になっているだけで、横のつながりも全くありません。

また、前にも書きましたが、どうしても1票の格差を是正することは地方の切り捨てではないか、と誤解されることがあるのですが、今回の参議院選挙では、人口密度最小の北海道民の選挙権は0.21の価値しかありません。ことからも、この格差は過疎地対策とは無縁であることがわかります。松江で提訴したときの島根県の原告は、なぜ隣の鳥取県民の選挙権に比べて2割も少ないのか、おかしいと怒っていました。何の合理性もない不平等がこれまでまかり通ってきてしまっていたのです。

また、選挙制度、定数削減とも無関係であり、何か特定の選挙制度を推し進めようとしているわけでもありません。もちろん全国1区の比例代表や大選挙区制にすれば、選挙区がなくなりますから、不均衡もなくなります。また、たとえ小選挙区であっても、一票の格差を是正した下では、1人の議員を送り出す有権者数が選挙区ごとに一致しますから、有権者の多数派が国会議員の多数派を選ぶことが可能になります。

昨年の衆議院議員選挙無効訴訟9件のうち7件に高裁の違憲判決が出ました。これ自体画期的なことです。しかし、これまで最高裁を含めて、違憲判決は出ても選挙を無効にする判決は出たことがありませんでした。ただこれからは無効判決もあり得ると思っています。何度、違憲判決を出しても是正できない国会に対して、裁判所が選挙を無効とすること必要ですし十分に可能です。

無効の効力を遡及させない将来効判決という手法もあります。また、今回私たちは選挙区選出議員の選挙無効しか争っていません。衆参ともに比例代表議員が残っていますから、これらの議員で、それぞれの定足数(1/3)を超えています(憲法56条)。

よって、選挙区選出議員の選挙が無効となっても比例区選出議員によって立法は可能です。また、選挙無効によって議員資格を失った議員が参加した過去の立法については、遡って追認する旨の立法を行えばよいだけです。つまり裁判所が選挙無効判決を下しても、社会的混乱を回避することは可能です。

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