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歴史的EU拡大からの10年を振り返る

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拡大がもたらした影響

拡大後10年を経た現在までに、欧州にはどのような変化がもたらされたのだろうか。冷戦時の欧州の東西分断の構造が、民主的、平和的に解消されたことが、まず挙げられる。また、より大きなEU域内で協力し、ルールを統合することにより、エネルギー、運輸、法の支配、移民問題、食の安全、環境保護、気候変動対策など、さまざまな面で市民の生活の質が向上した。さらに、EUの理念である民主主義と基本的自由、法の支配を強化することで、欧州がより安全になった。加えて、拡大によりソフトパワーも増大したEUは、多極化した世界において、より影響力を持つようになったと言える。

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新規加盟国の経済成長により、約300万の新しい雇用が生み出された ©European Union 2013 – EP

経済においても、多大な恩恵がもたらされた。域内の国々には単一の関税率、貿易ルール、行政手続きが適用されるが、その範囲も広がった。EUの関税率は、相対的に新規加盟国の加盟前の税率よりも低いというメリットがあるため、これらの国々の域外国との貿易が促進された。2012年、EUのGDP(域内総生産)は世界全体のGDPの23%を占める13兆ユーロに達し、企業、投資家、資産家、消費者、旅行者、学生など幅広い層に経済的恩恵をもたらした。新規加盟国の経済成長率は、1994年~2008年の14年間で年平均4%。この力強い経済成長により、2002年~2008年の6年間で、約300万の新しい雇用が生み出された。

新規加盟国の経済成長は、既加盟国にも経済的に良い影響を与えた。例えば両者間の貿易は、約3倍も増加(新規加盟国同士では、約5倍の増加)した。また投資機会の増大、製品需要の高まりにより、2000年~2008年の8年間、EU既加盟15カ国の累積成長率(cumulative growth)は0.5%上昇した。新規加盟国が成長することにより、既加盟国の成長にも貢献があるという、好循環が生まれたのだ。

細かなルールや障害を取り除いたより大きな単一市場は、投資家にとって、この上ない魅力となる。拡大により、域外国からEUへの海外直接投資(FDI)は、2004年はGDP比15.2%であったのが、2012年(当時の新規加盟国は12カ国)にはGDP比30.5%に増加し、約2倍となった。EUの単一市場は今や、FDIの20%を呼び込むホットな市場だ。

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EUへの直接投資は、2012年には2004年の約2倍となった(「欧州委員会拡大総局作成資料」より)

「拡大はEUの重要な政策である。最も強力な変革手段であり、改革への強い動機でもある」とフィーレ委員は述べている。現在、加盟候補国は、モンテネグロ、アイスランド(交渉停止中)、マケドニア旧ユーゴスラビア、セルビア、トルコの5カ国。またアルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボは潜在的加盟候補国とみなされている。特に南東欧の国々にとってEU加盟は、民主改革・経済改革を通した平和・繁栄・安定・安全の地への変貌を意味することからも、EUは引き続き拡大政策を推進していく。

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