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- 2014年05月28日 17:11
PC遠隔操作事件:マスコミがあえて触れない「事件の真相」
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ここ数日、雑用も含め仕事に追われていたこともあるが、もしかして、どこか大手メディアで一社でも、まともな報道をするところがあるかどうかを見ていた。
残念なことに、見事なほどなかったどころか、誤報を通り越して、むしろ、捏造に近い記事まで出ている有様なので、やはり書かねばなるまい。
さて、まず、誰しもが不思議に思うのは、片山氏が真犯人であるとして、この真犯人は、
(1)1年もの間、全面否認を続けただけではなく、弁護団を騙し通した。言うまでもなく、この弁護団は、「人を見る目がない新人弁護士」ではなく、足利事件を扱った佐藤博史弁護士や、東電OL殺害事件に関わった木谷元裁判官も含む、「人を見るということにかけては大ベテラン」の方たちである。いわゆる「人を信じやすいピュアな人が詐欺にひっかかった」、というようなレベルの話ではないのは明らかだ。(というか、そう思っている人がいたら、相当な世間知らずであろう)
(2)では、なぜ、海千山千の弁護団が、自信を持って片山氏冤罪を信じたか。
刑事弁護人である以上、原則として、被疑者の主張を信用するという立ち位置もあるが、それ以上に、この件に関しては、一年に及ぶ片山氏の主張に、通常、犯人であるならどこかに生じる齟齬や矛盾がなかっただけではなく、本当に犯人であるなら、「監視カメラに猫に首輪をつける瞬間が映っていた」「携帯から猫の写真が復元できた」といった「誰が見ても決定的証拠と思われる」報道に対して、動揺するどころか、自信を持って否認を続けたというところにある。
そして、実際に、公判前の検察の証拠開示において、そのような「決定的な証拠」はまったくなかった。つまり、「監視カメラに猫に首輪をつける瞬間が映っていた」「携帯から猫の写真が復元できた」といった「誰が見ても決定的証拠がある」系報道は、すべて「誤報」、もしくは、「警察もしくは検察のデマリーク」に基づいた報道であった。
(※デマリークしていたのが検察だけと決めつけないでほしい、という検察関係の方からのご指摘があり、それはもっともですので、「検察」と決めつけた部分については修正させていただきました)
一方で、後に、片山氏は「自分はサイコパスである」と佐藤弁護士に語った。それも、「真犯人の人格が出ているときは、平気でどんな嘘でもつける」「完璧な演技も自然にできてしまう」「その真犯人人格が出て切るときは、自分でもコントロールできない」と説明しているそうだ。
いわゆる「片方の人格が出ているときは、もう一つの人格にはその記憶がない」といわれる典型的な多重人格ではないようだが、実際に、以前には、解離性回避性人格障害の診断を受けたことがあったのだそうだ。
(※「解離性」ではなく「回避性人格障害」の聞き間違いでした。これは人格障害としてはまったく異なるものです。申し訳ありません。30日の記者会見では、佐藤弁護士は、「解離性ではなく回避性」であることを、改めて強調されたそうですが、この記者会見に出席していなかったため、訂正が遅れたことをお詫び申し上げます。)
佐藤弁護士は、改めて、今回、裁判所に片山氏の精神鑑定を依頼しようとしているが、それは、精神障害をもって、片山氏に責任能力がないことを主張するためではなく、あくまで事件の真相を解明したいからであるし、片山氏も精神鑑定をもって無罪主張や減刑を求めるつもりはないそうだ。(この点について、デマ報道をしているメディアがあるので注意)
(3)次にIT系の話になる。
検察は片山氏をウイルス作成罪で立件しなかった。すなわち、「FBIとの捜査協力で明らかになった、Dropboxの中に、片山氏がウイルスを作成していた痕跡」というのもデマリークだったことが、公判前に明らかになった。
さらに、公判になって、検察のIT関係の主な主張は「片山氏にC#が使えた可能性がある」というものが主だった。むろんこれには証拠はないし、仮に多少使えたところで、それが犯人である動かぬ証拠、というのは無理がある。だから、そもそも、検察は、ウイルス作成罪では立件できなかったのである。
そこで、検察が固執していたのは、片山氏の勤務先のパソコンの「ファイルスラック領域に痕跡がある」というものだった。これを「最大の証拠」としようとしていたのだが、この主張には、実は、どう考えても無理があった。
つまり、もし、片山氏のバソコン(正確には、勤務先のパソコン)が、乗っ取られて、さらに遠隔操作されていたとする。
その場合、原理的には、「ABC」と書いたファイルに「AB」で上書保存すればスラックには「C」が残る。特定のスラック領域に「C」と(OS経由で)書き込むのは難しいけれど、犯人の行為としては、どこに「C」を残してもOKだったわけだから、これは簡単なわけだ。
というか、単に「痕跡と認められるもの」さえあればいいのであれば、真犯人が開発していた環境をまるっと片山氏のパソコンにコピーして、それを消してしまえば、あっさり検察の主張している状態になる。すなわち、真犯人が「iesys.exeを作った環境」を持って来て、それを全部消すだけで、検察の主張している「ファイルスラック領域に痕跡がある」状態にできてしまうわけだ。
つまり、ITのプロが見れば、こんなの証拠でも何でもないわけで、相手が、ITに無知な裁判官であり、かつ、弁護人にもプロのアドバイザーがいなければ、騙し通せるかもしれない、というレベルの主張にしかすぎなかった。
これからIT犯罪が増加するのは目に見えているだろうに、こんな無茶苦茶な根拠で、人が有罪にされては、今後、大変なことになる。
それが、私と「当会協力者のITのプロ中のプロであるホワイトハッカーの皆様たち」の危惧であって、それだからこそ、ハッカソンを企画して、「検察のこの主張は無理がありすぎ」なことを実証しようとしたわけだ。
この点について、「片山氏のパソコンが遠隔操作されていたなら、それはそれで、その痕跡が残るはずではないのか」という疑問をお持ちの方もあろうが、それも含めて、「いや、いろいろ『紛れ込ませる方法』とかあるんですよ」とかいうハッカーさんもいらっしゃったりしたので、そういったことも含めて、実験は必要であると考えたわけ。
(逆に言えば、『紛れ込ませる方法』も含めて、高度な技術を持つハッカーさんの手口を検証したうえで、問題のパソコンのアクセスログデータを改めて解析すれば、「遠隔操作されていなかった」ことを立証できたかもしれなかったわけで、私たちとしては、警察なり検察には、どうせなら、それぐらいのレベルの、皆が納得できる立証をしてほしかったわけだ)
では、検察が、もっと別の、まともな証拠をなぜ出せなかったのか。
おそらく、本当に、彼らは見つけられなかったのだと思う。
某有名セキュリティ社が検察側の証人になっていたが、あくまで言えたのは、「片山氏に作れる可能性がある」ということだけだった。しかしこんなものはあくまで「悪魔の証明」に過ぎず、「作れる可能性がある」=「犯人」とはいえない。
実際には、検察に協力していた、この某社の方も、ファイルスラック主張の致命的な欠陥に気づいていなかったわけはないのだが、実際に、それ以外に「片山氏が犯人である根拠」を、なにも見つけられなかったのだろう。
「片山氏でもeisys.exeを作れたはずだから、犯人でもおかしくない」とかいうコメントをつけている人がいたが、「作れるかもしれない」=「犯人」ではないし、「犯人でもおかしくない」というのは、心証としてブログに書くレベルなら何の問題もないが、それを理由に裁判で有罪というのは、まともな司法のあり方ではない。
ある意味、この検察の主張は、IT関係者に「サイバー警察とか検察の実力ってこの程度」みたいなことを晒すことになってしまったといえる。残念であるとともに、今後を危惧する。
(4)さらに、片山氏には、無実のかなり有力な証拠が出てきていた。つまり、猫の首輪につけたセロテープからは別人のDNAが検出されたのである。(このトリックについては真犯人メールで説明されている)
刑事弁護士であるなら、刑事被告人が無実を主張している限り、いくら怪しくても、それに沿って、被告人の主張を代弁するのが仕事である(それが嫌なら辞任する)、という刑事弁護士としての「あるべき役割」は別としても、これだけの事実が揃っていれば、弁護団が片山氏の無実を信じたのはむしろ、まっとうであり、それを騙されたと責めるのは筋違いだ。
また、江川紹子氏は、「このまま裁判が続いていたら、(IT関係の証拠などで)片山氏は有罪になっただろう」と書かれているが、それも違う。IT方面での検察の立証は無茶苦茶だった。むしろ、あの証拠で、有罪になっていたとしたら、そちらの方が問題だった。
(5)さて、ここからが本題だ。
真犯人、片山氏は、狡猾極まりないトリックを使っていた。
すなわち、先にも書いた、無実のかなり有力な証拠であった「猫の首輪につけたセロテープの別人のDNA」はトリックだった。このことは、彼が「真犯人メール」で自分でそのネタばらしを書いてしまったことで明らかになった。
では、佐藤弁護士が、片山氏に聴き取りを行った結果わかったことだが、なぜ彼は、自信を持って、否認を続けることができたのか。
それは啞然とするような理由だった。
つまり、真犯人であったからこそ、片山氏は、「携帯から猫の写真が復元できた」などということがあり得ない、つまり、これがデマ報道であることを知っていたのだ。
となると、なぜ、このようなデマ報道がなされるのか。当然、検察が片山犯人説を強めるためにデマリークをしているわけだが、本当に「堅い」証拠があるなら、こんなデマを流す必要はない。となると、他の「犯人確定」報道もすべてデマではないのか?
であれば、決定的な証拠など、本当は、何ひとつないことになる。
それが、彼の「自信を持って否認を続けられる根拠」だった。
もちろん、彼が真犯人である以上、監視カメラに「猫に首輪をつける決定的な映像」がある可能性もあった。しかし、検察で最初に取り調べがあったとき、検察官が「江ノ島に行ったかどうか」を訊ね、片山氏はもちろんそのこと自体は認めたわけだが、それ以上、なにも突っ込まれなかった。いわんや、証拠の映像(もしあったら、本当に動かぬ証拠だ)を突きつけられることもなかった。そこで、彼は、監視カメラの決定的な映像も存在していないのだと確信したという。
だとすれば、検察の主張はすべてデマであり、公判は自分に有利になる、彼はそう踏んだ。
つまり、警察・検察のデマリークとそれに乗ったマスコミの誤報が、もっとも真犯人を利していたのだ。
このことは、佐藤弁護士が5月22日の記者会見で詳細に述べたことであり、特に誤報(というか検察のデマリーク垂れ流し)を連発していた新聞社については、実名を出しての批判もされていた。
しかし、その最も重要な(そして、マスコミ各社には不都合な)事実を報じた社は一社もない。この事件の報道に関しての検証記事を書いたところもない。それどころか、この記者会見そのものについても、トンデモな、捏造報道が行われた。これはあとで書く。
(6)さて、そうだとして、まだ大きな疑問が残る。
私自身が、PC遠隔操作事件:河川敷のスマホにまつわるこれだけの謎で書いたことだが、その疑問のいくつかは、片山氏が佐藤弁護士に行った告白によって、かなり氷解しているので、ここで記す。
まず、問題のスマホは秋葉原で白ロムを購入し、SIMは、ある方がコメントしてくださっていた
だった。もっとも空港まで行ったわけではなく、現在、秋葉原で自販機で売られているそうだ。
彼はそれを入手し、一ヶ月かけて真犯人メールを書き、5月15日に埋め、16日の公判中に送られるようにセットした。真犯人メールに書かれていた「片山氏が一言一句記憶していないはずの『過去の真犯人メール』の文言」については、裁判の証拠開示の中で、彼がpdfファイルで入手していたので、それを書き写したのだそうだ。(このことは弁護人自体忘れていた)
それにしても、DNAがべったりついたスマホを河川敷に埋めたのは、いままで狡猾だった犯人にしては、杜撰すぎる行動と思った人が少なくないだろう。
興味深いのは、このメールに関して、受け取った落合弁護士は、「書きぶりがやや違う気がする」ことを第一印象としてツイートされている。
それもそのはずで、片山氏によれば、それまでの一連の犯行を企て「謹賀新年メール」や「新春パズル~延長戦~」メールを書いた「真犯人人格」ではない方の、彼自身の人格が、この最後のメールを書き、河川敷に埋めたのだそうだ。
つまり、自分で、「真犯人人格だったら、こういうふうに書くだろうな」と想像しながら、できるだけ汚い言葉を使って真犯人メールを書き、そして、狡猾な真犯人ではない方の人格だったからこそ、それまで真犯人人格がやっていたように、携帯のDNAをきれいに拭き取り(できれば他人の指紋やDNAをつけるぐらいの小細工をして)埋めるというようなことを「思いつかなかった」。また、万一、それを見られていても、「携帯を埋めたのは自分だが、それは裁判を終わらせたかったからで、あくまで自分は犯人ではない」と主張できるようなトリックも弄せなかったということだ。
(もっというなら、もし、これを真犯人人格がやっていたら、そもそも河川敷みたいな、携帯の発信基地局から場所の特定が容易なところに埋めなかったのではないか。)
むろん、スマホを回収する気はなかった。
もちろん、片山氏自身に「虚言癖がある」というか、自身が認めているように、完璧に嘘がつける人ではあるので、彼の言うことを100%信じられるわけではないが、この件に関して、「真犯人の狡猾さ」と「DNA付きのスマホを河川敷に埋めた行為のお粗末さ」の違いについて、見事に説明がつくのは確かである。
そして、恐るべきなのは、本当は、この真犯人メールは、公判で、万一、彼が有罪になって収監されたら送るつもりだっていたのを、母親との対話の中で、早く裁判から解放されたいという気持ちから、こんなタイミングでやってしまったということだ。
つまり、片山氏の中の犯人人格がもっと強ければ、あやうく、完全犯罪は成立するところだったのである。
佐藤弁護士が記者会見で言っていた、「天が見ていた」というのはそういうことである。
残念なことに、見事なほどなかったどころか、誤報を通り越して、むしろ、捏造に近い記事まで出ている有様なので、やはり書かねばなるまい。
さて、まず、誰しもが不思議に思うのは、片山氏が真犯人であるとして、この真犯人は、
(1)1年もの間、全面否認を続けただけではなく、弁護団を騙し通した。言うまでもなく、この弁護団は、「人を見る目がない新人弁護士」ではなく、足利事件を扱った佐藤博史弁護士や、東電OL殺害事件に関わった木谷元裁判官も含む、「人を見るということにかけては大ベテラン」の方たちである。いわゆる「人を信じやすいピュアな人が詐欺にひっかかった」、というようなレベルの話ではないのは明らかだ。(というか、そう思っている人がいたら、相当な世間知らずであろう)
(2)では、なぜ、海千山千の弁護団が、自信を持って片山氏冤罪を信じたか。
刑事弁護人である以上、原則として、被疑者の主張を信用するという立ち位置もあるが、それ以上に、この件に関しては、一年に及ぶ片山氏の主張に、通常、犯人であるならどこかに生じる齟齬や矛盾がなかっただけではなく、本当に犯人であるなら、「監視カメラに猫に首輪をつける瞬間が映っていた」「携帯から猫の写真が復元できた」といった「誰が見ても決定的証拠と思われる」報道に対して、動揺するどころか、自信を持って否認を続けたというところにある。
そして、実際に、公判前の検察の証拠開示において、そのような「決定的な証拠」はまったくなかった。つまり、「監視カメラに猫に首輪をつける瞬間が映っていた」「携帯から猫の写真が復元できた」といった「誰が見ても決定的証拠がある」系報道は、すべて「誤報」、もしくは、「警察もしくは検察のデマリーク」に基づいた報道であった。
(※デマリークしていたのが検察だけと決めつけないでほしい、という検察関係の方からのご指摘があり、それはもっともですので、「検察」と決めつけた部分については修正させていただきました)
一方で、後に、片山氏は「自分はサイコパスである」と佐藤弁護士に語った。それも、「真犯人の人格が出ているときは、平気でどんな嘘でもつける」「完璧な演技も自然にできてしまう」「その真犯人人格が出て切るときは、自分でもコントロールできない」と説明しているそうだ。
いわゆる「片方の人格が出ているときは、もう一つの人格にはその記憶がない」といわれる典型的な多重人格ではないようだが、
(※「解離性」ではなく「回避性人格障害」の聞き間違いでした。これは人格障害としてはまったく異なるものです。申し訳ありません。30日の記者会見では、佐藤弁護士は、「解離性ではなく回避性」であることを、改めて強調されたそうですが、この記者会見に出席していなかったため、訂正が遅れたことをお詫び申し上げます。)
佐藤弁護士は、改めて、今回、裁判所に片山氏の精神鑑定を依頼しようとしているが、それは、精神障害をもって、片山氏に責任能力がないことを主張するためではなく、あくまで事件の真相を解明したいからであるし、片山氏も精神鑑定をもって無罪主張や減刑を求めるつもりはないそうだ。(この点について、デマ報道をしているメディアがあるので注意)
(3)次にIT系の話になる。
検察は片山氏をウイルス作成罪で立件しなかった。すなわち、「FBIとの捜査協力で明らかになった、Dropboxの中に、片山氏がウイルスを作成していた痕跡」というのもデマリークだったことが、公判前に明らかになった。
さらに、公判になって、検察のIT関係の主な主張は「片山氏にC#が使えた可能性がある」というものが主だった。むろんこれには証拠はないし、仮に多少使えたところで、それが犯人である動かぬ証拠、というのは無理がある。だから、そもそも、検察は、ウイルス作成罪では立件できなかったのである。
そこで、検察が固執していたのは、片山氏の勤務先のパソコンの「ファイルスラック領域に痕跡がある」というものだった。これを「最大の証拠」としようとしていたのだが、この主張には、実は、どう考えても無理があった。
つまり、もし、片山氏のバソコン(正確には、勤務先のパソコン)が、乗っ取られて、さらに遠隔操作されていたとする。
その場合、原理的には、「ABC」と書いたファイルに「AB」で上書保存すればスラックには「C」が残る。特定のスラック領域に「C」と(OS経由で)書き込むのは難しいけれど、犯人の行為としては、どこに「C」を残してもOKだったわけだから、これは簡単なわけだ。
というか、単に「痕跡と認められるもの」さえあればいいのであれば、真犯人が開発していた環境をまるっと片山氏のパソコンにコピーして、それを消してしまえば、あっさり検察の主張している状態になる。すなわち、真犯人が「iesys.exeを作った環境」を持って来て、それを全部消すだけで、検察の主張している「ファイルスラック領域に痕跡がある」状態にできてしまうわけだ。
つまり、ITのプロが見れば、こんなの証拠でも何でもないわけで、相手が、ITに無知な裁判官であり、かつ、弁護人にもプロのアドバイザーがいなければ、騙し通せるかもしれない、というレベルの主張にしかすぎなかった。
これからIT犯罪が増加するのは目に見えているだろうに、こんな無茶苦茶な根拠で、人が有罪にされては、今後、大変なことになる。
それが、私と「当会協力者のITのプロ中のプロであるホワイトハッカーの皆様たち」の危惧であって、それだからこそ、ハッカソンを企画して、「検察のこの主張は無理がありすぎ」なことを実証しようとしたわけだ。
この点について、「片山氏のパソコンが遠隔操作されていたなら、それはそれで、その痕跡が残るはずではないのか」という疑問をお持ちの方もあろうが、それも含めて、「いや、いろいろ『紛れ込ませる方法』とかあるんですよ」とかいうハッカーさんもいらっしゃったりしたので、そういったことも含めて、実験は必要であると考えたわけ。
(逆に言えば、『紛れ込ませる方法』も含めて、高度な技術を持つハッカーさんの手口を検証したうえで、問題のパソコンのアクセスログデータを改めて解析すれば、「遠隔操作されていなかった」ことを立証できたかもしれなかったわけで、私たちとしては、警察なり検察には、どうせなら、それぐらいのレベルの、皆が納得できる立証をしてほしかったわけだ)
では、検察が、もっと別の、まともな証拠をなぜ出せなかったのか。
おそらく、本当に、彼らは見つけられなかったのだと思う。
某有名セキュリティ社が検察側の証人になっていたが、あくまで言えたのは、「片山氏に作れる可能性がある」ということだけだった。しかしこんなものはあくまで「悪魔の証明」に過ぎず、「作れる可能性がある」=「犯人」とはいえない。
実際には、検察に協力していた、この某社の方も、ファイルスラック主張の致命的な欠陥に気づいていなかったわけはないのだが、実際に、それ以外に「片山氏が犯人である根拠」を、なにも見つけられなかったのだろう。
「片山氏でもeisys.exeを作れたはずだから、犯人でもおかしくない」とかいうコメントをつけている人がいたが、「作れるかもしれない」=「犯人」ではないし、「犯人でもおかしくない」というのは、心証としてブログに書くレベルなら何の問題もないが、それを理由に裁判で有罪というのは、まともな司法のあり方ではない。
ある意味、この検察の主張は、IT関係者に「サイバー警察とか検察の実力ってこの程度」みたいなことを晒すことになってしまったといえる。残念であるとともに、今後を危惧する。
(4)さらに、片山氏には、無実のかなり有力な証拠が出てきていた。つまり、猫の首輪につけたセロテープからは別人のDNAが検出されたのである。(このトリックについては真犯人メールで説明されている)
刑事弁護士であるなら、刑事被告人が無実を主張している限り、いくら怪しくても、それに沿って、被告人の主張を代弁するのが仕事である(それが嫌なら辞任する)、という刑事弁護士としての「あるべき役割」は別としても、これだけの事実が揃っていれば、弁護団が片山氏の無実を信じたのはむしろ、まっとうであり、それを騙されたと責めるのは筋違いだ。
また、江川紹子氏は、「このまま裁判が続いていたら、(IT関係の証拠などで)片山氏は有罪になっただろう」と書かれているが、それも違う。IT方面での検察の立証は無茶苦茶だった。むしろ、あの証拠で、有罪になっていたとしたら、そちらの方が問題だった。
(5)さて、ここからが本題だ。
真犯人、片山氏は、狡猾極まりないトリックを使っていた。
すなわち、先にも書いた、無実のかなり有力な証拠であった「猫の首輪につけたセロテープの別人のDNA」はトリックだった。このことは、彼が「真犯人メール」で自分でそのネタばらしを書いてしまったことで明らかになった。
では、佐藤弁護士が、片山氏に聴き取りを行った結果わかったことだが、なぜ彼は、自信を持って、否認を続けることができたのか。
それは啞然とするような理由だった。
つまり、真犯人であったからこそ、片山氏は、「携帯から猫の写真が復元できた」などということがあり得ない、つまり、これがデマ報道であることを知っていたのだ。
となると、なぜ、このようなデマ報道がなされるのか。当然、検察が片山犯人説を強めるためにデマリークをしているわけだが、本当に「堅い」証拠があるなら、こんなデマを流す必要はない。となると、他の「犯人確定」報道もすべてデマではないのか?
であれば、決定的な証拠など、本当は、何ひとつないことになる。
それが、彼の「自信を持って否認を続けられる根拠」だった。
もちろん、彼が真犯人である以上、監視カメラに「猫に首輪をつける決定的な映像」がある可能性もあった。しかし、検察で最初に取り調べがあったとき、検察官が「江ノ島に行ったかどうか」を訊ね、片山氏はもちろんそのこと自体は認めたわけだが、それ以上、なにも突っ込まれなかった。いわんや、証拠の映像(もしあったら、本当に動かぬ証拠だ)を突きつけられることもなかった。そこで、彼は、監視カメラの決定的な映像も存在していないのだと確信したという。
だとすれば、検察の主張はすべてデマであり、公判は自分に有利になる、彼はそう踏んだ。
つまり、警察・検察のデマリークとそれに乗ったマスコミの誤報が、もっとも真犯人を利していたのだ。
このことは、佐藤弁護士が5月22日の記者会見で詳細に述べたことであり、特に誤報(というか検察のデマリーク垂れ流し)を連発していた新聞社については、実名を出しての批判もされていた。
しかし、その最も重要な(そして、マスコミ各社には不都合な)事実を報じた社は一社もない。この事件の報道に関しての検証記事を書いたところもない。それどころか、この記者会見そのものについても、トンデモな、捏造報道が行われた。これはあとで書く。
(6)さて、そうだとして、まだ大きな疑問が残る。
私自身が、PC遠隔操作事件:河川敷のスマホにまつわるこれだけの謎で書いたことだが、その疑問のいくつかは、片山氏が佐藤弁護士に行った告白によって、かなり氷解しているので、ここで記す。
まず、問題のスマホは秋葉原で白ロムを購入し、SIMは、ある方がコメントしてくださっていた
http://ascii.jp/elem/000/000/884/884763/
こんな買い方もできます。
だった。もっとも空港まで行ったわけではなく、現在、秋葉原で自販機で売られているそうだ。
彼はそれを入手し、一ヶ月かけて真犯人メールを書き、5月15日に埋め、16日の公判中に送られるようにセットした。真犯人メールに書かれていた「片山氏が一言一句記憶していないはずの『過去の真犯人メール』の文言」については、裁判の証拠開示の中で、彼がpdfファイルで入手していたので、それを書き写したのだそうだ。(このことは弁護人自体忘れていた)
それにしても、DNAがべったりついたスマホを河川敷に埋めたのは、いままで狡猾だった犯人にしては、杜撰すぎる行動と思った人が少なくないだろう。
興味深いのは、このメールに関して、受け取った落合弁護士は、「書きぶりがやや違う気がする」ことを第一印象としてツイートされている。
それもそのはずで、片山氏によれば、それまでの一連の犯行を企て「謹賀新年メール」や「新春パズル~延長戦~」メールを書いた「真犯人人格」ではない方の、彼自身の人格が、この最後のメールを書き、河川敷に埋めたのだそうだ。
つまり、自分で、「真犯人人格だったら、こういうふうに書くだろうな」と想像しながら、できるだけ汚い言葉を使って真犯人メールを書き、そして、狡猾な真犯人ではない方の人格だったからこそ、それまで真犯人人格がやっていたように、携帯のDNAをきれいに拭き取り(できれば他人の指紋やDNAをつけるぐらいの小細工をして)埋めるというようなことを「思いつかなかった」。また、万一、それを見られていても、「携帯を埋めたのは自分だが、それは裁判を終わらせたかったからで、あくまで自分は犯人ではない」と主張できるようなトリックも弄せなかったということだ。
(もっというなら、もし、これを真犯人人格がやっていたら、そもそも河川敷みたいな、携帯の発信基地局から場所の特定が容易なところに埋めなかったのではないか。)
むろん、スマホを回収する気はなかった。
もちろん、片山氏自身に「虚言癖がある」というか、自身が認めているように、完璧に嘘がつける人ではあるので、彼の言うことを100%信じられるわけではないが、この件に関して、「真犯人の狡猾さ」と「DNA付きのスマホを河川敷に埋めた行為のお粗末さ」の違いについて、見事に説明がつくのは確かである。
そして、恐るべきなのは、本当は、この真犯人メールは、公判で、万一、彼が有罪になって収監されたら送るつもりだっていたのを、母親との対話の中で、早く裁判から解放されたいという気持ちから、こんなタイミングでやってしまったということだ。
つまり、片山氏の中の犯人人格がもっと強ければ、あやうく、完全犯罪は成立するところだったのである。
佐藤弁護士が記者会見で言っていた、「天が見ていた」というのはそういうことである。



