記事
- 2014年05月20日 23:18
<5月20日>(火)
○今朝の東京新聞の一面記事には驚きました。渾身のスクープ、ってやつじゃないでしょうか。
●TPP すし会食で首相譲歩 豚肉の差額関税 撤廃検討
○日米は「実質合意」しているのか、そうでないのか、というのはずっと報道が乱れ飛んでいたところです。4月のオバマ大統領訪日時には、単独の「書面インタビュー」をゲットして「日米関係に強い」ところを見せた読売新聞は、「実質合意」と報道していました。それも牛肉は最終的に関税9%だとか、豚肉の差額関税は50円だとか、かなり細かな内容を報じている。火のないところに煙が立つはずもなく、しかるべき筋から「これ、書いていいから」と言われているとしか思えない。ところが政府と自民党は、これを否定するという構図になっている。でも、今日の東京新聞の報道が正しいならば、やはり日米は「実質合意」とまではいかなくとも、ほぼ落としどころは見えていると言っても過言ではないでしょう。
○豚肉の差額関税という制度、とにかく日本国内ではブタ肉の値段を1キロ500円以下にはしないぞ、という仕組みでありまして、安い豚肉ほど関税が高くなるという企業努力を否定するような制度です。もちろん消費者の利益にもならない。対外的には、あんまり堂々と説明できるようなことではないので、この機会に廃止できるのならやった方がいいと思います。もちろんそのことが、国内政治的にどんな反発を招くかというかは未知数でありますけど。
○逆に感心するのは、4月23日の「すし会談」から1か月近くもたつのに、よくまあこんな秘密を守ってこれたな、ということであります。民主党時代だったら、考えられない話ですな。逆にこれ以上秘密を引っ張ると、いざ種明かしをする瞬間に衝撃が強すぎるかもしれないから、「実は合意している」「いやいや、そんなことはない」と適度に疑心暗鬼の状態にしてあったというのが本当のところなのかもしれません。
○余計な話ですが、最近の東京新聞はとっても旗幟鮮明で、「反原発」「反集団的自衛権」「とにかく安倍内閣に反対」という論調になっていて、そのおかげで朝日や毎日の読者を横取りしている、というもっぱらの評判です。だったら彼らは本気でリベラル派なのかというと、その実態は「ウチは反・読売新聞です」という説明が一番腑に落ちる。つまり中日ドラゴンズのオーナー会社としては、「打倒ジャイアンツ」でなければ話が始まらない。そして読売グループは社を上げて安倍内閣を支援している、と考えると、とってもわかりやすい構図が出来上がります。
○さて、シンガポールで行われていたTPP閣僚会合は、今日で終了したわけでありますが、それについては以下のような報道が飛び交っております。
●TPP閣僚会合、一定の前進みられたが合意に至らず(ロイター)=悲観的
●TPP閣僚会合閉幕 対立解消に努める(NHK)=中立的
●TPP大筋合意へ大きく前進…閣僚会合閉幕(読売)=前向き
○どれが正しいのか。先週、ここ(東洋経済オンライン)で書いた通り、筆者はTPP交渉は意外とうまくいっているという見方をしております。そもそも中間選挙の得点にしたいと思っているオバマ政権としては、TPPは夏までにまとめなければ意味がないわけでありまして、その見込みが立たないくらいなら、むしろダメージコントロールに取り掛かる方がマシということになる。例えば「日本が悪い!」などと言って、幕引きを図るという手だって、ないわけではない。ところがこのタイミングで閣僚会議を仕掛けてくるということは、もちろん脈があると思っているからやっているからでありましょう。
○それにしても「秘密交渉」を原則とするTPPも、これだけ状況が煮詰まってくると、いろんな内情が見えてくるものでありますね。いろんな意味で感心いたします。
●TPP すし会食で首相譲歩 豚肉の差額関税 撤廃検討
○日米は「実質合意」しているのか、そうでないのか、というのはずっと報道が乱れ飛んでいたところです。4月のオバマ大統領訪日時には、単独の「書面インタビュー」をゲットして「日米関係に強い」ところを見せた読売新聞は、「実質合意」と報道していました。それも牛肉は最終的に関税9%だとか、豚肉の差額関税は50円だとか、かなり細かな内容を報じている。火のないところに煙が立つはずもなく、しかるべき筋から「これ、書いていいから」と言われているとしか思えない。ところが政府と自民党は、これを否定するという構図になっている。でも、今日の東京新聞の報道が正しいならば、やはり日米は「実質合意」とまではいかなくとも、ほぼ落としどころは見えていると言っても過言ではないでしょう。
○豚肉の差額関税という制度、とにかく日本国内ではブタ肉の値段を1キロ500円以下にはしないぞ、という仕組みでありまして、安い豚肉ほど関税が高くなるという企業努力を否定するような制度です。もちろん消費者の利益にもならない。対外的には、あんまり堂々と説明できるようなことではないので、この機会に廃止できるのならやった方がいいと思います。もちろんそのことが、国内政治的にどんな反発を招くかというかは未知数でありますけど。
○逆に感心するのは、4月23日の「すし会談」から1か月近くもたつのに、よくまあこんな秘密を守ってこれたな、ということであります。民主党時代だったら、考えられない話ですな。逆にこれ以上秘密を引っ張ると、いざ種明かしをする瞬間に衝撃が強すぎるかもしれないから、「実は合意している」「いやいや、そんなことはない」と適度に疑心暗鬼の状態にしてあったというのが本当のところなのかもしれません。
○余計な話ですが、最近の東京新聞はとっても旗幟鮮明で、「反原発」「反集団的自衛権」「とにかく安倍内閣に反対」という論調になっていて、そのおかげで朝日や毎日の読者を横取りしている、というもっぱらの評判です。だったら彼らは本気でリベラル派なのかというと、その実態は「ウチは反・読売新聞です」という説明が一番腑に落ちる。つまり中日ドラゴンズのオーナー会社としては、「打倒ジャイアンツ」でなければ話が始まらない。そして読売グループは社を上げて安倍内閣を支援している、と考えると、とってもわかりやすい構図が出来上がります。
○さて、シンガポールで行われていたTPP閣僚会合は、今日で終了したわけでありますが、それについては以下のような報道が飛び交っております。
●TPP閣僚会合、一定の前進みられたが合意に至らず(ロイター)=悲観的
●TPP閣僚会合閉幕 対立解消に努める(NHK)=中立的
●TPP大筋合意へ大きく前進…閣僚会合閉幕(読売)=前向き
○どれが正しいのか。先週、ここ(東洋経済オンライン)で書いた通り、筆者はTPP交渉は意外とうまくいっているという見方をしております。そもそも中間選挙の得点にしたいと思っているオバマ政権としては、TPPは夏までにまとめなければ意味がないわけでありまして、その見込みが立たないくらいなら、むしろダメージコントロールに取り掛かる方がマシということになる。例えば「日本が悪い!」などと言って、幕引きを図るという手だって、ないわけではない。ところがこのタイミングで閣僚会議を仕掛けてくるということは、もちろん脈があると思っているからやっているからでありましょう。
○それにしても「秘密交渉」を原則とするTPPも、これだけ状況が煮詰まってくると、いろんな内情が見えてくるものでありますね。いろんな意味で感心いたします。
- 吉崎達彦(かんべえ)
- 双日総合研究所取締役副所長・同主任エコノミスト。