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アベノミクスと「真の失業率」について

前回のエントリーに対して、コメント、ブクマ等で複数の方から「ラスカルの備忘録」様の「真の失業率」エントリーをご紹介いただいた。

この「真の失業率」の詳細については「ラスカルの備忘録」様のこちらのエントリーで詳しく説明されているが、年齢階級別の「均衡」労働力率の推移を取り込む事によって、単なる失業率の推移からは見えにくい就業意欲喪失効果(「景気の悪化により条件のよい求人が減少することで労働者の就業意欲が低下し労働市場から退出する効果」)を補正した「真の失業率」の推計を目指されており、毎月そのグラフを公開されている。

2014年3月までのデータによる最新のグラフを引用させていただくと、以下のようになっている。

リンク先を見る

http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20140503/1399119203

この手法で導かれる真の失業率の絶対的な水準についてはやや違和感(というか過去のデータを見るとバブル末期を除いて常に(真の失業率>公表失業率)でありバブル期のような特別な状態でなければこの差が十分に縮まらないのではないか?という疑問)があるものの、特定の期間に生じた「就業意欲喪失効果」を評価するにはかなり有用なものに見えるが、このグラフから何が読み取れるか、については幾つか注意すべき点があると思われる。

たとえば頂いたコメントの中に、このグラフによれば「2009年末から2012年末にかけて改善はほぼ見られず、2013年には急転して回復。 人口動態を考慮した方が2012年まで雇用回復が停滞し、そこから急改善していたことがくっきり出る。」というものがあった。 これは筆者が書いた「失業率はアベノミクス前から回復トレンドにあった」という考察に対する批判という事になるわけだろうが、筆者の理解ではこのグラフはむしろ「就業意欲喪失効果」を考慮しても失業率はアベノミクス前の2012年(のおそらく年央ころ)から回復に向かっていたことを示している。

ここでグラフの赤実線(真の失業率(後方12ヶ月))を見てみると、確かにそれまでよりも早いペースで下落し始めたのは2013年に入ってからに見え、アベノミクスを支持する立場からは「2009年末から2012年末にかけて改善はほぼ見られず、2013年には急転して回復」していると言いたくなる気持ちはわからなくもないが、注意すべきはこの真の失業率が12ヵ月後方移動平均であることである。

12ヵ月後方移動平均は、読んで字のごとく直近の12ヶ月の平均を取ったものであり例えば2013年1月の12ヵ月後方移動平均は2012年2月から2013年1月までの平均値となる。 12ヶ月の期間を取ったのは失業率に関わる季節変動を極力排除するため、又後方移動平均としたのは速報性を確保するためと推察され、目的を考えるとそれ自体に問題があるとは言えないものの、結果として移動平均前の本当のトレンドが平滑化され、12ヵ月後方移動平均にはっきりと現れるまでにかかる時間が長くなるという特徴を持つ事になることには注意が必要である。

今回の例で説明すれば、失業率が6.3%で12ヶ月以上安定して続いていた状態から、あるタイミングで毎月0.1%で減少していく状態へと移行したとすると、12ヵ月後方移動平均はそのタイミング後のトレンド6.3%,6.2%,6.1%,6.0% ... に対して6.3%,6.292%,6.275%,6.250%と非常に小さな変化しか示さない。 下図に6.3%が長期に渡って続いた後に毎月0.1%ずつ下落していった場合のオリジナルのトレンドと12ヵ月後方移動平均のトレンドのグラフを示す。(尚、説明は省略するが、ベースのトレンドに12ヶ月周期の変動を単純に加えたもの(点線)を対象に12ヵ月後方移動平均を計算しても、当然ならが全く同じ12ヵ月後方移動平均となる。この点線の31以降のようにベースのトレンドは低下トレンドなのに季節変動で上昇に見えるような期間を「失業率が悪化している」と勘違いしないように調整が必要になるわけである。)

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そして、このグラフを先に引用した「真の失業率」グラフに重ねると以下のようになる。 筆者としてはかなりイメージがつかみやすいのではないかと思うのだがいかがだろうか?

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今回は移動平均前の数値が無かったため例えば移動平均の代わりに季節調整を実際に行なうような直接的な考察ではなく、これをもって「真の失業率は2012年5月から0.1%ずつ一定のペースで下がり続けている」なんてことがいえるわけではないが、少なくともこのグラフが示唆している可能性が高いのは失業率は「就業意欲喪失効果」を考慮してもアベノミクス前の2012年の年央頃から回復に向かっていたという事と、仮にその回復トレンドが上図のように2012年からずっと(アベノミクス前後で)同じ一定のペースであったとしてもこの「真の失業率」トレンドとは全く矛盾しないという事だというのがこの「真の失業率」グラフを見た筆者の理解ということになる。

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