- 2014年05月22日 16:41
【速報】BPO「今後十分に配慮されるべき」と日テレなどに苦言 「明日ママ」の通知文の全容判明
熊本県の慈恵病院に今日午後、1通の封書が郵送されてきた。
差し出し人はBPO「放送倫理・番組向上機構」。
放送局にとってのお目付役だ。
封書は、慈恵病院が今年1月22日、BPOの「放送人権委員会」に対して行った「申し立て」に対する返事とも言える「通知書」だった。
日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」については、1月15日に放送された第1話で、児童養護施設に入居する子どもたちのあだ名が「赤ちゃんポストに捨てられていたから」と「ポスト」などと言うあだ名で呼び合う設定や、施設長が子どもたちを「ペットショップの犬」と同等とみなす発言などについて、慈恵病院側が「名誉毀損にあたる」と問題視して、番組内容の変更や制作過程についての説明を求めて申し立てを行っていた。
今日届いた通知書は3枚。そのうち半分は、慈恵病院側の申し立て内容について、被害を受けたとする「個別具体的な子ども」らの特定がされていないため、「個別具体的な名誉毀損の有無を判断できません」などとして、放送人権委員会が「審議入り」しなかった理由が綴られている。
この点では、慈恵病院側は、「個別具体的な子ども」の特定は差別などにつながる可能性が大きいため、「放送倫理の番人」としてのBPOに総合的に判断してほしい、という立場を貫いてきた。
今回の「通知書」の本論は”形式論”に終始し、「苦情の取り扱い基準に該当しないものとして本件申し立てを審理対象外とした」と記している。
一方で注目されるのは、BPOがテレビ局の側にも「苦言」を呈したことだ。
「現代社会の事象に対して問題提起する番組を制作することは、放送の自由の行使として、極めて意義のあること」だとする一方で、「番組内容の場合、その引き起こす社会的波紋に対する事前の配慮は、通常にも増して行う必要があったのではないか」(青少年委員会のコメントを引用した文)という点において、「今後さらに検証されるべきだ」という考えを示した。
また、日本テレビ側が「実情を詳細に伺い、表現上留意すべき点などをよ慎重に確認しておく必要があったと認識しております」と、自ら「問題があった」と認めていることも説明している。
放送人権委員会は、
「上記のような事項は、単に当該局(筆者注・日本テレビのこと)だけでなく、すべての放送局に共有され、今後十分に配慮されるべき点であると考えます」
と異例とも言える、踏み込んだ判断を示している。
簡単に言えば、今回の「明日ママ」問題は、日テレに限らず、すべての放送局で共有すべき問題だという見解を示したことになる。
たとえて表現するならば、国相手の訴訟での裁判所の判決文で、「違憲・違法」とまでは判示できないが、補足意見として国側の問題も認めて政府の不作為に警鐘を鳴らすような判決文に似ている、と言えばよいだろうか。
日本テレビも今日夕方、記者会見を行う。
この問題でどういうコメントを出すのか注目される。
折しも国会では放送法改正が審議されている。
来週の衆議院総務委員会でもこうした問題が俎上に出るはずだ。
BPOやテレビ局自身に「自律」する能力があるのかどうか。
それとも国家権力による「規制」が必要なのか。
それも問われている。
また子どもたちの健康や命にかかわりかねない放送の持つ「加害性」をどうみるのか。
これも医学的な研究を進めるべき問題だ。
今週末には、医師らによる日本子ども虐待防止学会がこの問題でシンポジウムを開く。
虐待される子どもの心の問題を研究する医師たちが民放ドラマをテーマにすること自体、きわめて異例だ。
シンポジウム開催のお知らせ
Published 2014年5月8日
■「メディアと虐待―ドラマ『明日、ママがいない』が投げかけたもの―」開催のお知らせ
日時:5 月25 日(日) 13:30 ~ 16:30
場所:日本子ども家庭総合研究所4階研修室
参加費:JaSPCAN会員 1,000円 非会員 1,500円
定員数:120名(先着順)
事前申し込み方法:メール件名に「メディアと虐待」シンポ参加希望と記入の上、
お名前、所属先、連絡先メールアドレスを記載し、info@jaspcan.org まで送信してください。
●今年1月から放送された『明日、ママがいない』には、関係各団体から抗議文等が寄せられ,
本学会も、子どもの心身に重大な影響を与える危険性が高いとして一定の措置を講じるよう日本テレビに要望しました。
本ドラマが提起した課題をひとつの契機として、本学会では、メディアと子ども虐待の関係を考えるためのシンポジウム
を開催します。
単にドラマの是非を問うのではなく、子ども虐待防止に向けたメディアの役割を考える機会にしたいと思います。
是非、ご参加ください。
@日本子ども虐待防止学会」のホームページから
http://www.jaspcan.org
http://www.jaspcan.org/wp-content/uploads/2014/05/symposium_mamagainai.pdf
今回の「明日ママ」問題はこれで終わりではない。
まさに「単にドラマの是非を問うのではなく、子ども虐待防止に向けたメディアの役割を考える機会」が必要だと思う。
放送局や放送業界が考えるべき、いろいろな課題を投げかけている。