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大飯原発差し止め訴訟に見る「人間あっての電力」か「電力あっての人間」か

 大飯原発差し止め訴訟で福井地裁が出した判決は、憲法に定める人間の生存権と、人間生活に必要な電力の供給方法について、前者の価値を優先させた一種の思想裁判と見ることができる。もちろん電力が要らないと言っているわけではない、今の大飯原発の安全対策では万全と言えないから、稼働させるべきでないという判断を下したわけだ。

 その判断の基準として、現行の「新規制基準」に適合していれば合法という機械的な政治手順に従うのでなく、原発の現状が本当に人間の生存を脅かさない安全性を備えているかどうかを、裁判所として綿密に考慮した結果の判決であるところに価値がある。過去の基準は「想定外」による破綻の連続だった。新基準にも信頼できない弱点が内包されている。破綻した場合の災害の大きさからして、稼働させるのは相当でないと結論した。

 原告側からすれば「よく言ってくれた」と思える判決で、原発推進で固まっている政府・経済界にとっては衝撃だろう。しかし被告の関西電力は、直ちに控訴するとしているし、政府も「新基準に適合したら再稼働」の方針は変えないと表明している。ちょうどこれは、アメリカ軍の駐留は憲法に違反するとした伊達判決に似ているように思えてきた。憲法を素直に読めばその通りだと、久しぶりの青空を見たような気がしたものだ。

 伊達判決では、当時の最高裁判所長官の田中耕太郎が、直ちにアメリカと連絡を取り、「善処」を約束したという記録があるそうだが、この「樋口判決」はどうなるのだろう。上級審へ行くほど「高度な政治判断」が働くことは予想されるが、まともに考えればこうなるという金字塔として、長く歴史に残るかもしれない。

 おそらく裁判だけでは国は変らない。しかし「人間あっての電力」と思うか、経済に不可欠な電力のためには人間の生命や健康は多少は犠牲にしてもいいとあきらめるのか、どちらがいいかを国民が選ぶ判断の材料にはなる。今すぐには政権を変える方法がないが、意思表示だけなら誰にでも今すぐできる。反・脱原発の運動にとって、大きな力になるだろう。

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