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集団的自衛権と立憲主義

政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は15日、現行憲法下での集団的自衛権の行使を容認するよう求める報告書をまとめました。20日から自民、公明両党で協議に入ります。私は、日本を取り巻く国際情勢や日米同盟の現状を見た場合、一定のタガをはめた上で集団的自衛権は認めるべきだし、現行憲法が集団的自衛権の一切を禁じているとは言えないと考えています。解釈変更による集団的自衛権容認は「立憲主義の否定」との批判が出ていますが、果たしてそうでしょうか。

◆司法は判断したか

 「立憲主義」とは、政府が国民の人権を侵害しないように、「憲法で国家権力を縛る」という考え方です。では日本国憲法は、集団的自衛権を行使してはならないと政府を縛っているのでしょうか。または、憲法判断の最終決定者である最高裁判所が集団的自衛権は憲法上許されないと判断したのでしょうか。

 集団的自衛権が憲法の範囲を超えると判断したのは1972年の参議院決算委員会に提出された政府資料が最初だと言われています。その後も、内閣法制局を中心に政府は、自衛権は必要最小限度の範囲にとどまるべきで、集団的自衛権の行使はその範囲を超えるので憲法上、許されないとの解釈を積み上げてきました。しかし、集団的自衛権はダメだと判断してきたのはあくまで内閣(=行政)なのです。内閣法制局も内閣の一部局に過ぎず、行政の一員であることは言うまでもありません。憲法の審判役は最高裁判所=司法です。朝日新聞(14日朝刊)は「今の憲法解釈は、国民に選挙で選ばれた政治家たちが政府と一体となって、30年以上にわたって積み重ねた結果であり、いわば憲法そのものだ」と書いていますが、最終的な憲法判断をするのは政治家(立法)でもなければ政府(行政)でもありません。

 では司法はどう言っているのでしょうか。最高裁が自衛権について判断をしたのは1959年のいわゆる砂川判決です。「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない」として自衛権は憲法上、認められると判断しています。個別自衛権とも集団的自衛権とも言っていません。この判決をもって、集団的自衛権は禁じられていると判断したと言えるでしょうか。

 59年判決時は「集団的自衛権なんか想定していなかった」との声も耳にします。確かに当時は自衛隊そのものが憲法違反だとの主張が根強くあり、集団的自衛権どころの話ではなかったかもしれません。しかし、想定していなかったものは時代が変わっても読み込むことができないとするならば、憲法制定時には思いも至らなかったであろう日照権など環境権を読み込むのも無理筋ということになります。憲法には集団的自衛権の行使を明確に禁じる規定はありませんし、最高裁が行使容認はダメだと言ったこともありません。こうしたことを踏まえれば、行使容認が立憲主義に反するとは考えられません。

◆極論を超え

 憲法解釈によって行使容認に転じるのは「法令解釈の幅の中に収まらない」(枝野幸男氏)との指摘もあります。しかし、自衛権に関する解釈の変更が認められないかというと、政府は戦後、自衛権否定から自衛隊容認に「大解釈改憲、コペルニクス的大転換」(高村正彦自民党副総裁)を行いました。解釈変更を極めて狭くしか認めないのであれば、自衛隊違憲論に戻らなければなりません。

 もちろん、自衛権容認への転換ほどの大幅な解釈改憲ではないにしても、長年にわたり積み上げられた解釈を変えるわけですから、国民に理解を得られるよう努めなければなりません。法的安定性を損なわない範囲で、日本の存立を守るためには何が必要で、どこまでやるのかを冷静に検討しなければなりません。

 国際情勢に目をつむり、一国平和主義でいいのだ、日本は何もしないのだという主張があってもいいでしょう。ただ、日本の安全保障に不可欠な日米同盟も顧みず、頑なに内に閉じこもっていた方が国民の平和が守られるとはとても思えません。どういった危機が想定されるのか。集団的自衛権のうち、どこまでを認めるのか。具体的な事例を明確にして、万機公論に決すことになります。将来的な憲法改正の方向性も含め、論議していきたいと思います。

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